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ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

CG最新、セット70年代並の実写版「ヤマト」。エコへの殉死讃歌、いまどき身捨つるほどの地球などありや。

2010年12月07日 | 映画
 実写版「ヤマト」を観る。スペースオペラと銘打たれたかつてのSFアニメが、山崎貴の監督による実写でどのように再現されるのか、そんな興味から劇場に足を運んだ。アニメ「ヤマト」はほとんど観たことがないので、ストーリーも知らない。松本零士が絵を描いていたとかテーマソングくらいは知っている。その程度だ。

 「ALWAYS」で評価された白組のCG技術は、確かに高い技術力を見せているようだ。宇宙空間でのバトルシーンは、もはや「スターウォーズ」でおなじみとはいえ、それなりにスピード感はある。だが、船内のセット、衣装などは、なんとも1970年代的で、TVのウルトラマンを思わせるレトロぶりなのだ。2199年(いまから200年も先の時代だぞ)のデザインやインテリアではないだろうよ。2199年という時代に対する世界観とか創造力が圧倒的に欠け過ぎていないか、この映画は。エロチシズムも感じられない。黒木メイサのボディスーツはもっとボディコンシャスでなければならぬ。

 脚本も悪い。大義のための死が、犠牲的精神として賞揚される、この映画全体を貫く思想はあまりにアナクロで反動的、安易なメロドラマというしかない。ヤマトを守るため仲間を自らの手で犠牲にしなければならなかった黒木メイサとキムタクは、葛藤しながらも、ここでも大義のために正しかったと結論付け、さらにはお互いを慰めあうように抱擁し、二人のまぐわいを連想させてそのシーンは終わる。二人がここでまぐわったことは、メイサをママと呼ぶ子がラストに登場することで想像されるのだが、このまぐわいはあまりにノーテンキ過ぎるだろう。大義のためとはいえ見方を殺したあとだぞ。

 ことほど左様に、この映画はご都合主義に満ち溢れているのだが、テーマは、美しい地球と人類を守ること。「生きて還る」がスローガンになっているが、この大義のために死を賭して若者たちがドンドコ死んでいく。挙句にヤマトは特攻する始末。エコ・ファシズムと殉死の讃歌だ。大義への忠誠と殉死。これこそ、ファシズムとスターリニズムだ。製作のTBSはジャーナリズムの一翼を担う機関として、何故にこのような反動的な物語を、いま社会に発信する必要があったのか。「1945年戦艦大和が死を覚悟で国民を守るために出航したようにわれわれも地球を守るために云々」といったセリフがあったけれど、この戦艦一隻のためにどれほど国費と人命が浪費されたことか。こんなセリフは不要だろう。監督の山崎貴は才能のある人だと思う。もっと別の企画で発揮してほしいと切に願う。

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2 コメント

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TBSは (匿名希望S)
2010-12-07 13:43:44
TBSは右翼化していると言われてますからね…。
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Unknown (まんふら)
2010-12-08 11:37:20
開局60周年記念なのだそうですよ。
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