甘酸っぱい日々

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神保町花月本公演「予言者たち」 (19/6/23)

2019-06-29 19:01:59 | ライブ感想♪
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神保町花月本公演『予言者たち』
2019年6月13日~23日
出演:
田所仁、関町知弘(ライス)
児玉智洋(サルゴリラ)
川上友里(はえぎわ/ほりぶん)
高畑遊、川崎麻里子(ナカゴー)
金山寿甲(東葛スポーツ)
野上篤史
脚本・演出:鎌田順也(ナカゴー)
***


神保町花月「予言者たち」。
去年12月、2019年には神保町花月がいろいろな劇団さんとコラボするという企画が発表され、ライスの名前もあり、ずっと楽しみにしていました。
その期待をさらに超えてくるような本当に楽しい舞台でした。
久しぶりに、ガチで演技をするライスと児玉さんのことが見られて嬉しいです。
私は14日、22日(昼)、23日(千秋楽)の3回見に行くことができました。
私的初日だけでもとても面白かったのですが、やはり2回、3回と見るにつれて、様々なことに気が付いて、楽しみ方が増しますね。
今回の記事では、いろいろな項目に分けて、私の感想や考察をまとめてみようかなと思います。
あくまでも個人的な見解なので、違うご意見の方もいらっしゃると思いますが、「この人はこう思ったんだね」ということでご理解いただけますと幸いです。


まずは今回のコラボについて。
ナカゴーさんの作品を見たことがないのにあまり言えたことではないのですが、かなりいつもの神保町花月作品とは違う雰囲気に感じられて。
むしろ、関町・田所・児玉の3人が、ゲストとしてナカゴー作品に参加させてもらっているかのような感覚だった。
演出や見せ方が斬新で、刺激や衝撃を受けることばかり。
でも、とにかくストーリーが面白い。
落ち着いた始まり方から想像できないほど、後半は観客が声をあげて笑えるところばかりで、演者の熱量もどんどん上がっていく。
そういうところが演劇初心者の私でも見やすかったと感じられた一因なのかな。
そんな中でも、劇団の色に合わせつつ、自分達の持ち味や個性を爆発させていた3人の姿を見て、なんだか胸が熱くなってしまった。
今までとは違う文化にちょっと苦労したところもあるだろうに、そういうのを全く感じさせられない。
後半の、暴れまわる児玉さんなんて、もはや普段の児玉さんだったもんなあ(笑)
そんなわけで、普段とちょっと違う雰囲気の3人を、昔からこの3人を見ていた神保町花月で見るというのも、エモーショナルなものがありました。


演出・ストーリーについて

「登場人物、全員予言者」というテーマのこの舞台は、登場人物のみならず、観客の私たちも予言者になれるような、そんな仕掛けがちりばめられていました。
まず、開演時間10分前になると、前座のようなパフォーマンスが始まる。
登場人物が2人ずつ入れ代わり立ち代わり舞台に出てきて、この舞台のセリフを断片的に話し始める。
それを聞いた観客は、セリフの意味はわからないものの、その言葉はなんとなく頭に入った状態でお芝居を見始めることになり、
ストーリーが進んでいくうちにそのセリフが出てくると、「ああ、さっき言っていたのはこれだったのか!」と快感を感じる。
さらに、ストーリーの中でも、予言者たちが、このあとどんな展開になるのかを全部言ってしまう。
このような仕組みによって、自分も予言者になったかのような感覚になるのでした。本当に面白い試み。
そして、このあとの展開を全部言ってしまっているのに面白いというのは、それだけみなさんの見せ方が上手いからですし、
展開だけではなく、そこに至るまでの登場人物達の心の動き、感情の揺れに、様々考察したい点が出てくるからなのだろうな。

物語の中心を貫くのは、「見て見ぬ振りはできない」という言葉。
子供の頃、見て見ぬ振りができずにいじめられてる桑子ちゃんを助けたいぶきさん。
彼女のその態度は、大人になった今でもずっと貫かれていた。
不倫に手を出してしまったいぶきさんは、悪いことだとはわかっていても止められなかった。
けれど、痛い目に遭って、自分のしていることの愚かさに気付いた時、きっと見て見ぬ振りはできなかった。
だから高見沢さんに別れを告げる決意をしたのかなと。
夫の良純さんは、いぶきさんと高見沢さんが不倫をしているのを知っていても黙っていたことを、「俺は見て見ぬ振りができる人間だから」と言った。
それは言外に、いぶきさんはそうではないと伝えていているということで、その言葉がラストシーンにいきてくる。
ドタバタ劇だし、いっぱい笑えるけれど、最後にずしりと観客の心に残るメッセージを残していったのでした。
「見て見ぬふりはできないわ」

