***
『SHIZZLE IN JAPAN FES.2017 〜1日目〜』
17/2/3 19:30~ @ルミネtheよしもと
・漫才1
・遭難
・歩道橋女
・ティッシュ
・漫才2
・プール親子
・夫婦
(ネタタイトルはルミネ公式Twitterより)
***
しずるワンマンライブに行ってきました。
「フェス」と言っているけれども、その内実は全編村上純作・演出の濃厚なネタの嵐。
一つひとつのネタに没入して、その世界観に浸って、でも帰路について現実に引き戻される感じ、
それこそがフェスの帰りのようだった。
お笑いコンビのネタ作りには大きく2パターンある。コンビのどちらか一方がネタを書くものと、コンビの二人が一緒にネタを考えるもの。
けれどしずるは、村上さんも池田さんも一人で書き、ほぼ完成させた状態で相手に渡すという、あまりないスタイル。
そして、そんな二人だからこそできることがある。
今回の単独に向けたこの記事を読んで衝撃を受けた。
しずる村上「気合入れてスケジュール空けて、気合入れて来てください!」しずるワンマンライブへの思いを語る
>村上:僕ら2人ともネタを作るんですけど、他のコンビではあまりないですね。
たとえば、後輩の仲のいいフルーツポンチは村上が全部書いてるんですけど、フルーツポンチが1年に1回単独ライブやるのと、
僕らが1年に2回単独ライブやるのは計算上では一緒なんです。
池田:だから、全然かっこいい理由とかでもなく…。
村上:元々サボってたっていう(笑)。
池田:物理的にできるっていう。
村上:みんなが年に1回やってるのに合わせてたけど、実際はサボってたんです(笑)。
この発想が本当に衝撃だった。
2人ともネタを書けるなら、1年間に2回単独できるじゃん、やってしまえって。
もちろん、実際は実現するまでに色々大変なこともあるんだろうけど、出発点の、単独をやろうというモチベーションはすごくシンプル。
そして当たり前のことを言うようなテンションで、すごいことを言う。すごくかっこいい。
しずるの2人が作るネタは、どちらが書いたネタか、見ているだけのこちらにもほぼわかってしまうくらいテイストが違う。
けれど、お互いがお互いのやりたいことを受け入れて、認め合って、面白いと思って形にする。
なんか、コンビでありながら、ユニットのようだと思ったんです。独立した個人のぶつかり合いというか。
「村上純」と「池田一真」がそれぞれで、独立した一つのブランドのように、しっかりとしたカラーを持っているように思うんです。
けれど、やっぱり、独立じゃなくて、ユニットじゃなくて、コンビなんですよね。
私が、強烈に印象に残っているシーンがあって。
最後のコントで、2人が夫婦役で横並びで座っているんですけど、そこに寝ていたはずの娘が起きてきて、
そして、2人が娘に気付いて振り返るっていうシーン。
その場面、きっかけの影ナレも、何にもないんです。
それなのに、村上さんと池田さんが、ふと後ろを振り返るタイミングが、全く一緒だった。
客席には聞こえないけれど、2人の頭の中には音が鳴ってる。娘の声が聞こえてるんだって思ったんですよね。
……震えました。あぁ、コンビだ。どうしようもなく、コンビなんだって。
もちろん、こういうタイミングもきっちり練習して揃えているんでしょうけど、
それでも揃うのがすごいことだと思うし、
それより何より、「こういうところを揃えよう」っていう共通認識があるのがすごいことですよね。
だからこそ、コンビだなぁと思います。
しずるを見てると「運命」という言葉を使いたくなってしまいます。お互いが書くネタには、お互いがいないと成り立たない。
それを見ているだけでも感じられる。夫婦や恋人じゃなくても、運命の相手って、この世に存在するんだなぁって。
漫才の中で、池田さんに「すぐ運命とか言うのやめたほうがいいよ」という感じのことを指摘されていた村上さんですが、
きっと、池田さんに出会えたことが何よりの運命なんだろうなって、思います。
(そして、池田さんにそういうセリフを言わせているのが村上さん本人という構造もまた面白い)
そして痺れたのが、「見る側」に少々レベルの高さを要求しているネタもあったっていうところです。
コント1本目に、メタの極みみたいなネタを持ってきていて、もうその攻め具合に少々恐ろしさすら感じました。
このネタすごかったなぁ。よくありそうなコントの導入から、村上さんの肝となるフレーズが出てきた時の、
「やられたー!」「そういうことかー!」感(笑)
ちょっと、ライスの「想像の世界」のコントにも通じる面白さがあったなぁ。
さらにそれが、ただのメタというわけではなく、それこそ「枠」のコントのようにちょっと屁理屈っぽいからより一層ややこしい。
けれど、過剰な説明をすることはない。レベルを下げることはない。
まるで「これくらいだったらわかるだろ、ついて来いよ」と言われているかのようだった。
