甘酸っぱい日々

面白くても何ともならない世界で 何とかしようとする人達のために

キングオブコント2013 総括

2013-10-06 23:23:58 | お笑い全般
あー、面白かった。
今年もとってもわくわくした、ドキドキした。
個人的な事情においては、今までの中で一番。
というわけで、今年もやります、KOC総括。
毎年毎年、いいコント見ていっぱい笑って、好き勝手に自分の意見書いて、それを読んで下さった方にお礼を言って、
私、楽しいことしかしてないな毎年。これでいいのかな。いいか別に。


特に意識しているわけではないのですが、なんだか毎年、何となくその年の傾向とか雰囲気とかを踏まえて、
私が感じたことが総括の考察テーマになっていたりします。
2011年では、「ライブシーンとテレビの差」
2012年では、「芸人さんと一般人の好みは違うのか」って感じでした。
そして今年、2013年の考察テーマを決めるとしたら、
「そのコンビらしさ」……という感じでしょうか。

まずはうしろシティについて。
とにもかくにも、順番もあって、雰囲気に飲まれてしまっていたというか。
なんだか、本来の良さがなかなか出ていなかったような感じがしてしまいます。
それを特に感じたのは二本目でした。
そもそもこの「100億」のネタは、今年の夏の単独、「うれしい人間」の中からのネタで、
この単独から外でかけてる回数が一番多いのはこのネタだと思います。
ただ、個人的に私の感覚から言わせてもらうと…。
正直、なんでこのネタをそこまで推すのかわからなかった。
そしてそれがわからないまま、決勝も終わってしまった、という感じかなぁ……。
すごくいいネタだと思うんです。
金子さんの「たまにいるスゲー奴だ」「2億でいいもんねー!」っていう一つひとつのセリフも、
阿諏訪さんの、一生懸命なのにどんどん墓穴を掘っていく感じも大好き。
ちなみにですが、構図だけ見ると、さらばのRockに結構似てますね。
どぶさらいでもなんでも…と言って、他のどぶさらいがなんて思うかと怒られた阿諏訪さんと、
社会に対する思いを…と言って、お前にとっての社会ここだけやろと怒られた東口さんがかぶる。
ただ、結婚のあいさつという、もう散々やりつくされたシチュエーションで、
貯金いくらだって聞いて思った以上に持っていた、というその展開自体は正直ありきたりで、
いくら金子さんのワードが光っていても、世界をそこまで広げるものではなかったのかなぁと思います。
なんというか、「うれしい人間」の中には、もっと「うしろシティらしさ」が表れているものがあったんじゃないかと思ってしまうんです。
例えば、ここから少しネタバレになってしまいますが、
廃部寸前の野球部が部員を探しているところに、明らかに過去に野球をやっていて何かトラウマを抱えた男子が通りかかり、「あいつ入りそうー!!」という「野球部」とか、
友達が事故に遭って駆けつけた金子のちょっとした違和感を指摘する阿諏訪…という「手術中」とか。
ポップでマンガチックで、明るくてかわいらしくて、
でも人間の心の深いところにある、闇とか見栄とかとがってるところとか、そういうものが炙り出されてくるような、
そういうのこそ、うしろシティらしさなんじゃないかなと思うのです。
100億のネタは、そういう「らしさ」が表れてこなかったような気がしてしまう。
ただもしかしたら、彼らはそういうところからの脱皮を図っていたのかもしれない。
私はこのネタの、「そういうの金ねぇ奴から聞きてえわ」っていう金子さんのセリフが大好きで(笑)、
何とも鋭くて性格悪い切り口で、何度見てもひーひー笑ってしまうのですが、
こういうのは今までのうしろシティには、そんなになかったような気がして。
彼らなりの「芸人ウケ」を狙っていたのかもしれない。私の勝手な想像ですが。
「自分たちらしさ」にこだわりすぎると、他のパターンができなくなってしまうという恐れもありますが、
それでも「彼ららしさ」をもっと出したネタが見たい、というのはこちらのわがままかなぁ。
ただ、どんな結果であれ、きっと「私はうしろシティのネタが一番好きだった」という方もいっぱいいると思う。
この二人なら大丈夫、きっともっと素敵なコントを見せてくれる。これから先もずっと。

