甘酸っぱい日々

面白くても何ともならない世界で 何とかしようとする人達のために

神保町花月本公演「演劇♡顧問」 (19/4/28)

2019-04-26 23:00:00 | ライブ感想♪
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神保町花月本公演「演劇♡顧問」
2019年4月26日~5月6日
出演:
村上純(しずる)
池田一真(しずる)
カートヤング
バイク川崎バイク
ヒラノショウダイ
日高ボブ美(□字ック)
大竹ココ(□字ック)
水野駿太朗(□字ック)
山田佳奈(□字ック)
脚本・演出:山田佳奈
***


神保町花月が今年から行っている、外部の劇団さんとのコラボ公演。
4月は□字ックさんとしずるのコラボ。
どんな雰囲気なのかちょっと緊張して行ったんですが、全員が当たり前のように演技力が高く、
しかも役者さんと芸人さんがお互いをリスペクトしている様子が伝わってきて、とてもいい相乗効果だと感じました。
しずるの二人はさすが、もはや「演技力が高い」とかそういう問題ではなく、あまりにもナチュラルにその人物として物語の中に存在している。
感情をぶつけ合う人々の中で、BKBさんとカートヤングさんの抑えの芝居も素晴らしい。
ヒラノさんは未来の神保町を担う人だねえ。いや、むしろもう担っている。
ロ字ックのみなさんの、パワフルな演技も本当に見ごたえがあって楽しかった。
色々と言いたいことはあるのですが、今回の感想はあえて絞って、しずるのお二人のことをメインにしたいと思います。


ストーリーは、高校の演劇部顧問の先生達が織りなす、複雑な人間ドラマ。
地域の高校の演劇部が出場するコンクールの打ち上げで、居酒屋さんに集まってきた顧問の先生たちのワンシチュエーションコメディ。
それぞれの作品についてお互いの思いを語り合う中で、だんだんと建前が崩れ、本音が溢れ出す。
さらに、この場に審査員の村上さんと川崎さんが到着したことで、一層混沌とするその場。
池田先生がおもむろにマイクを取り、客席に語りかける。
『こんなところでアイツと再会するなんて思っていなかった』
審査員の村上さんは言った。
「池田、久しぶり!」
そう、この二人は以前同じ劇団で、ともに夢を追っていた仲間だったのだ。
まさか、別々の道を選んだアイツと、こんなところで会うなんて………。



すごく中途半端にあらすじを書いてしまったのですが(笑)、もうとにかくストーリーも配役も大好きでした。
演劇部の顧問の先生たちは、それぞれの高校が披露した作品について激論をかわす。
大衆受けするものがいいものなのか?
顧問の先生がいいと信じたものを生徒に押し付けていいのか?
高校生が不倫のストーリーをするなんて、作品としてはよくても教育上どうなのか?
いろいろな意見があり、いろいろな価値観がある。
公演を見に行く前の村上さんのコメントで、こんなものがありました。
 『高校演劇大会とお笑いの賞レースには思い当たる共通点がチラホラありまして、
  今回脚本を読ませてもらって改めてニマニマしてしまいました。』
 神保町花月4月本公演 □字ック×しずる「演劇♡顧問」稽古場レポート
そのコメントを思い返しながら、今回の舞台を観劇させていただいてました。
そうだね、通じ合うものがある。
「なにがいいものなのか」なんて、シンプルだけど一番難しい、ということ。

何がいいものなのかを追い求めて行く、この物語の登場人物たち。
彼らのカッコ悪さ、ダサさ、意地悪さが浮き彫りになりつつも、人間はやっぱり愛しい。
そんなストーリーはまるで、村上純が作り出すコントの世界のようだ。
演劇に青春を費やした高校生は大人になり、演劇部の先生になり、自分が担当する子供たちに夢を託す。
そこには大人たちのもう一つの青春がある。
しずるがそんな姿を演じている様子は、まさに青春コントを引っ提げて世に飛び出した彼らが、
年を重ねて新たな表現を追求している姿と重なるようにも感じられました。

