今回は(ドキュメンタリーではありますが)ネタバレしてます(スミマセン)。
ニュージーランドのドキュメンタリーで、「世界最高齢のダンスグループ」が、ラスベガスでの「ヒップホップ世界大会」を目指す映画・・・という説明だけ見て、さっそく録画することにした。(どんな種類のダンスでも見るのは好きだし、「音楽映画」みたいなモン?だろうから、きっとそれだけでも観てて楽しいんじゃないかと)
でも・・・よりにもよって「ヒップホップ」っていうのは・・・どーなんだろ(ちょっと不安?)。 なあんて思いながら観始めたのだけれど、不安は多少は当たってた?かも(^^;。
映画の舞台は、ニュージーランド最大の都市オークランドからフェリーで35分、人口8000人というワイヘキ島。
そこに高齢者のダンス・グループが誕生した経緯は、詳しくは説明されていなかったけれど、「マネージャー&振り付け担当」?の若い女性ビリーは、「高齢者に日常から一歩外に出てもらいたい」と、地区の公民館で70~90代の人たちを募り、「ヒップホップ」を踊るグループを作った(らしい)。
私が驚いたのは、このビリーという女性が「私はヒップホップって、あんまりよく知らないの。最悪の振り付け師かもね」などと、あっけらかんと言ったとき。グループの高齢者たちは、もちろん「ヒップホップの経験などない」人たちで、要するに全くの素人集団。(しかも「平均年齢84歳」、最年少が73歳で90代がゾロゾロ)
以前、『ヤング@ハート』という「平均年齢80歳?!の世界一ロックなコーラス・グループ」のドキュメンタリー映画を観たときにも、呆気に取られたり、ドギモを抜かれたり、マジ感動したり・・・だったけど、あのときは指揮者(音楽監督)はプロの指導者みたいだったし、「歌」は身体の自由が利きにくくなってからも、まだなんとかなりそうな気がする(思い込みかなあ?)。
でも、こちらは「ヒップホップ」。「世界大会」に出場するようなグループのメンバーは、「大半が10代」という世界。映画の序盤では、思うように動かない身体と、記憶や理解が昔とは違ってるアタマとで、メンバーたちは随分苦労しているように見えた。
観ている私なんて、「どーなるんだろ」と気もそぞろ。なのにマネージャーのビリーは、さほど心配しているようにも見えない。
「ラスベガスである世界大会に、みんなで行くのよ~」(歓声が上がる)
「途中で寿命が尽きたら、骨壷に入れて連れてくからね!」(ここでもドッと楽しげな笑い声)
メンバーたち数人については、その過去の人生もかなり深いところまで紹介されており、本当にさまざまな経歴の人たちが集まっている(らしい)のだけれど、「ニュージーランドのレジェンド・アイコン」などと言われる人は例外的で、ほとんどは私たちの周囲にもいる「普通の人」のように見える。けれど、その自主性というか、明るい方を見ようという姿勢は、ユーモアのセンスに裏打ちされて、映画の進行と共に少しずつ判ってくる。
「獣医師になるのを諦めて、就職したクライストチャーチで大地震に遭って・・・生き残れたら絶対島に帰ろうって、そのとき決心した」というビリーも、「お年寄りが元々好きなの。祖母が大好きだったからかも」「(こんな自分でも)何か人の役に立ちたい」といった言葉だけでは、私などには納得しにくい??ほどの「前向きな行動力」に満ちている。
だから、こんなこと思いついて実行にも移せるし、人を募って「ソノ気にさせる」なんて芸当(としか言いようがない)もできるんだろな・・・などと感心していたら、もっと驚くべき場面に出合った。
大会の地区予選に出場したときのこと。
司会者は、もう一生懸命会場の人たちを盛り上げようとしてくれる。観客たち(もしかしたら出場者も混じってる?)は、最初っからスタンディング・オベーション! 大変な喝采!!なのだ。(パフォーマンスが終わりに近づく頃には、最前列で床に坐ってお辞儀を繰り返してくれる人もいるくらい)
私はその光景を見て、不意に涙が出てきた。
それまでにも「老人って大抵不機嫌だったり、ぼくらのすることには批判的だったりするのが普通なのに、向こうから若い者の文化に近寄って来てくれるなんて、大変な光栄なんだよ」という、別のグループの若いダンサーの言葉もあった。それを証明するかのような、このときの会場の雰囲気の暖かさ、「ヒップホップ」を踊る高齢のメンバーたちへの敬意の真情がこもった若い世代の人たちの態度に、私は感動したのだと思う。
映画が終わる20分ほど前に、偶然若い友人(30代)が出先から帰ってきて、残りの部分は一緒に観た。ラスベガスの町を歩くメンバーたちや、世界大会での会場の様子を観ながら、友人も感ずるところがあったらしい。「少しだけど、観られて良かった」と言ってくれた。
「ここまでくると異文化交流なんだよね」 そして・・・
「自分が60年後にこれが出来るか・・・って、ヒップホップ本気でやってる人は思ったはず。(それでも踊っていたいだろうと思うよ) 違う意味で、自分も50年後にこういうコト(こういう生き方)ができるだろうかって」
(「みんな偉いよな~ほんとに」と何度も言いながら、友人は自室に戻っていった。)
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