気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

Inside Your Head 6 最終話

2020-02-13 14:35:00 | ストーリー
Inside Your Head 6 最終話




その日からの俺は

たまにくる莉桜からのメールに返事はしていたけれど 誰とも会う気持ちにはなれず

ずっと自宅でふさぎこんでいた


あんな一方的な都合で理奈ちゃんを酷く傷つけといて都合良く俺だけ他の女と幸せになるとか

そんなの 人として間違ってるよな ーー



修司から電話がかってきた
『海人ー!今週末の情報交換会 来るだろ?』

「今回は… やめとく…」

『どうしたー?元気ないな。まさか病気か??』


そんな俺を心配した修司は訪ねてきた


「なんだよ、そのツラ!お前引きこもりでもやってんのかっ!?」

窓を開けて片付けを始めた

服は脱ぎっぱなしだし
空のペットボトルや使ったコップもそのまま…


俺は部屋が荒れてることも気にもならないほど
自己嫌悪に陥っていた



「お前ヒゲ伸ばしてんの?似合わねーし(笑)」
俺の無精ヒゲを見て修司は笑った

ゴミを分別しながら掃除をしている修司を眺めるしかできなかった

俺に何があったのか 一切聞いてこない
理奈ちゃんから別れたことを聞いたのだろうか



「その様子じゃ飯もまともに食ってねーだろ。病的に顔がやつれてるぞ。今からなんか買ってくっから待ってろ。」


あー … そうか …


まともな食事をしたのって
理奈ちゃんの手料理が最後だったかも …

だからこんなに身体に力が入らないのか …


小さくため息をついた


部屋のチャイムが鳴った


修司 もう帰ってきたのか?




ドアのロックを解除すると

「海人!? どうしたの その顔!」



莉桜だった


俺の顔を見るなり驚き、険しい表情に変わった


「あれ… 莉桜 なんで… 」



「なんだか声がおかしかったからよ!
なに!? 寝込んでたの!?」


「病気じゃない… 大丈夫」


「その顔はどう見ても病人よ!」



押し入るように部屋に入ってきた莉桜も
部屋の荒れように驚いた



「なんで言ってくれないの!そこに座ってて!」
彼女がイライラしている


あぁ…
こんな感情的に怒る莉桜 久しぶりに見た …

修司がやっていた掃除の続きを莉桜がやってる …


そんな事をぼんやり思っていたら修司が帰ってきた


「おーい、食いもん買ってきてやったぞー! … あれ?」


莉桜と修司は そこで初めて顔を合わせた


まるで流動食みたいな食事を済ませ
俺は強制的に布団に寝かされた


修司と莉桜は話をしながら
手分けして掃除を始めていた


「莉桜さん、たまにココ(この部屋)に来るんっすか?」


「そうね … 一年は来てなかったわね…」
台所に溜まった食器を洗いながら莉桜が答えている


「 一年… ってことは もしかして、あいつと付き合ってました?」

「ええ(笑)」 軽い声で答えてる

「ははーっ!なるほどね~♪だからか~(笑)」
修司は上機嫌な声を出した

「えっ?なるほどって??」

「いやね? あいつ ずっと莉桜さんのこと
ひた隠ししてたんっすよ!

良い女だから隠してたんだろう、
盗られると思って隠してたんだろうって、

俺ら連れ周りみんなが聞き出そうとしてもあいつごまかしてなかなか口割らなくて!

俺らの読みは当たってたなって!(笑)」




修司の明るいキャラに莉桜は楽しげにクスクス笑ってる


修司のあの誰にでも気さくに話せる性格
全く尊敬に価するよ…




「海人の友達って、みんなあなたみたいな人達?」

「んー、変わった連中ばかりっすよ(笑)
大学の時からの奴らが多いかな?」

「へぇ! 気になるなぁ~ (笑)」
楽しそうに話す莉桜の声に俺はちょっと妬けた


俺にはあんなに直ぐから心から笑わなかったのに
あんなに直ぐに心を開かなかったのに



修司は顔も悪くないし あのキャラだから昔から女にモテてた

でも当の本人はその自覚はなさそうだった


「海人は秘密主義な所があって、なかなか自分のこと喋らないんすよね。

こんななっても俺らに頼りもしない。

だから みんな海人のことはなんかほっとけないっつーか。」



「彼にあなた達みたいな友達がいて良かった」

莉桜の穏やかな声


「 ところで、莉桜さんはあいつとヨリ戻したんすか?」


あ… やっぱ聞いたな


「んー。どうかしら…」


ど、どうかしらって!

俺は突然目が覚めたように思わず布団から起き上がった



「彼に私は本当に必要なのかしらって思うこともあるわ」


どんな時にそう思うんだーー


「えーっ! そりゃ必要っすよ!あいつには莉桜さんが必要ですから!

