ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

世界観という枕詞

2006年03月30日 | アフター・アワーズ
 世界観について一言いっておきたい。

 最近若い芸能人などが、「この作品の世界観がすき」とか「この歌の世界観に共感した」などと、世界観という言葉をよく使う。もちろんここでいう世界観とは、哲学でいうweltanschauungではない。唯物論的世界観とか神学的世界観というような、世界の統一的なとらえ方、根源的な原理といった意味ではなく、もともとはゲームの舞台設定とか作品世界のコンセプトといった意味で使われていたのが、そのまま業界に広がったのではないかと思う。大塚英志の「キャラクター小説の作り方」でもよく使われていた。

 最新ファッションの前で「この世界観がいいよね」なんて言っている姉ちゃんたち。どーもしっくりこない。およそ世界観という言葉が、これまでの人生の辞書の中に存在しなかった人たちがクールな流行り言葉の一つとして使っているのだろうが、こうなると言葉は独り歩きを始め、ゲーム業界で使っていた舞台設定とかコンセプトからも離れて、もはや自分の好みやお気に入りを語るときの「枕詞」のようになっていく。ラーメン食べても「この世界観がうまいよね」とか、無意味にしてなんでも使えるといえば使える実に便利な言葉になっていくのだった。

 これは「世界観」にとって幸せなことなのだろうか。もはや読まれなくなった哲学書、思想書の中でドラキュラのように復活を待つ「世界観」がいいのか、本来の姿ではないが、こうして若い姉ちゃんにも芸能人にも愛される無意味な「世界観」がいいのか。棺の中で静かにしていたのに無理やり引っ張り出された「世界観」は、芸能人や姉ちゃんたちの可愛らしい口で語られれば語られるほど、いずれボロボロになって捨てられることになるだろうし、「世界観」もそのことはよく知っているはずだ。とりあえず、ラーメンを食べても、くれぐれも「このラーメン、世界観がいいよね」とはいわないようにしよう。
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