このお芝居では、出演者の本名がそのまま役名になっていて。
だからみんな〇〇先生、と呼び合っているのですが、
そんな中で、審査員の村上さんが、池田先生に呼びかける。
「池田、久しぶり!!」
二人の関係性が一気に明らかになる、この村上さんの一言を聞けた瞬間、
まだまだ舞台の序盤なのに、胸が高鳴り、私は「あぁ……今日本当に来てよかった……」と思ったのでした(笑)
しずるの二人にこんな関係性の役柄を割り当ててくださった、脚本・演出の山田さんに感謝しかありません。
二人が、本名と同じ名前で呼び合いながら、別々の道を選んだ昔の仲間を演じるなんて、エモーショナルが爆発しそう。
もしかしたらこの二人にも、こんな未来があったのかもしれない。
だけど、今ここにいてくれる。
この公演のストーリーも相まって、改めて、
しずるがこの道を選び続けて、二人でこの世界の最前線に挑戦し続けてくれていることに、感謝でいっぱいになりました。



平成最後の神保町花月本公演。
そして個人的な話ではありますが、この公演が、私の平成最後のお笑いライブでした。

私自身が、自分の過ごした平成という時代を語る上で、間違いなくしずるの存在は欠かせません。
レッドシアターを見て彼らを知り、この人達のネタを見てみたいと思って劇場に足を運んだ時から、私の東京吉本ライブ通いは始まったのです。
東京吉本の芸人さん達を追いかけて、いろいろな劇場に行ったし、いろいろなライブや舞台を見に行った。
その中で、私の性格が形成されたし、芸術に対する感受性を磨いていただいたと言っても過言ではありません。
平成最後の神保町本公演は、演劇に青春をかける大人たちの物語。
私自身が自分の青春を全て費やした劇場でそういうお話を見て、平成を締めくくることができたのが、本当に嬉しかったです。

今の私があるのは、みんな、しずるのおかげだよ。
しずるに新しい世界を教えてもらって、色々な場所に連れて行ってもらった。私の平成という時代を彩ってくれてありがとう。

お笑いライブにすべて費やした私の平成という時代、全力で駆け抜けました!楽しかったです!
皆様ありがとうございました。それでは、良い時代を!




【公演レポート】泣く、うめく、吠える!演劇部顧問たちの熱い一夜描く「演劇▽顧問」開幕

木曜日のミレニアルズ #23 「TCC新人賞を獲得したお笑い芸人グランジと考える笑いと広告コミュニケーション」 (19/4/25)

2019-04-25 23:55:00 | お笑い全般
4月25日は、「木曜日のミレニアルズ」というセミナーに行ってきました。
広告会社の方が主催されていて、グランジの遠山さんと五明さんがゲスト。
お二人がラジオCMに関わるようになった経緯や、CM制作とコントのネタ作りの共通点、どんなところから発想するのかなど、
貴重なお話が色々と聞けて本当に大満足のイベントでした。

今回、このイベントには「ログミー」という会社の取材が入っていたようで、
そのサイトで、今回のトーク部分はほとんど詳細なレポがされています。全文とも言っていいくらい。
すごいですよね。こんなに文字起こししてもらっちゃって贅沢だな、本当にありがたいです。
なので、もはや私のブログに意味ないのですが(笑)、
一お笑いファンとして聞いていた私の感想をメインで書かせてもらおうと思います。
よろしければお付き合いください。
先にログミーさんの記事を貼っておきますね。


コピーライターのお株を奪う、TCC受賞芸人のクリエイティブ 吉本芸人グランジと考える、笑いと広告のコミュニケーション
TCC受賞芸人のグランジが語った、「日常のズレ」がネタに変わる瞬間
M-1グランプリの予選が、昨年優勝コンビに似たネタであふれる理由 「傾向と対策」に走りがちなクリエイティブの弊害


