ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

選挙というのは

2013-08-17 23:04:53 | レースだ
前回の市長選の後に、ある会で、公職選挙法のおかしさをお話しした内容です。
ご興味のある方はどうぞ、
ネット選挙解禁の変化はありましたが、
当時は、ネット利用は一切できませんでした(笑)。

//ここから

残念な結果となった選挙でありましたが、様々に多くのことを学ぶ機会を頂きました。
特に、公職選挙法というおかしな「きまり」というものに縛られた時間を過ごしましたので、
今回は、そのことについてお話しをしてみたいと思います。
恨み節にはならないように注意してお話しをしてみたいと思います(笑)。

「法は不知を許さず」という言葉もありますが、まさにこの身近でない法律は、
選挙の請負が商売になるような環境を生んでいるのです。
ある候補者は松山の選挙請負企画会社に1千万円を超えるお金を支払って選挙を戦ったと言われています。
私共の陣営は、まったくと言っていいほどの選挙素人の集団でありまして、
何をするにも、「立候補のしおり」を調べ、「選挙管理委員会(選管)」に尋ねては、
「何をやって良いのか」、「何は出来ないのか」を確認しながらの選挙戦でした。

この選挙管理委員会、その見解は、常に「グレーのものはやってはいけない」
という答えを準備しているようでした。
例えば、今の時代、全国で当たり前に行われている公開討論会でさえ、
多くの選挙管理委員会は違法性を不安視する見解を出すのが常であります。
だからこそ、先に触れた選挙の受け屋が商売になるのです。
過去の経験から、グレーのこと(摘発されないぎりぎりのことまで)を経験的に把握して、
グレーなことをどんどんとやって行くのです。

選挙の事前運動は禁止されています、事前運動に当たるかどうかと言う判断基準は、
①選挙名の特定
②候補者名の特定
③その候補者への投票依頼
の3つであり、この3つ揃えば選挙運動に当たると言います。
そう考えると、
立候補表明の記者会見などはまさにこの3つ揃った事前運動ではないかと思うわけですが、
これは取り締まられることはありません。

また、事前運動ということを引き続き考えてみますが、
例えば皆さんの知り合いが選挙に立候補すると決めて、
応援したい、周りの誰かにそのことを伝えたいと思った時に、
「今度の**選挙に△△さんが出るんのでよろしく」と言わないで応援をすることが出来るでしょうか。
つまり、この事前運動禁止なんて規則は、現実に守られるはずもなく、
金銭の授受や饗応とかいうものがなければ取り締まりもないのが実際のところでしょう。

また、ポスターも誰かと写った物であれば良いだとか、本人の名前がどの大きさなら良いとか、
グレーの部分がかなりありますし、
ありもしない半年以上先の日程が記された国政報告会などの告知ポスターが許されていることなど、
はなはだ疑問であります。
国政選挙の無所属立候補予定者は任期満了6ヶ月前からはポスターが貼れないだとか、
そういうきまりもあるようです。

そして、事前運動が許されないということで、事前に配布など出来る文書なども制約を受けます。
皆さんのお手元には選挙前に多くの候補者から政策を訴える
「後援会討議資料」だとか「後援会内部資料」だとか刷り込みのある候補者パンフレットが
届いたのではないでしょうか。
後援会に加入されている方へも加入されていない方へも、
郵便受け等にポスティングされたりするわけです、
ここでも配布するポスティングのスタッフに賃金や謝礼を支払うと問題になりますが、
それがない限り、先に述べた3つの要件全てを満たした外形を持つチラシやパンフレットが、
「投票をお願いする表現」が具体的にあった場合を除いては選管や司法当局から回収の指示を
されることはなく、印刷責任者等に注意されることで済むようです。

また、街頭演説の内容も、襷や幟旗を立てて、
選挙に通ったらこうしたいという政策を訴えることはかなりグレーな運動でありましょう。
これも具体的な投票のお願いがなければ許されているのが実際であるようです。

アメリカの大統領選などでは、1年以上前から候補者選びが始まり、
キャンペーンが行われます。
莫大な選挙資金がかかるという弊害もあるかも知れません。
しかし、この事前運動禁止という日本の公職選挙法は、
あまりにも新人に不利な規制であるとしか思えないわけです。
4年の任期の舵取り役を決めるのにたったの一週間で周知を計れ等というのも
まったくナンセンスな話だと思います。

