英国の「国勢調査」は10年に1回。今年がその年であるそうな。
私、英国籍は持っていないが、もう50年近く英国に住んでいて、「永住権」もあるので、他の英国人と同様の扱いを受ける(ただ、選挙権だけは持っていない)。
その一つが、「国勢調査」履行の義務。しかし、以前にこんなことした覚えがない。
「調査をしますので、ご協力ください」という通知の来たのが2ヶ月ほど前。
早速、その依頼に応じた。ただし、オンラインでやれという。何とも便利な世の中になったものである。
いろんな質問項目がある。大抵は通り一遍のもので、答えるのに、大して疑問も苦労も感じなかった。何しろ、自分所有の家に一人で住んでいるというのであるから、簡単である。
でも、一つだけ。
”あなたの「性向」は何ですか?” (人からどう思われているかということではなく、自分がどう思うか)
1、ストレート(異性愛者)
2、ゲイ
3、レズビアン
4、バイセクシュアル
5、性同一性障害
6、トランスジェンダー(性転換者)
7、分らない
8、ノーコメント(言いたくない)
9、その他 (具体的に言ってください)
日本の皆さん、これを見てどう思われるであろうか。
こんな項目が、日本国勢調査の質問項目の一つであるとは、どう転んでも、私には、考えられない。
(日本人の多くの人は、「そんなのプライバシーの侵害よ」と言われるかもしれない。しかし、そんなことを言えば、国勢調査項目の、すべてのことは、大なり小なり、そうではないのか)
もし、こういう質問があるとすれば、まず、多くの日本人は、それに答えずに、「何これ?」とばかり、やり過ごされるのではないであろうか。
英国で、こういうことが、公に取り上げられるのは、別に驚くべきことではない。
この国では、それほどの永きに亘って、人の「性向」などというもの、広く、また深く論じられて来たのである。勿論、それは、比較的近年のことであって、一昔前までは、とても考えられなかった。
論じ尽くされ、熟成している。
そして、その延長上に「同性婚」があり、「性転換」があるのである。
一寸偉そうな口を利いてみる。
「人間の性向とは何か」というのは、人間存在にとり、極めて基本的にして重要なことであると、私は思う。
それを、日本では、正面切って考えずして、また教えられずして、突然、「同性結婚を認めよ」とかいう人があるから、多くの人たちは戸惑われるのである。なんのことかよくわからない。
勿論、私、日本には日本のやり方というものがあることは、十分弁えている。だから、まずこういうことは、永遠に起らないかもしれない。日本とは、そういう国なのである。
それでも、私、日本が好きで、毎年帰っている。昨年は帰れなかったから、もう2年くらい日本を見ていない。今年中に帰れるのであろうか。
因みに。
「性向」が、英国勢調査の質問事項になったのは、これが初めてなのだそうである。
こういう質問があるということの根拠というのがある。
性的少数派の実態(比率とか)を把握することによって、公の場所(学校とか医療機関とか)で、それらの人が、不当な扱いを受けることにならないようにするため。
なあるほど。立派だと思う。