そもそも、遠山さんと五明さんがラジオCMに関わるようになったのは、電通の澤本さんとの出会いがきっかけ。
澤本さんは、ラジオCMの賞の審査員が、毎年同じようなメンバーでは業界が停滞してしまうと考え、新しい人材を入れたいと思っていたところ、
若い人向けのラジオをやっている遠山さんのことが頭に浮かんだそう。
「その時点では、お恥ずかしながら澤本さんのことを知らなかったんだけれど、
 この話をした方から、『お笑い界で例えるとダウンタウンの松本さんのような方だよ』と言われた」と、遠山さん。
そういう経緯で、ラジオCMの賞の審査員に加わることになった。
その賞の審査で、いろいろなCMの音源を聞いている時に、澤本さん曰く、
遠山さんが「芸人だったら誰でもできそうですけどね…」みたいなことを言ったそうで
(遠山さんは未だ「絶対そんな言い方はしてない!」と言い張っている・笑)、
それなら作ってみればいいじゃないということで、東京ガスのラジオCMのコンペに呼んでくださったそう。
面白そうだしやってみたいと思った遠山さんは、大喜利が得意な五明さんもきっとこういうの好きだろうと声をかけ、
2人で東京ガスのコンペに挑戦することになったのだそうです。
そのあたりの経緯はこちらにも書いてありました。
広告クリエイティブに新しい風を吹き込むのは誰だ? 澤本嘉光×五明拓弥×遠山大輔

このような経緯でラジオCMの業界に飛び込んだ遠山さんと五明さん。
二人とも、CMの台本を考えるときと、コントを書くときと共通することが多いとおっしゃっていました。
五明さんは、昔のボツネタをひっぱり出してきて、リメイクしたら面白くなったりすることも多いとのこと。
逆に遠山さんは、ラジオCMを作ろうと台本を書いている時に、これグランジでもできるんじゃないか?3人でやろうかな?と思うことも多いそうです。
ネタはどんなところから着想してるの?という話題では、
二人とも、「ネタを作ろう」と籠って作るときもあるけれど、そうじゃない日常の何気ないところから発想がでてくるところも多いとのこと。
特に、何かしらの違和感がヒントになっていることが多い。

グランジ『すぐ帰ろうとする』


例えば、前回の単独でやったこちらのネタは、遠山さんが、たまたま東京ラブストーリーの再放送を見ていた時に、鈴木保奈美がすぐ帰ろうとするのが面白くなってしまったと(笑)
「そんなことで帰る!?」みたいなシーンが多く(笑)、それをコントにするんだとしたらどうしよう?とやってみたそう。


話題は、二人がそれぞれ好きなCMや、印象的なCMを聞いて行くコーナーに。

五明さんの好きなCM、その1。初めて見た時に衝撃だった、何かのハプニングが起きたのかと思ったと。
村田葬儀社CM 「時代劇」篇30sec


五明さんの好きなCM、その2。FM群馬のラジオCM、無許可編。
五明「これ、思いついた人、脳汁ドバーッって出たでしょうね!」
ACC賞ラジオ部門で、エフエム群馬CMがグランプリ受賞!!
(このHPのリンクの中から音声が聞けます)


遠山さんの好きなCM。
当時は小学生で、正直CMの意味も、どんなゲームなのかもよくわからなかった、けれどみんな学校でマネしていたと。
五明さんや、セミナーの主催のプランナーさん達も盛り上がる。
五明「これ、カラオケでこの曲入れたら盛り上がるんじゃない?前奏もないし」
『前奏ないし』(笑)
CM 任天堂 ファミコンウォーズ (FC) [ Famicom Wars ]



こちらは、フジサンケイグループ広告大賞で、五明さんが作ったCMがラジオ部門最優秀賞を獲得した時の作品。
メディア部門ラジオ最優秀賞 東京ガス株式会社 サプライズ篇
そして、その時の受賞コメント。
制作者のことば


