眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『牛の鈴音』

2011-02-05 14:59:06 | 映画・本
長すぎる「ひとこと感想」その1。

私はドキュメンタリーが好きだし、「何事も起きなくて、説明もない」のも好ましいと思う方だ。それでもこの韓国映画に曰く言い難いしんどさ?を感じるのは、要するに主人公のおじいさんに対して「好感を持てない自分」がいるからだろう。

私は映画に出てくるオジイサンは総じて好きなヒトなんだけど、このおじいさん(ドキュメンタリーだから実在する本人)は、ちょっと苦手なんだと思う。どこが苦手かというと・・・この寡黙さと揺らがなさ(という組み合わせ)なのかなあ。大人しい、気の小さそうな人にも見えるのだけれど。

要するに、ひたすら働いて家族を養ってきたおじいさんにとっては、晩年の「伴侶」はこの雌牛なのだと思う。

雌牛は通常15年という寿命を遙かに超えて生き、おじいさんと30年も共に辛い農作業を続けた。黙々と共に重荷に耐え、泥にまみれてきたお互い同士にしかワカラナイような歳月・人生だったのだと、映画は語っているように見えた。

長年連れ添ったおばあさんは、日々盛大にグチを言う。そこまで言わなくても・・・と思うような場面もあるけれど、こういう夫と長年暮らしてきたら、妻がこうなるのも無理ないかなあ。」という気もして、私はおばあさんを悪くいう気になれなかった。

働き者で一徹なおじいさんからは、妻は「ラクをしたがる」、つまりは「大黒柱である夫を批判して悪し様に言うわりに、身体を動かさない」怠け者?に見えたのかしら。でも私は正真正銘のナマケモノなので、このおばあさんの感覚(「牛はやめて機械を入れようって言ったのに・・・」などなど)に共感してしまうところがあるのだ。

というわけで、40歳近い?雌牛とおじいさんとの姿に胸打たれるものもあったけれど、「私だったら、牛の方しか見てない夫と、ずっと一緒に暮らすのは辛いだろな~」というような感慨の方が強かった映画。

たとえ雌牛の方が、実際おじいさんの伴侶に似つかわしい人格(牛格?)を感じさせたとしても。(「あの雌牛は主演女優賞!」という声も。)




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6 コメント

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観てないですけど (お茶屋)
2011-02-05 17:08:52
選考会、お疲れさまでした~。
疲れたけど楽しかったですね。

『牛の鈴音』は観てないですけど、ムーマさんの文章から想像するに、このおじいさんは自分のしたいように出来た、お得な人生を送れた人のような感じがします。
そういう人は周りが大変なんです(笑)。
まるで私の両親のようだなぁと思いました(わはは)。
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そういう人は・・・ (ムーマ)
2011-02-06 13:29:17
>お茶屋さ~ん、ようこそ~。

選考会のことが、今日の朝刊に出てましたね。
そういえば4時間半もかかったんだ・・・なんて思いながら読みました。
でも、ほんと面白かったし楽しかったですよね~。

ところで『牛の鈴音』(笑)。

うーん、果たしてこのおじいさんは「自分のしたいように出来た、お得な人生を送れたヒト」なのかどうか・・・。

言いたいことはあっても口では奥さんに敵わないから「寡黙」になる。
でも大黒柱の誇りがあるから、譲れないところはもう(黙って)実力行使。
歳をとると耳も遠くなるから、さらにそのまま「頑固」路線へ。
結果として「揺らがない」ヒトに・・・っていうのが、どうもあんまり「陽性」な感じに見えなかったというか。

でも、「周りが大変」っていうのは事実。
私の場合は、母親が徹頭徹尾そーゆうヒトだったので(わはははは)。
映画のおじいさんの方が「もののあはれ」を感じさせる分、まだ繊細なものがあるかも。(なんだかしみじみしたいい映画だったような気がしてきました(笑)。)
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選考委員との遭遇 (お茶屋)
2011-02-06 20:58:40
>結果として「揺らがない」ヒトに・・・っていうのが、どうもあんまり「陽性」な感じに見えなかったというか。

なるほど。それなら私の父とは違うみたい。

>「もののあはれ」を感じさせる分、

うん、なんとなく可哀想な感じがしてきました。観てないのに色々とスミマセン。

朝日新聞はやめたので明日図書館で見てみます。
今日、TOHOシネマズで、選考会に参加された音楽好きの方Sさんにお遭いしました!大きな記事だったとか。
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『オーケストラ』観たかった・・・(しくしく) (ムーマ)
2011-02-07 10:07:13
>観てないのに色々とスミマセン。

いえいえ、もうご覧になってないのに書き込んで下さってるのが、ほんとに嬉しいです。
ホント言うと私自身、観た時のことは大半忘れてしまっていて、ほとんど脳内再生バージョンでモノを言っております。(それが楽しいんですよね~(笑))

選考会は、ほんとに大きい記事になってました。
朝日新聞さん、太っ腹~(拍手)。
Sさんの『オーケストラ』の推薦文も載ってましたね。初参加の若い方の『ポチの告白』も。
あ、そうだ。お茶屋さんは前回の記事(選考会の翌日だったから1月31日かな?)では写真にも出ておられましたね。そちらはご覧になりましたか?(いい写真でしたよ。)
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Unknown (お茶屋)
2011-02-07 20:41:50
>そちらはご覧になりましたか?

はい。ネットで見ました。
お知らせ、ありがとう(^_^)。
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そうかあ・・・ (ムーマ)
2011-02-07 23:42:35
ネットでも見られるんだ~。ひとつ賢くなりました(^_^)。
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