軒内はとても重要です。
ここ数年、夏になると緑のカーテンやオーニングで
日除け対策しないといけなくなったのは、軒のない住宅が増えたからです。
軒がないので軒内の大切さや意味合いを考える機会が減りました。
私の勝手な希望的予測ですが、おそらく数十年後には昔からの建築方法が見直され、
また軒のある建築に変わっていくと信じています。
敷地や駐車場の問題を解決して、新しい建築が生み出されるのを楽しみにしたいと思います。
そんな考えの私自身、親方の影響がなければ軒内についてここまで考えることもなかったと思います。
軒内の構成、沓脱石や二番石、三番石、袖垣、雨落ちなどについて考えている時間は
とても楽しく、日本人で良かったと心底思います。
特に数寄屋住宅の軒内はゆったりとして上品さが漂う空間です。
軒の張り出しが大きいほど太陽の直射も遮れるし、垂木や板金の細工も美しいです。
夏が過酷な日本で考え出された美と用を兼ねる素晴らしい建築技術ですね。
軒内は、「住まう人と訪れる人」、「建物と庭」を繋ぐ、結びの空間と考えています。
沓脱石や犬走りの素材や仕上げ方で、意味合いも雰囲気も大きく変わってしまいます。
今回頭を悩ませたことの一つは軒内の仕上げ方でした。
犬走りの広さは軒内の広さで決まるのですが、犬走りがゆったりと取れるのに比べ、
既存の玄関ポーチは軒先からかなり控えて施工されていたのです。
つまり軒に合わせると、玄関ポーチより犬走りが飛び出してしまう状態でした。
問題の解決にあたって、何通りか案を巡らせた結果、
それぞれを別々に区切らず犬走りと一体化させ、スッキリまとめることにしました。
施主様御夫妻のお人柄から、お客様をかしこまらせることなく、
優しくさりげなく迎える雰囲気にするべきだという親方の考えでした。
当初砂利を使った洗い出しの予定でしたが、既存の玄関ポーチに使用されている
備前焼タイルとの馴染みが悪かったため、どちらも土の温かさが生きるよう、三和土に変更しました。
・・・といっても面積が広く、踏まれる頻度も高いため、三和土では強度的に難しい…。
おそらく割れや削れができるので、修復等のメンテナンスも必要になります。
そこで、見た目は三和土のやわらかさですが、強度はとても強い新材料を使うことにしました。
いつもは数種類の材料を配合しますが、今回は水の加減だけで良いので調合が簡単です。
このくらいの練りが伸びやすい。
時間との闘い。
サンプルを見て、メーカーから取り寄せた化粧砂利を見た親方は、
「こりゃ〜インドネシアな雰囲気じゃな。」
「ようわからんけど、ふぇいじょあって感じじゃな。」
・・・と言い放ちあっさり却下。
地元岡山高梁川産の備中砂利を使うことになりました。
施主様にも化粧砂利を入れてもらいました。
せっかく綺麗に入れて頂いたのに、タイミングが早すぎてほとんど出なかった
申し訳ないです
抑えの後に表面に遅延剤を散布し、4~5時間後にかき落とします。
練り始めてから30分で急激に硬化し始める材料なので、抑えのタイミングが一瞬で過ぎ去ります。
親方が左官で失敗することは珍しいのですが、タイミングがずれて強度がなくなってしまったので一部やり直しました。
はつって壊し、型枠を作り直し、下地を補修して材料をもう一度取り寄せ、
いざ!っ・・・ていうときに私がぎっくり腰になりました
ヒ~~~~!!
またまた大ピンチかと思いましたが、雨を避けて日曜日の施工になったおかげで
施主様が親方を手伝って下さり、見事完成しました!!
O先生、本当にありがとうございました!!!
植栽が終わったら雨落ちに取りかかります