MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2476 「おひとり様」への心構え

2023年10月05日 | 日記・エッセイ・コラム

 直近2020年の国勢調査をもとに50歳の未婚率、いわゆる「生涯未婚率」を計算すると、男性が28.25%、女性が17.85%と、2015年の前回調査時(男性23.4%、14.1%)と比べて大きく増加していることが判ります。さらに将来予測では、(生涯未婚率は)男性で約30%、女性でも約20%に達すると推計されており、日本人の4人に1人、さらには3人に1人が生涯を未婚で暮らす時代が近づいていると指摘する向きもあるようです。

 「おひとり様」の言葉が生まれた平成初期の時代には、生涯を独身で過ごす(覚悟を決めた)人生を、あたかも失敗例のように揶揄する風潮も一部に残っていたこの日本。しかし、現在ではそれも人生の選択のひとつとして社会の中に定着し、社会のリベラル化、ジェンダーレス化の動きの下で次第に理解されつつあると感じます。

 とはいえその一方で、家族や世帯を単位とする社会保障などの仕組みは未だこれまでのまま。自由を謳歌しながらおひとり様人生を満喫しているだけでは、仕事をリタイアし収入が途絶えた(いわゆる)「老後」に、大きなリスクを抱えることになりかねないのもまた事実です。

 女性の所得水準はまだまだ男性には及ばず、従っておひとり様の公的年金水準は必ずしも十分とはいえません。税や医療保険、年金制度などにおける専業主婦世帯優遇も改まらない中、(特に女性の)「おひとり様」にとって「加齢」は「不安」と同義語だという話も聞くところです。

 核家族化で兄弟姉妹の数が少なくなった現在、家屋敷など親の資産を(一定程度は)当てにできる人も増えているとのことですが、それでも(結局のところ)独身者は「自分の老後は自分で備える」ことを強く覚悟する必要がありそうです。

 現役時代の余裕をプールし、老後のプランを練っておくこと。病気になったとき、介護を必要としたとき、支えてくれる友人や縁者などを確保しておくことなども大切な心がけだということです。

 さらに言えば、現在、結婚して家庭を持っているからといって、安心できるというものではありません。特に(男性よりも)平均寿命の長い女性の場合、パートナーが亡くなってからも15年や20年の独身人生を過ごすのは当たり前となりました。子供がいるからといって面倒を見てもらえるとは限らず、再び独身となった自分の人生は、自らの手で切り開いていかなければならないわけです。

 このような時代、自立した「おひとり様」を生涯貫徹するには、一体どのような準備が必要か。8月22日の総合情報サイト「All About」に、NPO法人日本家族問題相談連盟理事長の岡野あつこ氏が『65歳以上の5人に1人が「おひとりさま」時代…女性が“自分らしく”生きるために備えたい3つのこと』と題する一文を寄せていたので、参考までにその一部を残しておきたいと思います。 

 内閣府の「高齢社会白書(令和5年版)」によると、65歳以上の人口に占める「おひとりさま」女性の割合は22.1%(2022年)。しかも、2040年にはその割合が24.5%まで増えると推定されており、女性の4人に1人が「おひとりさま」として生きていく時代が間もなくやって来ると、岡野氏はこの論考に綴っています。

 これを他人事だと思ってはいけない。例えば2020年時点で45歳の女性は、2040年には65歳。今現在シングルでそのまま結婚という形を選ばないケースや、今既婚者でも夫と離婚したり死別したりするケースを考えれば、誰もが最終的に「おひとりさま」として暮らすことになる確率は高いというのが氏の認識です。

 もちろん、必要以上に「おひとり様」(であること)をネガティブにとらえたり、恐れたりすることはない。ひとりでいても幸せな人もいれば、二人でいるのに幸せを感じられない人も多い。要は自分の置かれた状況を受け入れつつ、毎日を機嫌よく幸せを感じながら生きていければいいということです。

 そこで氏は、(これまで氏のもとを相談に訪れた女性たちが、離婚という選択をした際にお伝えし効果があった)「自分らしく幸せなおひとり様人生」を送るためのポイントを三つあげています。

 その一つ目は、「お金」の準備をするということです。ひとりで暮らしていくうえで、まず大事なのは「経済力」。特に、今のうちから準備できるのは、「もしも、おひとり様になったら…」という想定で家計をシミュレーションしてみることだと氏は言います。

 収入は、「給料はいつまでもらえるのか?」「年金はいくらもらえるのか?」、支出は「家賃や光熱費、通信費や食費にいくらかかるのか?」。そしてもしも支出のほうが多かった場合、貯金を切り崩したり、親からの相続金などを含め、どうやって補填していくのかまで考えておく必要があるということです。

 二つ目のポイントは、「住まい」を確保するということ。今、住んでいるところにそのまま住み続けられるのであれば問題はないのでしょうが、そうでないなら「おひとり様」生活がはじまる前に(終の棲家の)準備をしておくが大切だと氏はしています。

 条件の合った住まいを見つけるは、何かと時間がかかるもの。「親しい友人が住んでいる近くに住む」「実家に帰ってリフォームして暮らす」という選択肢もありますが、賃貸物件に住むのであれば家賃が発生するのでそのことも含めて具体的に検討しておくと安心だということです。

 そして、氏が指摘する三つ目のポイントは、「メンタル」の安定を図るというものです。

 自分自身のメンタルケアの問題は想像以上に重要だと氏は言います。友人や兄弟姉妹、恋人など自分を支えてくれる人の存在はとても心強く、本当にありがたいもの。たった一人で(新生活に立ち向かおうと)無理を重ねても結果が出るまでにはそれなりの時間がかかるため、何よりもまず必要なのは、心の安定を保つことだということです。

 さて、今のうちからできる準備としては、「ひとりで幸せに生きていくためには何が必要か?」という問いに、きちんと向き合うことだというのが氏の見解です。そうすることで、自然と「親身になって支えてくれる人たちの存在」にも気づけるもの。すると、今の人間関係を大事にするようになったり、新しい友人づくりをはじめたりと、具体的な「やるべきこと」が見えてくると氏は話しています。

 今をただ精一杯生きている貴方も、時に長い目で将来を見通し建設的に人生を考えてみる機会を持つのも(確かに)必要なことかもしれません。特に人間関係や信頼関係は一朝一夕で築くことができにくいもの。若いうちから準備を心掛けておくに越したことはないとこの論考を結ぶ氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。



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