またしても西森博之の漫画から。
多分ここに書く彼の作品はこの作品が最後でしょう。
(カナカナはまだわからん)
○どんな話?
優しい人間になりたいと願うも人相が悪く喧嘩を売られやすいため、
喧嘩三昧の生活を送ってきた雅矢。本当は穏やかな日々を過ごしたく、
高校に入学してその決意を新たにするものの、既に悪名は校内に轟いていた。
しかし、そういった噂を鵜呑みにせず、茶道部の部長は物腰柔らかく
雅矢に勧誘の一環でお茶を差し出す。
雅矢は、彼女の温かさに惹かれ、また"優しい人間"になるヒントを得たいという思いから茶道部に入部し、自分の願いを追い求める。
○どうだった?
ここに感想を書いた彼の作品中ではハッキリと一番好きと言えるものとなった。
ただ、ある作品にハマる条件として"推しキャラがいるか"というものは自分にとって創作物の好き嫌いを決める大きな要因となっている。
そんな中、この作品の中で特に"推しキャラ"と呼べる存在は無かった。
○じゃあ何が良い?
キャラ同士のやり取りと、普遍的な悩み
1.キャラ同士のやり取り
主人公の雅矢とヒロイン(?)の部長との会話がある回はその会話の内容がどれも素晴らしい。
繰り返し見るに値する、清らかさと潤いに満ちたものである。読んでいて心が洗われる。
上の2人に限らず、もっと広げて言うと、
人の心の機微を一番繊細に描いているように感じる作品ということ。
そしてそれらが多くの印象的なエピソードを生んでいる。
皆、気を遣う。言いたいことが言えない。やりたいことが出来ない。
伝えたいことが伝えられない。
雅矢は部長に自分の気持ちや、喧嘩をしてしまっていることを言えない。
夏帆は色々なことを目撃しているのに、それが人を傷つけると感じて言えない。
山田は…暴力を必ずしも否定しないが、その理由が恥ずかしくて言えない。
智花は…ある男に例を言いたいが、そのためのプロセスが踏めなくて困っている。
珠ちゃん(副部長)は…茶道の心を後輩に伝えたいが、大事なところが言語化できない。※これは気遣いとは関係ないが
読者はそれがすべて見えているので、なんて心根の優しい子達だろう、
と、幸せな気持ちになる。
それから、話数としては少ないが、
縁日で地味な先輩の奥沼さんが出てくる話が個人的に好き。
この一話で彼女のことが好きになるし、
以降明るくなっていく彼女の表情を見るのも楽しい。
2.普遍的な悩み
○○な人になりたいというのは普遍的なことであり、それとの折り合いをつけるというのも普遍的なこと。
"優しい人って何? これって喜怒哀楽の何に属するものなの?"
という問い。
読者は、自分を重ね合わせて、
自分がなりたかったものに想いを馳せるのではないか。
今となって振り返って自分としてどうありたいか、
それはどういうことだったか ということを再認識するのではないか。
そうではなかったにしても、上の雅矢の問いに、ありったけの経験から
何とかヒントをあげたいと思うのではないだろうか。
自分は読みながらそんなもどかしさ、
それから哀れみ(彼が辛い過去からその言葉に縛られているようなところもあるので)を感じた。
人の心を動かす作品は良い作品だ。
◇
創作物の好きレベルとそれに応じた行動(自分調べ)
好きレベル5:
関係する歌手がいるならファンクラブの加入やライブに足を運ぶなど、
足も使ってお金も落とす。作家や漫画なら展示を見に行くなど。
好きレベル4:
前提として、書籍や円盤は全て所持。
すなわちレベル3+明確な購買活動
映画・漫画・アニメならセリフを憶えたりする。
好きレベル3:
自分の中でハッキリと好きな話があり、折に触れて読み返すようになる。
ネットで"(作品のタイトル)(自分が好きな話)感想 "などと検索をし、
他の人がどんな感想を持ったかを探しに行く。
何か新たな魅力を他の読者が持っていたのであれば、それを携えてもう一回読みに行く。
購買活動につながる可能性大。しかし対外活動はしない。
※特に推しキャラがいる作品の場合、そのキャラが活躍する話が"好きな話"になる。
好きレベル2:
基本的には通読。全体を通じてインパクトのある部分を何か所か覚えているが、
内容のあらましを思い出すことは出来ない。
後から思い出すときや話題に上った時は、
そのシーンからすべてを組み立て直して話をする。
好きレベル1:
一度触れて話の全貌は理解する。
まとまりなく感想を持つが、特にアウトプットもしないし見返しもしない。
印象的なシーンは憶えていることがある。
※なお、"好き"レベルであって"評価"レベルではないです。
好きレベルが低いのに評価レベルが高い作品もあるし、逆もしかり。
今度自分の"評価"の尺度も言語化してみるか…
上の尺度で言うと、お茶にごすの好きレベルは4寄りの3です。
今回の記事を書いていて、昔より文章に読点が多くなったかなぁという
感慨のようなものを少し感じております。
仕事で説明文を多々書いている影響かな。
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