だからそんな寂しいこと言わないでやってくださいよ。

あいつが幾ら秘密主義でもあなたにマジなことくらいは伝わります。

別れてからも本当は莉桜さんのことずっと忘れてなかったんじゃないかなって …

こんな風に一人で抱えこんでしまうところもあるヤツだし

あいつの心の支えになってやってくださいよ。

俺からの頼みです。」



修司…
なんだよ お前やっぱ良いヤツ…



「で、あいつに愛想尽きた時は是非、俺んとこ来てくださいっ!(笑)」



な、なんだよっ!
今 俺めちゃくちゃ感動したのに!(笑)


莉桜はすげー爆笑してるし!
俺だってあんなに爆笑させたことないのに!



少しすると 俺は眠りに落ちたようで
目が覚めた頃には二人は帰っていた

莉桜と修司が洗濯や掃除をしてくれたおかげで前以上に綺麗な部屋になっていた


空っぽだった冷蔵庫には
修司が買ってきた日持ちする物や飲み物

胃に優しい手料理を莉桜が作り置きしたパックなどがぎっしりと詰められていた


俺の事を想いながら用意してくれたのがわかる…


それは

俺の心にいっぱい思いやり詰められたように思えて

俺は一人じゃない
幸せ者だったんだなと実感した



ーーー



『あれ、まだ寝てたの?』
俺は莉桜の電話で起こされた



「今 何時だと思ってんだよ…」

『昼前… ぐらいじゃなかった?』

「真夜中の2時ぃ…」

『あぁ、そうだったわね!ごめんなさい(笑)』



莉桜がフランスに行って半年 ーー

また 一からランジェリーのことを学びたいと彼女は躊躇なくフランスへと飛び立った

彼女は何事も迷いが無い

「もうそっちに行ってから半年だぞ… 一体いつ帰ってくるんだ」

『決まったら連絡するわよ』

「待ってる俺の気持ち、考えたことある? 」

『毎日 考えてるわよ?何してるかなー?って(笑)』
あっけらかんと話す彼女に想いの差を感じる


「君の顔が見たいよー。ビデオ通話にしてい?」


『それはまた今度よ(笑)』


なんだよ
顔ぐらい見せてくれてもいいじゃないか …



「人を夜中に起こしておいて冷たいヤツだな …」


彼女は拗ねる俺を気にする風もなく


『ところでね、カフェで知り合った男がいてさ』


「お、男!?」
焦る俺をスルーして話す彼女


『デートに行かないかって誘われちゃって(笑)』

「ちょ、ちょっと待て!!」

『そしたら奥さんがそこに来て、喧嘩始めちゃって(笑)』


なんだ… ホッとした



「焦らすなよ… ビックリした…」

『目が覚めた?(笑)』

「完全に覚めたっ。もう寝らんないよっ!」

『じゃあ窓開けて空気でも入れ換えて掃除でもしたら?』


「だからー。こっちは午前2時回ってるんだぞ?」


『わかってるわよ(笑)また汚部屋の掃除はしたくないからね(笑)』


「もうあんな事になってないよっ(笑)」


『とにかく窓開けなよ』
なんだよ 窓開けろ、開けろって



ーー え? もしかして!?

慌てて窓を開けてベランダから目を凝らして下を見る

街灯は転々と点いてるけど
夜中だから人がいる気配はない


なんだ…
いるわけないか

もしかして莉桜が帰ってきてるんじゃと期待したからちょっとガッカリした



「ちゃんと窓開けたよー」

『明後日、時間ある?』

「明後日… うん。大丈夫。なに?」

『今からメール送るから、そこに行ってきてくれない?』

「いいけど何?」

『受け取ってきて欲しいものがあるから』

「了解。で? 受け取った後はどうすれば良い?」

『それ、海人へのプレゼントだから』

「俺の??」



莉桜が指定した日に店に行くと

店員から綺麗なリボンがかけられている大きな箱を受け取った


箱を持って車に乗り込む

早く開けてみたい気持ちを抑えながら家に持ち帰った


莉桜にメールをしてみる

『大きな箱だね!受け取ってきたよ。』

『まだ開けてないなら開けてみて。』

リボンをほどいて箱を開けてみた


「これって…」



初めて作った俺と莉桜のフォトブックの新品が入っていた


開いてみる



ーー あぁ … 懐かしい



写真に写る二人が輝いて見える



このフォトブックを捨ててしまうあの瞬間

悲しくて 寂しくて 虚しくて
最後に見たこの写真が


同じものなのに 違って見える

心次第で見るものがこんなにも違って見えることを知った


一目惚れの出会いから今日まで色々あった


別れて 再会して
そしてこうして今はお互い離れて暮らしてる

でも 距離は離れていても心は傍にいる


それでもやっぱり… 君に会いたいよ…




他には服や靴が入っていた

そういや莉桜から貰った服も靴も捨てたもんな

箱の中に入っている莉桜が選んだ服を出して広げてみた



綺麗な深いブルーのパンツに襟に黒のラインが入った白シャツ

紺のジャケットにプレーントゥの明るい茶系の革靴



彼女が選んだっぽい…


大きな箱の片隅に小さい箱が入ってる
その箱も開けてみる

中にはブレスレットが入っていた
手に取ると内側に刻印がしてあった


この日付って…
俺達が出会った日付と明日の日付

なんで日付が明日に …


彼女に電話をかける

『見てくれた?』


「ありがとう… 嬉しい… 感動してる!