そしてもう一つ、テーマとしては「人間の業の深さ」みたいなものを感じさせられました。
冒頭の、いぶきさんのお店に桑子ちゃんがラーメンを食べにくるシーン。
桑子ちゃんがデザートの杏仁豆腐を食べた後に、オーギョーチも食べてもいいですよ、追加料金なんかとりませんと言ういぶきさん。
その後に言う。「1つ食べたら、もう1つ食べたくなるのが世の常です」。
それは、「結婚相手がいるのに不倫に手を出してしまう」、という、もう1つ食べたくなってしまった、この話の登場人物達のことを暗示していたのかな。
不倫をしていたカップルのうち、高見沢さんは一級建築士、里中先生は中学校教師というエリート。
それでも、自分を抑えられずに不倫に走ってしまったところに、業の深さが表れているような気がする。
さらにこの二人は、女性側からこの関係を解消しましょうと言われても、諦めることができない。
最後に死んでしまうのもこのふたりということで、結局悪い人間には天罰がくだるというような、昔話的な要素も感じられました。


登場人物全員、予言者!? 怒涛のように巻き起こる“ややこしい事態”(カンフェティ)
こちらは稽古が始まる前のインタビューなのですが、これを読むと、今回の台本は、ある程度はアイデアを考えたのち、
演出・脚本の鎌田さんが本人達に会ってから、本格的に当て書きをして仕上げていったという感じなのでしょうかね。
というのも、私は3人の役柄がまさにぴったりだと感じられたので。
それでは、関町・田所・児玉の3人のキャラクターについて。

関町知弘@里中先生
関町さんは本当に、「正しい普通の人」が何よりのハマり役。
彼が頭がおかしい役をやってるのももちろん好きですが、見た目は普通そうな人なのに頭がおかしいという役をやっているのはさらに好き。
関町さんは、正義感が強すぎるせいで、最後は教え子を守るために自分を刺してしまうというカオス。
こういう、まっすぐなのに狂っている役の関町さん、本当に大好き。
あまりにも正しさを貫こうとするせいで、逆に冷静に考えたらおかしくなる…という感じ、本当に好きなんですよね。
里中先生は、蒔絵さんと別れたくないという時に、あなたがいればもう何もいらないし、「仕事だって誰かにくれてやるよ!」と叫んだ。
でも最後にふっと我に返った時、自分が一番大切にしたかったのは、教師という立場と、その正義感だったのだろうな。
今回の舞台では、意図的に時代設定を古めにしているのか、あるいは里中先生が年齢高めの役柄だったのかというのは、
最後まで分からなかったのですが、かなり古風な言い回しが多かったように感じられて。
「あなた、電話口でずっと泣き続けるものだから」
「僕は、あなたから離れられる気がせんのです」
(すみません、3回しか見てないし、メモも取ってなかったのでうろ覚えで…でもこんな感じのセリフ)。
普段の言葉遣いとはだいぶ違っていても、それを違和感なく自分の言葉にして乗りこなす関町さんのことが大好き。

田所仁@高見沢
田所さんは、表情豊かで、二次元のアニメキャラクターがそのまま三次元にやってきたかのような、
コミカルな動きや表情が堪能できて最高に楽しかったなあ。
かと思えば、シリアスな雰囲気の場面では、こちらがハッと息を呑んでしまうくらいに一気に空気を変える。
そのすごさに改めてドキドキしてしまいました。
そしてとにかく物語後半がすごかった。
台詞量が膨大で、しかも、誰かのセリフを受けてではなく、きっかけもオチも含めてほとんど自分から言わなきゃいけない。
今まであまりなかったと思うし、だいぶ難しそう。でもそれを感じさせないテンポ感でした。

そしてね、今回のライスに共通して言えることなのですが、
鎌田さんが、演出をつけるときに、かなり二人をその…セクシーに描いてくださっていたのではないかなって(笑)
なんなのでしょう、今回のライスは本当に大人の色気が溢れていた。
私はね、ライスのこと、昔から好きだったので、そういう色気を感じることも多かったのですが、
それを世の中の全員に理解して頂けるなんて全然思っていなかったし(笑)、
作り手側でライスのことをカッコイイって言ってくれる人なんて、山脇唯さんくらいだと思ってたので(笑)
(参考:「2SEE MORE #19」ゲスト:関町知弘(ライス)

