MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯38 少子化対策のヒント

2013年07月21日 | 社会・経済

 厚生労働省の人口動態調査によれば、日本の合計特殊出生率は2005年に過去最低の1.25を記録した後やや持ち直し、現在1.41となっています。一般的に、人口規模を維持するためには2.10程度の出生率が必要と考えられていますから、日本の人口が急激な縮小基調にあることは間違いありません。

 一方、この出生率という数字、地域による差異が顕著に現れる(地域社会の影響を受け易い)ことにもひとつの特徴があります。都道府県別の出生率を見ると沖縄県の出生率が1.86で突出して高く、以下、宮崎県1.68、鹿児島県1.64と続きます。

 また、低い方から見ると東京都が1.06でダントツの最下位。1.25の大阪、北海道、宮城がこれに続きます。(都市化が進んだ順…というわけでもないのがまた不思議なのですが)

 また、南国の離島には出生率が特徴的(伝統的)に高い地域が現出しており、例えば沖縄県多良間村では3.14、鹿児島県天城町で2.81、同じく伊仙町2.47、沖縄県下地町2.45(いずれも9802平均値)など、2.0を大きく超える地域が散見されます。

  例えば沖縄県において出生率が突出して高いのには、一体どのような理由が考えられるのでしょうか。

 日経グローカル(「データで見る地域」2006.10.2)によれば、南の島は豊かな自然に恵まれ暮らしやすいこと、そして、コミュニティが濃密で共助、支え合いの精神が育まれていることなどが、出生率に影響しているのではないかとしています。

 さらに厚生労働白書(2005)では、沖縄県の特徴として、①共同社会的な精神が色濃く残っており子供を産めば何とか育てていける。②男子跡継ぎの意識が強く男子が産まれるまで産児制限をしない。などをその理由として挙げています。

 さて、前出の「日経グローカル」には、いわゆる「出来ちゃった婚」の発生率と出生率の間には強い相関があるとの指摘もありました。要は、出来ちゃった婚出産が多い地域ほど出生率も高いということです。

 2009年の「でき婚」率は全国平均で25.28%。長男長女の4人に1人が結婚前の妊娠で出産されている計算です。そんな中、沖縄の「でき婚」率は42.43%と飛び抜けて高く、40%を超えているのは全国でも沖縄だけとなっています。

 一方、この「でき婚率」が全国で最も低いのは驚いたことに東京で、19.48%というこれも他県の追随を許さない低さです。(東京の女性は身持ちが「かたい」というか、そういうことに慎重だということでしょうか。)

 さて、この「でき婚」率をさらに見ていくと、女子の出産年齢や男子の第一子出生時年齢、男女の初婚年齢などと負の相関があることが分かっています。つまり若くして結婚・出産する地域はデキ婚率が高いということ。

 また、その他にも、高校生の求職率や農業就業人口と正の相関があり、最低賃金と負の相関があるということですから、これは最低賃金が低い農村部で、高卒で就職する若者が多いところに「でき婚」が多いことを意味しています。つまり、統計上は地方でデキ婚が多く都市部で少ないということが分かります。

 話が少し脇道にそれましたが、90年代に出生率が1.6台まで低下したフランスですが、政府の対策などが功を奏し05年には1.94まで回復しています。

 これは、手厚い家族給付制度や高水準の育児サービスにより、法的には結婚していないカップルが出産・育児をしやすい環境を整えたことが原因だと言われており、実際、現在では新生児の約半数がそうしたカップルの子供だとされています。

 現在、多くの自治体において、少子化対策の名のもとに「お見合い事業」などの未婚の男女の結婚を奨励する事業が行われています。

 しかし、この政策はあくまで結婚が出産につながるという前提があってこその話であり、子宝に恵まれることを目的とするのであれば、まずはどんな状況にせよ「子供が生まれてもなんとかなるよ」「結婚なんてその後で考えればいいじゃない」という、ある意味「ゆるい」環境を作ることがまずは重要だと考えることもできます。

 さて、沖縄にはさらに面白いデータもあって、2011年の人口動態調査によると沖縄の離婚率は2.56%で堂々の1位。沖縄は結婚率も6%と全国第2位を誇っていることから、全国的に見て結婚しやすくそして離婚もしやすい地域ということができます。

 また、沖縄は19歳以下の若年結婚が男女ともに全国1位ということなので、10代で子宝に恵まれ結婚してみたけれど、なかなかうまくいかずに離婚するケースも多いという姿(イメージ)が、統計からはおぼろげに浮かび上がってきます。

 時事通信社(ijamp13/07/04)によれば、沖縄県ではこうした傾向にあることの理由として「沖縄では人間関係が濃密なことから出会いが多いこと」や「親兄弟などの親戚が身近にいて子育てのサポートが得やすいこと」、さらに「離婚に対するマイナスイメージが少なく抵抗感が低いこと」などを挙げているそうです。

 沖縄には「まいゆーる」という相互扶助の精神があって、子供は地域で育てるという考え方が浸透しているのだとか。シングルマザーや再婚にも寛容で、これにより若い女性に心の余裕が生まれ恋愛がしやすいという環境にあるのではないかとのことです。

 若者にいろいろな生き方を認める土壌があり、恋愛や妊娠や出産に対する精神的なハードルが低いこと。周囲の大人たちがが若者を助けること。よく言われる「なんくるないさ」という、人生に対するゆるめの感覚を持つことが、少子化対策へのカギとなるような気がするのですが、いかがでしょうか。



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