……さて。
そしてここからはちょっと変わり、芸人グランジのファンとしての目線の感想…。
久しぶりにお二人をお見掛けすることができたんですけれども、
いやあ……私、遠山大輔さんが好きだなあ……(笑)。
いや、自分でもまさか、こんな、2019年に、改めて遠山さんに惚れ直すなんて思っていなかった(笑)
今回のイベント、広告業界の方々や、バリバリ仕事ができるというような雰囲気で。
みなさん、トークセッションを聞きながら、膝の上でノートパソコンを広げて、タイピングしながらメモを取るような方々ばかりで。
正直、私がヘラヘラと来るような場所じゃなかった……と大変肩身が狭かったのですが、
それでも、そういう方々の前でトークするお二人の姿が見れて良かった。
少し戸惑いつつも、ゆったりとトークを繰り広げるお二人。
随所に参加者の皆様に問いかけたり、司会をされているプランナーの方々に話を振ったりして、
本当に全方向にさりげなく気遣いをされているところが見えました。

グランジ『THEヤクザ』


冒頭で、参加者のみなさんにまずはグランジのネタを見てもらうとなった時、この「THE ヤクザ」を見せていたんですけれども(笑)
反応を確かめるように、真剣な表情で参加者の方にチラリと視線を向ける遠山さんが最高だったなあ。
そして、終わった後、「ちょっと飛んだの見せすぎましたね(笑)でも俺は好きなんですよね」って笑うその姿もまた良かったです。
……でもやっぱりいきなりこれはダメ!(笑)
僧コンにしておけばよかったんじゃないかな!(笑)

後半は、IPPONグランプリのパロディで、参加者の方と一緒に商品のキャッチコピーを考えてみるみたいなイベントがあって、そちらもとても面白かったのですが。
シンキングタイムの間に遠山さんがナチュラルにトークで場をつないだり、参加者の方々に話を振ってたりして、本当にかっこよかったんですよ。
観客(IPPONに参加しない見ている人達)に「みなさんも考えてますか?難しいですよね」って言ったりとか、
主催の方達に「みなさんだったら、普段キャッチコピーってどうやって考えてるんですか?」って話を振ったり。
このイベントの主催のプランナーさん達よりも、当然遠山さんの方が、こういうシチュエーションに慣れてるから、
頼まれているわけじゃないのに、自然と話を回して、場をつないでいたんです。
そうやってガンガン場を回した最後に、ハッと気付いたのか、
「すみませんね、(主催の方がいるのに)僕がうるさくて(笑)」という感じで笑っていて。
その笑顔が、あまりにもその……私の癖に来て(笑)。
萌えが堪えきれなくて、思わず自分が座っていた場所の床を片足でガンっと蹴り上げてしまいました(笑)
そうしないと萌えが発散できなかった(笑)
私…基本的に、芸人さんがアウェイの場で頑張っている姿が、性癖なんでしょうね……グッとくるのです………。
長々と何の話をしているのでしょうか(笑)



遠山さんと五明さんがラジオCMに関わられていることは知っていましたが、その経緯や思いをじっくり直接聞けたのは今回が初めてで。
本当に興味深かったです。
そしてその後に、このインタビュー読んだら感謝しかなくて。

芸人で初めてのTCC新人賞を受賞で話題、グランジ・五明インタビュー
 『CMの現場に芸人を連れていくと、結構喜んでもらえるんですよね。
 吉本にはたくさんいるんですよ、テクニックは持ってるけど仕事に困ってるヤツらが。
 信頼できる人に仕事を回すこともできますし、僕もクオリティーを上げたいですし、
 芸人仲間みんなが少し潤ってもらえればいいですね』
芸人に軸足を置きつつも、様々な挑戦をされて、そして仲間の可能性も広げようとしてくれているお二人のことを、
これからも陰ながら応援させていただきます。