なんで突然プレゼント? それとブレスレットの日付が明日になってるんだけど。」



『その服を着て明日19時にあの観覧車の所に向かって。』

「まさか俺一人で観覧車に乗れって?」

『私も行くから』


えっ !!


「今こっちに帰ってきてるの!?」


『明日 観覧車の乗り場で会いましょう』


「今すぐ会いたいよ!」


『ふふっ(笑) 明日ね』




一緒に乗った観覧車…

翌日俺は18時半には約束の場所で待っていた


俺からも彼女へのプレゼントを用意し
彼女からのプレゼントの服を着てブレスレットもつけている



大きく深呼吸する

「…はぁ~」


少し緊張してる

約束の時間ちょうどになり
彼女が俺に小さく手を上げて歩いてきた



半年ぶりの彼女 …
「海人、久しぶりね」

「…ん」
照れくさくて 彼女の手を握る


「莉桜 久しぶり… 変わんないね… 」

「ビデオ通話でしょっちゅう顔見てるでしょ?(笑)」


二人でまた観覧車に乗った


「この景色も久しぶりね…」


夜中に 俺に窓を開けさせたのは
俺の服を用意するためにサイズを確認したかったからと言った

あの時 彼女が傍にいたんだと知った

「このブレスレット。何で今日の日付になってるの?」

「今日で私達、付き合うのは終わりにしましょ。」


ーーー え?


「…それ、どういう意味…」

「言葉通りの意味だけど?」


血の気が引いていく感覚


「ま、待って、いやいや、言ってる意味が、、わかんないよ、、」


動揺する俺に微笑んだ


「私達 結婚しない?」


ーーー え?


別れる?

結婚する?



え!?


頭がパニックになった



「これは、私達が恋人だった証… 」
ブレスレットを撫でる

彼女がバッグから箱を取り出して開いた
「 で、こっちは… 」


少しデザインが違うブレスレットが出してきた

「夫婦の証ってことで。 私達結婚しない?」



ーーー 今 俺、プロポーズされてる?




「ちょっと待って!… それは… 」

「 イヤってこと?」 目を丸くする彼女


俺は慌てて彼女へのプレゼントを差し出した



「これ、開けてみて」


彼女のためにネックレスをプレゼントした

今夜 俺は彼女にプロポーズをしようと決めていた




「俺も実は今夜君に言いたかった。」




「ーー 俺と結婚しよう」

微笑む俺に 彼女は微笑み返した



彼女は人の肌に触れ、繊細な生地を扱う職人だから

邪魔にならないよう俺は指輪じゃなくネックレスを贈りたかった



「ありがとう… 嬉しい… 」

嬉しそうに笑う彼女の瞳は うっすらと涙ぐんでいた




「君には俺しかいないだろ?」

「それはあなたもでしょ?」


彼女はそれを伝えたくて帰ってきたのだと言った

そして彼女は数日間 日本に滞在し
その間は恋人らしいデートをした


そして またフランスへ戻った ーーー



何故 突然彼女は結婚を考え

それを伝えるためだけに予告もなく帰国して
そしてまたフランスに戻ったんだろう


彼女の行動や考えていることは今でも俺には予測がつかない


そんな枠に捕らわれない生き方をする彼女を
俺なりに支えていきたいと思う




『再来週の木曜日には日本に帰るから。これからは海人とずっと一緒にいるつもりよ。』


「完全に帰国するの!?」


『ええ(笑)』


「なんだよっ! いつも突然なんだからっ!」
拗ねた言い方で嬉しさを隠す


『なぁにぃ? その言い方(笑)
めちゃめくちゃ喜んでるくせに(笑) 』


「腹立つー! めちゃめくちゃ嬉しいわっ!(笑)」



ーーーー




そして俺達は2作目のフォトブックを作ったーー



今度はウェディングのフォトブック

美しいドレス姿の彼女と俺





「これは捨てない(笑) 大事にするからね」


「そんなの当たり前でしょ!? ウェディングブックなのよ!?もしも捨てたら私があなたを捨てるから。」


「 俺は捨てられないでしょ?
… だって君は俺じゃなきゃダメでしょ? 」


「さぁ? それはどうかしら。」


俺じゃなきゃダメだって
「相変わらず言わないなぁ(笑) 」


微笑みながら彼女の腰を引き寄せる

「必ずいつか言わせてやるからな(笑)」


好きの一言もなかなか聞かせてくれなかった彼女…


「愛してる(笑)」


「“愛してる” をやっと普通に言ってくれるようになったな(笑) ここまで長い道程だった(笑)」


胸が熱くなる


「私、また“あの”海人が見たいわ… 」

甘えるように俺の首に腕を回した



「“あの”??」

「そう、あれは海人じゃなきゃダメね(笑)」

「俺じゃなきゃダメなのってそれだけ?(笑)」

「早く早く(笑)」

「そんなに欲しいの?… 俺からの意地悪なおしおき(笑)」

「バカ!(笑) 違うわよっ(笑)」



俺は彼女のために

またあの歌を歌ったーーー







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