選挙が始まらないと「立候補します」とか「当選したらこんなことをやりたい」などといった
立候補を前提とした発言をすることもできない法制度があるわけで、
応援する人も候補者の名前も出すことができないのです。
新人にとって、名前を知ってもらうだけでもとても十分な期間であるとは思えません。
ましてや、政策をお伝えするにはまったく時間が足りないのが、
現状の事前運動禁止と短い選挙期間という現職優遇セットです。
事前運動がしっかりと取り締まられるのであれば、
候補者の資金力に拠らない選挙するという視点からすると、
事前運動禁止と選挙期間の短さというものは、納得をしなければならないとも考えられますが、
しかし、「選挙プロ」や「選挙請負人」にとっては、
告示日には選挙は終わっているとまで言わしめる、事前運動は野放し状態で行われているのです。
例えば、宇和島でも選挙前から街宣車は走り回っていました。
連呼とまでは行きませんが候補者名は当然のようにウグイス嬢の口から発せられておりました。
九島架橋推進と九島架橋反対の両者が豪華な街宣車を走らせていたのも皆さんは見てらしたと思います。
そして、候補者宣伝チラシの各戸へのポスティング。
自治会長さんが地元を一軒一軒立候補表明者を挨拶に連れて回る戸別訪問。
候補者と直接結びつくポスターも街角に溢れました。
いったい、事前運動禁止って何なのでしょう。
やった者勝ちです。負けましたが、私も少しはやりました(笑)。

そして、そうなってしまうと、公職選挙法の立法趣旨であるところの、
候補者がその資金力や出生の格差に影響されず、公平なチャンスを得られ、
もっとも望ましい候補者が選挙にて選択されるようにということとは、
まったく逆の効果を生んでいると思います。

選挙期間中にかけられる選挙費用の上限は法定選挙費用として決められていますが、
実際には、選挙が始まるはるか前から事前運動が始まっているので、
資金力のある候補者が圧倒的に有利になっているのが実態ではないでしょうか。
当地の首長選挙などの場合は、任期毎に退職金が2千万円以上出るわけですから、
それを選挙にぶち込んでいくということも出来るわけです。
旧市・各旧町に後援会事務所を置き、大きな後援会資料を作る、
看板代だけでも大変であります。

ビラもまき放題、街宣車も走らせ放題。戸別訪問もし放題なのです。

一方で、選挙期間中に出来ると規定されていることは何でしょう。

決められた掲示板にポスターを貼ることは出来ます。
その上、ポスター(サイズの制約は受けますが)はその費用が税金で賄われます。
選挙カーを走らせることも出来ます、タクシィーを雇って走らせるだけの経費
(運転手さんの人件費と車借り上げ費用や燃料代)は、公費で負担していただけます。
しかし、看板、スピーカー・アンプなどの経費は出ません。
もちろん選挙事務所の費用は自腹です。
公職選挙法で運動員の休憩場所などを準備することは出来ないとされていますが、
お金のある候補は、各所に事務所を作って休憩など出来るように準備するわけです。

ざる法と言われるも公職選挙法は、資金力のある候補者や政党を圧倒的に有利する。
そして、グレーの部分を、どこまでは大丈夫だという知識と経験のある陣営は、
なんでもありのやり放題をしていくのです。
このざる法のおかしな部分をいくつか触れてみたいと思います。
一番のおかしなところは、街宣車(選挙カー)から政策を訴えてはいけないという規定があり、
連呼しかできないという条文が存在すると言うことです。
一般に、「名前を連呼するだけの選挙カーなんて無意味」
「名前の連呼でなく、政策を訴えるべき」と識者の間では考えられていることと思います。
選挙は政策本意で行われるべきです。
しかし、「車上の選挙運動の禁止」という、とてもおかしな条文があるのです。

第141条の3 
何人も、第141条(自動車、船舶及び拡声機の使用)の規定により選挙運動のために使用
される自動車の上においては、選挙運動をすることができない。ただし、停止した自動車
の上において選挙運動のための演説をすること及び第140条の2第1項(連呼行為の禁止)
ただし書の規定により自動車の上において選挙運動のための連呼行為をすることは、この
限りでない。

 という規定は、選挙カーで移動しながらの演説は禁止(停車中ならOK)。
つまり移動中は名前の連呼しか出来ないとはっきりと明言しているのです。
私は、選挙が終わってからこのことを知りまして、
自身が精一杯政策を訴える街宣をしたと思っていますので、
公職選挙法違反の街宣をしたと言うことになります。