その、突き放しつつも、観客を本当に置いていくことはせず、着いて来てくれると信じてくれている感じが、本当に心地よかったなぁ。
2015年からのキングオブコントは、シンプルでわかりやすい仕組みのネタが求められる場になってしまった。
それはそれで仕方ないことなので、悪くは言えないけれど、でもやっぱり寂しい気持ちも少しあって。
それまでのKOCのように、「こんなコント見たことない!」「こんなアイデア衝撃!!」みたいなのが評価されづらいのが残念で。
見ているだけの私でもそう思ったんだから、中でやっている2人だって、当然そんなことを思っていないわけがないと思う。
だからといって、今のKOCの形式に全てを注ぐわけではなくて、
コントの文化を守り、高めることをやってくれているのが本当に嬉しいし、わくわくする。
これからも、見たことないコントでワクワクさせてほしい。
同じコントと言っても、KOCで求められる能力と、単独ライブで求められるものはまた違うからなあ。
「お笑いファンが決める単独ライブアワード」みたいなのあればいいのにね。
ネタ全体を貫く、村上純ワールドの濃さ。
振り切れたメタ、暴走する偏見、過剰なデフォルメ(笑)。
時々、いろいろひどいよと思いつつ、最後のコントを見終わった後にはなぜか、
「人生って…美しいのかもしれない……」などと思わされてしまい、私もワールドに染められていました。
徹底的に噛み合わない歩道橋女と声をかけられた男。
人に共感してもらうことを求めて鋭利な角度で語り続けるティッシュ配り。
すれ違っているようで強くつながっているプールの親子。
徹底的に思いをぶつけ合い、怒って泣いて、それでも愛を深め合う深夜の夫婦。
人生はとっても複雑で、滑稽で、悩ましくて。
それでも人は人を愛さずにはいられない。
それでもきっと、人生は美しい。
普段メインで追いかけているわけではない、傍から見ているだけの私が、本当に幸せな気持ちにさせてもらったんだから、
ど真ん中で追いかけているファンの方々の幸せたるやいかばかりか。
キングオブコントで悔しそうにしている本人達を見て、何もできなくて、変わらず応援していくことしかできなくて、
でも、何もできなくても、「この人達についていけば幸せな景色を見せてくれる」って、そう思えるって、幸せなことですね。
芸人とファンの関係性というのは、複雑で、悩ましくて、
それでもきっと、美しい。
チャットモンチー 『majority blues』(Short Ver.)
『SHIZZLE IN JAPAN FES.2017 〜1日目〜』
17/2/3 19:30~ @ルミネtheよしもと
・漫才1
・遭難
・歩道橋女
・ティッシュ
・漫才2
・プール親子
・夫婦
(ネタタイトルはルミネ公式Twitterより)
***
しずるワンマンライブに行ってきました。
「フェス」と言っているけれども、その内実は全編村上純作・演出の濃厚なネタの嵐。
一つひとつのネタに没入して、その世界観に浸って、でも帰路について現実に引き戻される感じ、
それこそがフェスの帰りのようだった。
お笑いコンビのネタ作りには大きく2パターンある。コンビのどちらか一方がネタを書くものと、コンビの二人が一緒にネタを考えるもの。
けれどしずるは、村上さんも池田さんも一人で書き、ほぼ完成させた状態で相手に渡すという、あまりないスタイル。
そして、そんな二人だからこそできることがある。
今回の単独に向けたこの記事を読んで衝撃を受けた。
しずる村上「気合入れてスケジュール空けて、気合入れて来てください!」しずるワンマンライブへの思いを語る
>村上:僕ら2人ともネタを作るんですけど、他のコンビではあまりないですね。
たとえば、後輩の仲のいいフルーツポンチは村上が全部書いてるんですけど、フルーツポンチが1年に1回単独ライブやるのと、
僕らが1年に2回単独ライブやるのは計算上では一緒なんです。
池田:だから、全然かっこいい理由とかでもなく…。
村上:元々サボってたっていう(笑)。
池田:物理的にできるっていう。
村上:みんなが年に1回やってるのに合わせてたけど、実際はサボってたんです(笑)。
この発想が本当に衝撃だった。
2人ともネタを書けるなら、1年間に2回単独できるじゃん、やってしまえって。
もちろん、実際は実現するまでに色々大変なこともあるんだろうけど、出発点の、単独をやろうというモチベーションはすごくシンプル。
そして当たり前のことを言うようなテンションで、すごいことを言う。すごくかっこいい。
しずるの2人が作るネタは、どちらが書いたネタか、見ているだけのこちらにもほぼわかってしまうくらいテイストが違う。
けれど、お互いがお互いのやりたいことを受け入れて、認め合って、面白いと思って形にする。
なんか、コンビでありながら、ユニットのようだと思ったんです。独立した個人のぶつかり合いというか。
「村上純」と「池田一真」がそれぞれで、独立した一つのブランドのように、しっかりとしたカラーを持っているように思うんです。