うしろシティと同じようなことを思ったのは、ジグザグジギーに対してでした。
もう彼らはライブシーンの中では、どこに行ってもウケる、ウケて当たり前の人気者。
どういうコンビだかみんなわかっているからこそ、ちょっと間が長くても待てるし、変化球のネタが来たらそれはそれで爆笑。
ただ、それがテレビという場になるとどうなんだろう。
まだ持ち味があまり浸透していない段階で、変化球のネタをやってしまうのは、
本来の彼らのよさが理解してもらえないまま終わってしまうのではないだろうか。
今回の二本目で、「2700みたい」というような感想があるのがとても残念で…。
うーん、本来の彼らの売りは、そこではないんだよっていうね。
だからもう本人達はやりすぎてるくらいやってる、出欠とか、ジャムトーストとか、喫茶店!とか、
そういうネタでもよかったんじゃないかなぁなんて…。
まぁ、終わってからでは何とでも言えてしまいますが。
あと私は、個人的にダイイングメッセージが大好きなので、それを決勝の舞台で見たかったなぁというのもある。
今回の二本目のネタは、2回戦でやったものだそうで、それを決勝に持ってくるのはまあ当たり前。
ですが、ジグザグのみならず、KOC全体に対して、
私の意見としては、別に予選でやったネタを絶対に決勝でやらなくてもいいんじゃないかなと思っています。
さすがに二本とも変えるのはどうかと思いますが。
やっぱり、予選と決勝の雰囲気って全然違って、予選の場では面白くても、
テレビの画面を通して見るとどうか、自分達を知っている人達ばかりの中でやるのとそうでないのとの差はどうかって全然違ってくる。
だから予選は、ネタ自体の面白さはもちろんですけども、
そのコンビの実力やスキルや持ち味を評価してもらってる、と考えていいんじゃないでしょうか。
そう考えれば、予選とネタを変えても文句は言われないと思う。
場に合わせたネタを選べるのだって実力だ。
ダイイングメッセージだって、これは去年の準決勝で落とされてしまったネタだそうですけども、
この一年でさらに磨かれた、その地力を評価してもらえたと思えばやってもよかったんじゃないかなって…。
(と言いながら私が見たいだけ)
なんだか、ジグザグに直接関係ないことまで色々書いてしまいましたが、とにもかくにも今回の決勝進出が次につながって、
さらに色々な番組に呼んでもらって、その「らしさ」を十分に発揮してほしいなぁと思いました。

鬼ヶ島、天竺鼠が、自分達の持ち味を見事に活かし、場にどハマりしている中で、
さらにその上を行って優勝したのが、これまたこの一年で自分達らしさを追求してきたかもめんたるというのも、
何ともドラマチックなんじゃないかなと思ったりしました。
このインタビューを読んで、さらにその思いが深まったというか。
去年浸透させた、「かもめんたるはこういうコンビだ」というイメージをさらに突き詰めていった先の結果。
怖いとかグロいとか一言で言ってしまうのは簡単ですが、
それよりもさらに、誰しもが持っているちょっと捻くれた気持ちとか、寂しさとか理不尽さとか、
そういうのを丁寧に表現したことが支持されたんじゃないかなぁ。
白い靴下もよかったですが、一本目の言葉売りを見ていると、なんだか古傷をえぐられるような気持ちになる(笑)
私は何度見ても、槙尾さん演じる青年の、
「わかってる…!僕には才能がないんだ……!!」
でいつも泣きそうになります(笑)
なんだろうなぁ、構図だけ見てみると、金持ちの婦人が夢を追いかける青年を咎める、という結構救いのないストーリーだと思う。
それでもこれが笑いになり、なおかつ多くの人に支持されているのは、
きっと、直接的に言われていないことをみんな感じ取れるし、そういう風に作っているからなんだと思う。
自分の夢を諦めてきた人達はきっとたくさんいる。
自分は天才のはずだと信じていて、でもどこかでそうではないとちゃんとわかっていて、
「上京」の阿諏訪くんほどホンモノになれるわけではなくて(笑)
そうやってみんな頑張っている。
そういう悲哀と、「でも僕達はあなたのことわかっているよ」というメッセージが、あの槙尾さんの
「僕には才能がないんだ……!!」
というセリフに凝縮されている感じがしました。
大会終了後、THE GEESEの高佐さんのツイートにこうありました。

キングオブコント面白かった。
そしてコントは時代と添い寝していかなくちゃいけないと大竹まことさんから常日頃言われているが、今回のKOCを見て強く思った。 via Twitter for iPhone
2013.09.24 02:17

高佐さんが思っていることと全く同じではないかもしれませんが、私もこのツイートを読んで共感しました。
「夢」を叶えられる人なんて一握りだ。 みんなもがきながら頑張っている。
そういう一人ひとりの気持ちに訴えかけてくるようなかもめんたるのコントが、
今の時代に求められているのであり、深く刺さったのではないかなと思いました。
優勝本当に本当に、おめでとうございます!!