 街宣車や街頭演説以外に選挙で許されている活動は、
A4版のチラシ(印刷費は公費で賄われます@7.30円)を16000枚の配布
(新聞折り込みも可能ですが、1枚1枚に証紙を貼らなければなりません)と
選挙葉書8000枚(この郵送代は税金で賄われます。)の郵送であります。

 それ以外に、個人演説会や新聞広告が許されていますが、
例えば新聞広告は1回が約18万円です。
こんなこと、金が余ってなければやれませんね。
また、チラシと葉書を受け取った人が全員投票してくれたとしても、
当選するだけの得票に至らないという数の文書図画の配布しかできない規制がある
ということも知っていただきたいと思います。

  そしてその一方で、コストを安くつけるために充分な可能性があると思われる、
「インターネットの利用」はかなり制限を受けます。
選挙期間中、ホームページやブログなどの編集や新たな投稿は禁止される「文書図画の配布」
と解釈されております。
今夏の衆議院選挙では、演説の音声データをウェッブ上に公開することは良しとされた
(有権者が自由にアクセスできる形で公開しても良かった)ようです。
国政の政権交代によって選挙へのインターネット利用が解禁となるのではないかと
報じられてもおりますが、
現在は、インターネットでホームページにアクセスをしてきた人が任意でマニフェスト
(選挙公約等)をダウンロードすることも許されていません。
しかし先にも述べましたが、後援会討議資料などと称するマニフェストの様な物を作って、
無差別にポスティングすることは許されているのです。
 政策本意で選挙が行われるべきです、
候補者あるいは一部支援者の高額な寄付によって資金力を持つ者がその資金で事前運動を
行うような選挙を禁止するのが公職選挙法の趣旨であるはずです。
 やはり、公職選挙法の大幅改正はぜひに実現をしていただきたいものであります。

 最後に一つ加えますが、候補者や運動員が各戸を回って、
投票依頼や立候補表明のご挨拶というのは禁止されているということはご存じかと思います。
戸別訪問と呼ばれ、買収の温床になるとかいうことで、禁止をされております。

 しかし、この戸別訪問、皆さんの中にも、候補者が家を訪ねてきて、
「今度、**選挙に出るのでよろしく」と挨拶されたという経験をされた方も多いのではないでしょうか、
メンバーのみなさんには陣営のローラー作戦以前にご挨拶がある方がほとんどかも知れませんが、
そのこともまた、一応、公職選挙法では、してはいけないということになっているのです。

 どうも、先進国では日本だけでこの個々面接(戸別訪問)が禁止されているとの情報も
ありますけれども、
やはり、選挙区の各家庭を一軒一軒回って、
自らの政策を訴えることが禁止されていることは異常であるとしか思えません。
現実には、戸別訪問してPRチラシを各家庭に届けていくという禁止行為が平気で行われている
ことを考えても、投票行動の最も決定根拠となるべく、
もっとも大切なマニフェスト(政権公約)を各戸へ配布することは平等に許されて然るべきかと思います。
候補者と運動員がマニフェストを片手に選挙区内の家々を訪問して政策の説明をして、
市民の声を聞きながらまた政策を煮詰めていくことは、
禁止されるべきことではないと思っております。
公費にて、定形のマニフェストを全戸分作成し、
そのマニフェストを比較することで選挙が行われるべきでないかとさえ思っています。

 私の戦い(事前運動的ですけど・・・)は、
主に街頭で政策を訴えてまわることでありました。
そして、聞いていただいた方の中から、水紋が広がるように支持が広がっていくのではないかと、
おおよそ400回ほどの街頭演説を行ってきましたが、
選挙戦を通じて、一人ひとりの市民の皆さんと直接話をして政策を説明することが
もっとも有効で価値ある選挙運動では無かろうかと
作戦についての反省と時間不足を悔やんでいるところです。

 今日は、こうして、公職選挙法のおかしな規定とグレーゾーンの中でうまくやるのが
当選への近道となっているのではないかという実情、
そして、「選挙のプロ」がお金で選挙を請け負っている実態を問題であることを伝えとようと
お話しをしてまいりましたが、
私の負け戦の原因は、
このこと以前に、私の不徳の致すところと承知していることを改めてお伝えして、
本日のスピーチを締めさせていただきます。
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