日々感ずることを、徒然に書いています。ご笑覧あれかし。

言葉というもの、非常に興味があります。

ある教訓

2021-10-06 00:50:44 | 日記

あの時ばかりは、本当に驚いた。挙句、怒鳴ってしまった。私、普段はそんなことをしない男である。

しかし、その後、冷静に考えてみて、それは、自分自身の所為ではないであろうかという結論に達し、それからは、何も言わないことにした。

マイクさんは、北アイルランド人。ちょっと変った人ではあるが、私とは妙にウマが合い、話していると楽しい。私のところには、週に一回来られる。

そのマイクさんが来られるという日の前日、庭師を呼んだ。庭の雑草をきれいに掃除してもらうためである。

私の家の玄関にたどり着くには、表通りから、コンクリートの階段を登らねばならない。ただ、その12階段があまりにも汚いので、ついでに、それも掃除してもらうことにした。結構な手数料を取られたが、お陰で、随分ときれいになった。気持ちがいいとは、このことである。

「ピンポーン」。マイクさんの到着を知らせるベルが鳴った。

喜び勇んで、ドアを開けた。開口一番、「マイクさん、何か気づいたことない?」

マイクさん、そう言われて、今登ってきた階段をじっと見つめておられた。しかし、「別に、何も??」

私、これには驚いた。まさか、こんな答えが返ってくるとは思いもしなかった。

不服顔で、今度は、庭に連れて行った。「先週と比べて、何か変ったことは?」

じっと、庭を見つめておられたマイクさん、この時の答えもまた同じであった。「別に、、?」

これには、本当に驚いた。思わず、返事の口調を荒げてしまった。私らしくもない、。「庭が綺麗になったのが、分からぬのか!!」

しかし、しかし、である。

一晩寝て、その翌朝、結論らしきものが出てきた。そして、それからというもの、マイクさんには何も言わないことにした。

私なりの解釈でいうと、結論とは、こういうことである。

それは、私が、かつて、絵描きであったことと大いに関係がある。

したがって、私にはあらゆるものを、どちらかというと、「視覚的に覚える」という習性がついている。人の顔でも、すぐに表情まで覚えてしまう。
よく観察している、というのか。しかし、世間的に言えば、嫌な習性かもしれない。

そこへ行くと、マイクさんあたり、視覚的には、ほとんど何も覚えておられないということになるのでは、なかろうか? 
しかし、それの方が、どちらかというと一般的で、私の方が異常なのかもしれない。

それが、私の到達した結論である。

教訓が一つ。

他の人のことを、自分の尺度だけで、推し量ってはいけません。