【中国トンデモ事件簿】経済成長支えた石炭産業が火の車! 山西省103県で給与未払い 破綻予備軍も続々…
2015年11月、石炭火力発電所から煙が上がる中国山西省の町。生産能力過剰と価格下落で石炭業界は危機を迎えている(ゲッティ=共同)
中国の経済成長を支えてきた石炭産業が危機を迎えている。急激な投資増による生産過剰と石炭価格の下落により、公営私営や規模の大小を問わず赤字にあえぐ企業が続出。炭坑が集中する山西省では県レベルの自治体のうち8割以上で炭坑労働者らへの未払いが発生しているとの報道も飛び出した。
中国の経済紙「華夏時報」(電子版)が昨年12月に報じた石炭業界のリポートは、その苦境を浮き彫りにして反響を呼んだ。
記事によると、石炭業界の「黄金期」だった2002~13年、炭坑では運搬用トラックが列をなし、積載するまで2、3日待たされることもあった。ところが現在では暖房用石炭の需要がピークとなる冬季にも関わらず、1台分の石炭を積み込むまで10分しかかからないほど閑古鳥が鳴いている状態だという。企業のトップたちは膨れあがった石炭在庫を売りさばくため、「外回り」に奔走している。
華夏時報は石炭産業が「黄金期からさびの時代に移った」と表現する。
主な原因は生産能力過剰だ。エネルギー需要の増大や政府の積極的な公共投資を背景に、業界では8年間で3・1兆元(約60兆円)の投資が行われ、生産能力は年間50億トンに達しつつある。しかし専門家によると現在、少なくともその1割ほどが過剰となっているという。
中国のエネルギー供給の6割超を占める石炭産業は深刻な大気汚染の原因のひとつとなっており、中国政府は石炭消費の総量規制を打ち出した。経済活動の低迷も加わり、その需要は頭打ちとなっている。
中国は本来、石炭の自給能力があるとされるが、生産地と消費地を結ぶインフラの未整備などを背景に一部を安価な海外産石炭に依存してきた。だが近年、石炭の輸入も大幅な減少をみせている。
中国で石炭生産の「黄金期」が始まった02年に1トンあたり200元(約3800円)だった石炭価格は、世界金融危機前の08年7月には1070元まで高騰。だが現在は370元前後と低迷している。
生産すればするほど石炭価格が下がり赤字と負債が拡大する悪循環なのだが、多くの企業は生産停止や減産に踏み切れない。銀行から融資を得ることが難しくなり、また失業者の増加は社会不安につながりかねないためだ。
こうした石炭業界の現状について米政府系放送局ラジオ自由アジア(RFA)は「多くの炭坑労働者は週1~2日しか働いていないが、地方政府や企業は大量の失業者が生まれ社会動乱を引き起こすことを懸念し、企業を倒産させない」と指摘する。
事業を整理したり、他業種に転換したりする「退場」の枠組みが整備されていないことも、赤字を垂れ流しながら生き長らえる「ゾンビ企業」が増殖する要因となっている。
山西省のある公務員は華夏時報に対し、「山西省にある自治体119県のうち103県で給料の未払いが生じている」と明かした。
石炭は中国大陸を覆うスモッグの原因のひとつとなってきた。業界が現在の苦境から抜け出す道筋もまた五里霧中の状態だ。
©2016 The Sankei Shimbun & SANKEI DIGITAL All rights reserved.
中国の経済成長を支えてきた石炭産業が危機を迎えている。急激な投資増による生産過剰と石炭価格の下落により、公営私営や規模の大小を問わず赤字にあえぐ企業が続出。炭坑が集中する山西省では県レベルの自治体のうち8割以上で炭坑労働者らへの未払いが発生しているとの報道も飛び出した。
中国の経済紙「華夏時報」(電子版)が昨年12月に報じた石炭業界のリポートは、その苦境を浮き彫りにして反響を呼んだ。
記事によると、石炭業界の「黄金期」だった2002~13年、炭坑では運搬用トラックが列をなし、積載するまで2、3日待たされることもあった。ところが現在では暖房用石炭の需要がピークとなる冬季にも関わらず、1台分の石炭を積み込むまで10分しかかからないほど閑古鳥が鳴いている状態だという。企業のトップたちは膨れあがった石炭在庫を売りさばくため、「外回り」に奔走している。
華夏時報は石炭産業が「黄金期からさびの時代に移った」と表現する。
主な原因は生産能力過剰だ。エネルギー需要の増大や政府の積極的な公共投資を背景に、業界では8年間で3・1兆元(約60兆円)の投資が行われ、生産能力は年間50億トンに達しつつある。しかし専門家によると現在、少なくともその1割ほどが過剰となっているという。
中国のエネルギー供給の6割超を占める石炭産業は深刻な大気汚染の原因のひとつとなっており、中国政府は石炭消費の総量規制を打ち出した。経済活動の低迷も加わり、その需要は頭打ちとなっている。
中国は本来、石炭の自給能力があるとされるが、生産地と消費地を結ぶインフラの未整備などを背景に一部を安価な海外産石炭に依存してきた。だが近年、石炭の輸入も大幅な減少をみせている。
中国で石炭生産の「黄金期」が始まった02年に1トンあたり200元(約3800円)だった石炭価格は、世界金融危機前の08年7月には1070元まで高騰。だが現在は370元前後と低迷している。
生産すればするほど石炭価格が下がり赤字と負債が拡大する悪循環なのだが、多くの企業は生産停止や減産に踏み切れない。銀行から融資を得ることが難しくなり、また失業者の増加は社会不安につながりかねないためだ。
こうした石炭業界の現状について米政府系放送局ラジオ自由アジア(RFA)は「多くの炭坑労働者は週1~2日しか働いていないが、地方政府や企業は大量の失業者が生まれ社会動乱を引き起こすことを懸念し、企業を倒産させない」と指摘する。
事業を整理したり、他業種に転換したりする「退場」の枠組みが整備されていないことも、赤字を垂れ流しながら生き長らえる「ゾンビ企業」が増殖する要因となっている。
山西省のある公務員は華夏時報に対し、「山西省にある自治体119県のうち103県で給料の未払いが生じている」と明かした。
石炭は中国大陸を覆うスモッグの原因のひとつとなってきた。業界が現在の苦境から抜け出す道筋もまた五里霧中の状態だ。
2015年11月、石炭火力発電所から煙が上がる中国山西省の町。生産能力過剰と価格下落で石炭業界は危機を迎えている(ゲッティ=共同)
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