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「スマホやめるか、大学やめるか」との挑発的な見出しのもと、4月5日の朝日新聞が報じた信州大学の入学式における山沢清人学長の新入生歓迎あいさつが、様々なメディアで取り上げられ大きな話題を呼んでいます。
高校生のほとんどがスマートフォンを利用している現状において、国立大学の学長が新入生にスマートフォンと大学の二者択一を要求したとすれば、確かに学校権力の横暴として糾弾されても仕方かないことかもしれません。また、多くの読者は(「朝日」が書いているくらいだから)「きっとそういうことなのではないか」と、この見出しをセンセーショナルに受け取ったことでしょう。
ところが、この記事を続けて読んでいくと、同大入学式において山沢学長は昨今の若者世代がスマートフォン偏重や依存症になっている風潮を憂慮。「スイッチを切って本を読み、友だちと話し、自分で考える習慣をつけ、物事を根本から考えて全力で行動することが独創性豊かな学生を育てる」と語りかけたことがわかります。
また、信州大学のホームページで公開されている学長挨拶の全文を改めて確認してみても、確かに山沢学長は 「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」 と発言してはいるものの、文脈から言って、「たまにはスマホのスイッチを切って本を読みましょう」というのがその意図であることは明らかです。
実際、学長の発言だけを読めば、その発言がなぜこのように話題になるのかは理解できません。
どうやら騒動の発端は、朝日新聞がこの挨拶を、「スマホやめますか、それとも信大生やめますか?…山沢清人学長は、8学部の新入生約2千人に、こう迫った。」と掲載したところ、これをYahooをはじめとする主要Webサイトがそのまま配信したため、ツイッターや「2ちゃんねらー」らが炎上、さらにはNHKをはじめとする大手マスコミまでもが(つられて?)反応したというところにあるようです。
ネット上で相手を挑発する行為を、一般的に「煽り」と呼ぶようですが、ネットリテラシーが高まっているとされる現在にあっても、それほどまでに世論は、「内容」よりも「キャッチ」や「印象」、「先入観」などに踊らされているということでしょうか。
商業メディアが基本的に話題の提供や視聴率などに走ることはある程度はやむを得ないことなのかもしれません。また、スポーツ新聞などの見出しに(いわゆる)「釣られた」経験は、誰にでも一度や二度はあることだと思います。
しかし、日本を代表する報道機関であるところの朝日新聞が、もしも今回、このような(ある意味「あざとい」)表現によって意図的に購読者の耳目を奪おうとしたのであれば、それはジャーナリズムの「良心」の問題として「品がない」と言うか、いかがなものかと言わざるを得ないところです。
いずれにしても、今回の騒動からは、情報社会に生きる現代人にとって、スマートフォンを取り上げられるということが、それほどまでに衝撃的な意味を持っているという現実が透けて見えます。
今回の入学式において、山沢学長は、「信大性になったら、スマホのスイッチを切って友達と話をしよう」、「自分で考えることを習慣づけよう」、と新入生に呼び掛けています。そして、「自分の持つ知識を総動員し、物事を根本から考え全力で行動することが独創性豊かな信大生を育てる」と、その思いを語っているということです。
スマホの液晶画面に並ぶアイキャッチに「釣られる」ことなく、また無責任な「煽り」にも立ち向かえるよう、たまには私たちもスマートフォンの電源を切って家族や友と語りあい、本を読み、物事をじっくりと考える時間を作る必要があるのかもしれない。
山沢学長の言葉から、私も改めてそのような思いを新たにしたところです。
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