けれど、やっぱり、独立じゃなくて、ユニットじゃなくて、コンビなんですよね。
私が、強烈に印象に残っているシーンがあって。
最後のコントで、2人が夫婦役で横並びで座っているんですけど、そこに寝ていたはずの娘が起きてきて、
そして、2人が娘に気付いて振り返るっていうシーン。
その場面、きっかけの影ナレも、何にもないんです。
それなのに、村上さんと池田さんが、ふと後ろを振り返るタイミングが、全く一緒だった。
客席には聞こえないけれど、2人の頭の中には音が鳴ってる。娘の声が聞こえてるんだって思ったんですよね。
……震えました。あぁ、コンビだ。どうしようもなく、コンビなんだって。
もちろん、こういうタイミングもきっちり練習して揃えているんでしょうけど、
それでも揃うのがすごいことだと思うし、
それより何より、「こういうところを揃えよう」っていう共通認識があるのがすごいことですよね。
だからこそ、コンビだなぁと思います。
しずるを見てると「運命」という言葉を使いたくなってしまいます。お互いが書くネタには、お互いがいないと成り立たない。
それを見ているだけでも感じられる。夫婦や恋人じゃなくても、運命の相手って、この世に存在するんだなぁって。
漫才の中で、池田さんに「すぐ運命とか言うのやめたほうがいいよ」という感じのことを指摘されていた村上さんですが、
きっと、池田さんに出会えたことが何よりの運命なんだろうなって、思います。
(そして、池田さんにそういうセリフを言わせているのが村上さん本人という構造もまた面白い)
そして痺れたのが、「見る側」に少々レベルの高さを要求しているネタもあったっていうところです。
コント1本目に、メタの極みみたいなネタを持ってきていて、もうその攻め具合に少々恐ろしさすら感じました。
このネタすごかったなぁ。よくありそうなコントの導入から、村上さんの肝となるフレーズが出てきた時の、
「やられたー!」「そういうことかー!」感(笑)
ちょっと、ライスの「想像の世界」のコントにも通じる面白さがあったなぁ。
さらにそれが、ただのメタというわけではなく、それこそ「枠」のコントのようにちょっと屁理屈っぽいからより一層ややこしい。
けれど、過剰な説明をすることはない。レベルを下げることはない。
まるで「これくらいだったらわかるだろ、ついて来いよ」と言われているかのようだった。
その、突き放しつつも、観客を本当に置いていくことはせず、着いて来てくれると信じてくれている感じが、本当に心地よかったなぁ。
2015年からのキングオブコントは、シンプルでわかりやすい仕組みのネタが求められる場になってしまった。
それはそれで仕方ないことなので、悪くは言えないけれど、でもやっぱり寂しい気持ちも少しあって。
それまでのKOCのように、「こんなコント見たことない!」「こんなアイデア衝撃!!」みたいなのが評価されづらいのが残念で。
見ているだけの私でもそう思ったんだから、中でやっている2人だって、当然そんなことを思っていないわけがないと思う。
だからといって、今のKOCの形式に全てを注ぐわけではなくて、
コントの文化を守り、高めることをやってくれているのが本当に嬉しいし、わくわくする。
これからも、見たことないコントでワクワクさせてほしい。
同じコントと言っても、KOCで求められる能力と、単独ライブで求められるものはまた違うからなあ。
「お笑いファンが決める単独ライブアワード」みたいなのあればいいのにね。
ネタ全体を貫く、村上純ワールドの濃さ。
振り切れたメタ、暴走する偏見、過剰なデフォルメ(笑)。
時々、いろいろひどいよと思いつつ、最後のコントを見終わった後にはなぜか、
「人生って…美しいのかもしれない……」などと思わされてしまい、私もワールドに染められていました。
徹底的に噛み合わない歩道橋女と声をかけられた男。
人に共感してもらうことを求めて鋭利な角度で語り続けるティッシュ配り。
すれ違っているようで強くつながっているプールの親子。
徹底的に思いをぶつけ合い、怒って泣いて、それでも愛を深め合う深夜の夫婦。
人生はとっても複雑で、滑稽で、悩ましくて。
それでも人は人を愛さずにはいられない。
それでもきっと、人生は美しい。
普段メインで追いかけているわけではない、傍から見ているだけの私が、本当に幸せな気持ちにさせてもらったんだから、
ど真ん中で追いかけているファンの方々の幸せたるやいかばかりか。
キングオブコントで悔しそうにしている本人達を見て、何もできなくて、変わらず応援していくことしかできなくて、
でも、何もできなくても、「この人達についていけば幸せな景色を見せてくれる」って、そう思えるって、幸せなことですね。
芸人とファンの関係性というのは、複雑で、悩ましくて、
それでもきっと、美しい。
チャットモンチー 『majority blues』(Short Ver.)