ここからは、今回のテーマとは逸脱してしまうかもしれませんが、
私が今一番可愛がっている野良犬さんたちについて、思ったことを思い切り。


心がひりひりする。
この一年で、私が彼らに対して一番使ったフレーズ。
ドキドキでもわくわくでもある。
けれどそれと同時に、毎月新ネタ5本やって、4月に単独やってまた8月にもやって、
頑張りすぎてちょっと不安になってしまう、そういう意味合いも込めた言葉でした。
でも、どんな状況でも、彼らのネタは本当に面白くて、
野良単独を見たときには、このオカリナで今年のKOCの準決勝、ひいては決勝に出てるところが見たいとまで瞬間的に思って。
だからとにかく、まずはそれが実現したことが本当に嬉しい。
面白くても決勝に行けない人達、たくさんたくさん見てきたから。
その中で抜けるということが、どれだけ難しいことかわかっているから。


その上で。
もっと、本当はもっとウケるはずのネタなんですよね、二本とも。
単独の時、そしてRockは予選2回戦を見に行っていたんですが、その時は本当に会場を揺るがすくらいのウケで、
その時と何が違うのか、考えてみてもいまいちピンとこないんだよねぇ……。
ピンとこないなりに感じたことを書いてみますと、
Rockに関してはちょっと、森田さんが力入りすぎだったかもしれないなぁと。
ものすごく細かいことを書きますが、声のトーンが上がるタイミングが、ちょっと…、ちょっと早いんだよなぁ。
野良野良の時に一番ウケていたのは、「響いたんかなぁー!?」というセリフなのですが、
そこが決勝の舞台にそこまで来なかったのは、声のトーンが上がりすぎて、
聞きとりづらかったのと、見ている方のテンションがいきなりそこまでついて行けなかったからなんじゃないかなぁなんて。
「我が社の一番の敵はRockでしたわー!!」のところも、
一番強く言ってほしいのはRockという単語なのに、その前でトーンが上がり切っちゃってるからその上に行けない。
テンションが上がりきっていたからなのか、それとも緊張で声がうわずってしまったのかはわかりませんが、
本来上がってほしいところの一個手前で上がってしまってるんですよね。
そこがちょっと、惜しい所だったのかもしれないと思ってしまいました。
ただ逆に、このネタでの東口さんは完璧だった。
よく言えばピュアで真っすぐ、
悪く言えば考えが浅くて人格も薄っぺらい(笑)
口調も仕草も表情も全部ひっくるめて、そんな青年像が見事に表現されてました。
今まで見たこのネタの中で、一番キャラが表れてたと思う。一番良かったです。
本番にきっちり照準を合わせて来れる感じ。当たり前かもしれないけど恐ろしい。

一方、オカリナの方では、東口さんがちょっと間をつめちゃってるところがあるかなぁと思ったり。
ただなぁ、これは本来9分のネタなので、
もっと時間があれば、もっとウケていたはずだと思うんです、と言うしかないというか。
そんなこと言ったところで、何にもならないのはわかっていますが。
数えてみたんですが、私はオカリナのフル尺を今までにどうやら7回見たことがあるようで、
もう流れは頭の中に入ってしまっていました。
だから、決勝直前の「ごっそり」というライブで4分尺を初めて見れたのですが、
感想は、「もう、わからん!!」っていう感じで(笑)
それまで見過ぎちゃってて、初めての人がこの4分で見てどう思うか、ということがもう全然わからなかった。
でもやっぱり決勝で見ると、もっと長い時間でこそいきるネタだなぁと思ってしまって。
このネタは森田さんの振り回される戸惑う表情もいいけれど、長い時間見てくると、
後半の方は段々、東口社長のキャラに注目が移るのが魅力なんじゃないかなぁと勝手に感じています。
単独の時では、後半は社長が「びっくりするよ?本当にびっくりするよ?すごいよ?」と言うだけで、
そのハードルの上げっぷり、そしてピュアで愛しいバカさ加減に、クスクス笑いが広がっていく感じがするんです。
本来の笑いどころはその次なのに。
ただやっぱり尺が短いと、そこにまで至らないのかなぁ。
さらに、野良の時にも書きましたが、私は東口社長がオカリナを吹くところが大好きで。
でもやっぱり「いくよ?」でたっぷりと間をとって、客席も息をのむくらいの緊張感を漂わせてからこそ、なのかもしれないと。
あとこれはまたまた細かすぎるけど、オカリナの音がもう少し低い方がいいんじゃないだろうか。
それと、吹く時にちょっと息が強すぎる気がする。
あんま「ホー」になってなかったよ(笑)