例えば、いぶきさんのお店に、高見沢さんがひょこっと顔を出して、「後で、公園でね」と言うシーン。
高見沢さんが引き戸を閉めようとしたときに、思わずいぶきさんが駆け寄るけれど、
高見沢さんはそれをわかっていながら、「おあずけ」とも言いたげな表情で引き戸を閉める。
例えば、里中先生と蒔絵さんが公園で逢引きをするシーン。
里中先生が、突然自分を呼び出した蒔絵さんに対して怒った後、
でも本当に嫌だったら来ない、あなたに逢いたくて来たのは私の判断だというようなことを言いながら、
蒔絵さんの膝に置かれた手にそっと自分の手を重ねる。
今回、こんなに彼らの色気を感じられたのは、
演出の鎌田さんが引き出してくださったのか、「不倫」という背徳感のあるテーマがそうさせるのか、それとも、その両方か?
ともかく、鎌田さんが、もし「芸人としてのライス」をあまりご存じなかったとしたら、
そういう方がフラットな目で見た時に、新たなライスの魅力として、こういうセクシーな部分を引き出していただけることに、
他ジャンルの方とのコラボレーションの可能性の広がりを感じたのでした。
……なんか、すごくいろいろ、評論家ぶって書いてしまったんですけれども、
結局言いたいことは、「セクシーなライスが見られて本当に嬉しい」という、一言に尽きます(笑)

児玉智洋@たいやき屋の主人
児玉さんはすごい。
児玉さんは本当にすごい。
自分のターンになったら圧倒的な存在感で場を支配して、何でもないセリフでもはちゃめちゃに面白く感じられてしまう。
本当に、いつどんな場でもおいしいところを持って行くよね、強いよね。
この人は一体なんなんでしょうか(笑)(褒めていますよ)。
どんなお客さんの前でも笑いをもぎ取り、主人公になってしまう力が強すぎる。
もう、言いたいことはたくさんありますが、特に「家族!!」の一言で笑いを奪っていったところは、
あまりにもすごすぎて、ヒーヒー笑いながら感動すら覚えました(笑)
ああ、この人のすごさ、もっと世に知れ渡ってほしいな。
冒頭にも書きましたが、普段とは違う演出、普段とはちがう客層の中で、あまりにもいつもの自分を貫ける強さ、素晴らしかったです。

急遽出られなくなってしまった赤羽さんが本当はやるはずだった役も、とっても魅力的で素敵な役だったなあ。
この役を赤羽さんがやっていたら、もう少しコントっぽくなって、全体の印象もまたちょっと変わっていたかもしれませんね。
とはいえ、とにかく健康が一番…ゆっくり休んでください…。
大変贅沢な話ではありますが、またいつか、ライスとサルゴリラの4人で共演できる時があればいいなあ。



久しぶりに、神保町花月本公演に出演しているライスのことが見られて、本当に嬉しかったです。

私的初日、14日の公演を見終わった後に、ぼんやりと考えていました。
こんな私だけれど……いろいろ文句言ったり、一時期離れていたり、全然優良なファンではなかったけれど、
でもそんな私でも、彼らを見続けてきたからこその感慨ってあるなあと。
私、この場所で、この劇場で、いろんなことをやっているライスを見てきたのです。
昔、「宇宙でクロール」の時とかは、田所さんが女優さんをギュッと抱きしめただけで、ピュアな私は心の中でキャーキャー言ってたわけです。
あの頃は本人達も若かったし、私も若かった。
でもそれから、彼らも年を重ね、恋人がいる役が当たり前、結婚してる役も当たり前になって、
今回はさらにその先、二人とも不倫をする役柄だなんて。
本当にね、関町さんが不倫相手に「あなたがいれば他に何もいらない」と言う場面や、
田所さんが女性に手を上げる場面が見られるなんてね。
生きていれば、いいこともあるものですね(笑)
彼らが歳を重ねてきた分、今だからこそできる役柄、表現がある。
例えば、もう神保町作品のようながっつりした演劇で、彼らが学生役をやることはもうないかもしれない。
けれど、その分、今だからこそできる役柄の表現を見ることができるんだなあって。
そう考えると、年を重ねるのも悪いことではないのかもしれないなって思えてくるのでした。
これからも、その年齢の彼らだからこそ見せられる役柄、表現を見せ続けてほしい。
それを見届けるために、一緒に年を重ねさせてほしい。そう思ったのでした。


【公演レポート】“予言者たち”が汗だくで熱演、鎌田順也「不倫のお話が主です」

“ネタバレありき”で展開!? 不倫カップルの群像劇「予言者たち」でライス、サルゴリラ児玉が熱演

(ナタリーさん、ラフアンドピースマガジンさん、写真いっぱいありがとうございました!)


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