……ダメだ、こんな粗探しみたいなことしていたらキリがなくなってしまう(笑)
だから、本来の良さがあまり出ていないと思うところは色々とあったのですが、
それでもこのオカリナのネタが全国区に届いたのが本当に嬉しくて。
一度も明示的な説明はしていないのに、
契約を取って帰らないといけない→社長をおだてるしかない→どうやっておだてたらいいのかわからないものが出てくる
という設定と流れが、本当に丁寧にわかりやすく提示されている。
そして、みんな存在は知っているのに、その相場は全然わからない「オカリナ」というものに目を付けるところがすごい。
はじめの、よくありそうな営業マンの契約というシーンから、社長の「このオカリナ、いくらだと思う?」というセリフが出た瞬間の、
客席の「そういうことかー!!」という笑いの気持ちよさったらない。
このネタを初めて見たのは、ペイジワンZというライブだったのですが、
オカリナの値段、重さ、穴の数……と次々と繰り出される質問に笑いながら、
これだけの設定を持ってこれる森田さんって、本当に天才なんだなぁと、あまりの感嘆にため息をついてしまいました。
そういう斬新な設定にも関わらず、みんなこういう経験をどこかでしたことがあるんじゃないか、という、
あるある的な要素が根底に流れている感じがするのもまたいいですよね。
なんとか何か言おうとして、「穴一個1000円ですもんね!」と言ってしまう滑稽さ(笑)
思うようなハネ方ではなかったかもしれない。
でもこのコントに、感銘を受けて、あるいはやられたと思って、心が動いた方はきっとたくさんいると思うから。
素敵なコントが決勝の場で見れて、私は本当に幸せです。

優勝しか見ていませんか?
優勝しなければ意味がないですか?
そう思っていそうな人達ですね、そこしか見ていなかったからこそ、こんなに全力で走ってきた。
だから、こんな言葉には意味がないかもしれないけど、
今の私は、さらば青春の光のコントが一番好きです。
私は今年の決勝で、二人が本当に自信のある二本のネタで、
ここまで笑いを巻き起こしたことが本当にかっこよくて、素敵で、誇らしいと思いました。
今まで、心がひりひりしたことたくさんあって、
情けないけれどなぜか涙があふれてしまったこともたくさんあって、
それでも見続けて来れてよかった。



去年の総括で、私はこんなことを書きました。

 きっと、今大会を見た人、それぞれの個人的キングオブコントがいると思う。
 今回、たとえ評価が低くて、残念だと思っても、その人が好きなものを信じて行けばいいと思う。
  だから、どの芸人さんも、どのファンの方も、なんら恥じることも、落ち込むこともないと思います。
  響くべき人には、きっと響いていると思います。
  例え一人でも、このコンビ初めて知ったけど面白いなぁ、
 DVD借りてみようかなぁ、ライブに行ってみようかなぁって、
 そう思っていたら、それが何よりの収穫なのではないでしょうか。

この一節は、去年のKOCで、思ったようにウケなかった芸人さんのファンの方に向けて…というつもりで書きました。
……今考えてみると、本当に、何を偉そうにこんなことをって思うんですが(笑)
全くね、何様のつもりなんでしょうかね。
本当に失礼いたしました……。
だからこの頃は、なんというか、全く当事者的な意識はなかったんです。
盛り上がっている輪の外側から状況を見ている感じというか。
でもその一年後、さらば青春の光にここまでハマってしまうとは。
こんなことになるなんて全く思っていなかった。
まさか自分が、その「響くべき人」になっているなんて、考えもしませんでした(笑)

何が言いたいかというと。
結果や、ウケ具合や、その人の今の状況なんて関係ない。
響くべき人には、必ず響くんです。
その人にとって、今一番求めているコントが、きっと響く。
私はそう思います。


賞レースであるのと同時にTVショーだから、
事前特番とかで「チャンピオンになったら人生が変わる」と大々的に言うのは、まあ仕方ないことだとは思います。
でも、私は正直、そういう煽り方はあまり好きじゃないな。
チャンピオンになれなくても、人生は変わる。
この賞レースが、たくさんの人の人生を変えている。
このコンビ面白いなぁ、DVD借りてみようかなぁ、ライブ行ってみようかなぁ、って、
きっとそうやって思った人が、たくさんいたはずだ。
そうやって、多くの人の人生を変えて、
明るくしたり、勇気づける力があるからこそ、
夢がある世界といえるんじゃないでしょうか。

響いたんかなぁ、みんなのコントが!!




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