156第14話核分裂と核融合
ミーターの大冒険
第六部
地球へ
第14話
核分裂と核融合
あらすじ
ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はメルポメニアからアルファに着く。
ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。
その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。
ニフの起源と核戦争の事実であった。
イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。
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イルミナ その核戦争で終わった世界大戦のことを歴史家は、『第二次世界大戦』と呼んだわ。
ミーター それじゃ『第一次世界大戦』もあったことになる。
イルミナ そうなんじゃないですか。
ミーター それじゃ『世界大戦』は、何次まで起き続けたんだ。
イルミナ それ以上は、詳しくは書いてないですね。この本の主題は、とくにアルファですからね。うがって読めば、第三次世界大戦が起こりそうになって、その「寸前の~危機」という言葉が目白押しだわ。
でも、ミーターさん、推測すると、それが実際に地球に起こったら、人類は核爆弾を用いて、放射能が地球に蔓延して人類は住めなくなっちゃうんじゃないでしょうか。
ミーター それで、大戦抑止のために、また地球の敵対国同士は、何万発の原子爆弾を保有していくのだからなあ!矛盾だよなぁ!
それで、先見性のある極く少数の裕福な連中がスペーサーとなって宇宙に飛び出して行った。
イルミナ まあ、それは恐怖だわ。破滅寸前の地球時代の到来ですね。それじゃ地球は安心して住める惑星じゃなくなったも同然だわ!
ミーター ハッキリ言って、悲惨だ!
イルミナ 続けるわね。
そのあたりになると、地球人類の主要課題は人口問題とエネルギー問題が、起こります。都市化問題と言ってもいいですね。
当時、エネルギー資源は、化石燃料の石炭から石油。そして核分裂を使った原子力発電に移行して行きました。
核戦争はしばらく起きなかったんですが、原子力発電所の爆発が何度か起きたわ。
ニフにも起きたんです。
ミーター「フクシマ」だな。
イルミナ それで、ニフ人たちは、過去に起きた、二度の悲惨な経験から、別なエネルギー源を実用化させたんです。
それが「核融合」エネルギーですね。
もっとも最初に実用化させたのはフランスという国だったんですが。ニフはそのあとを追うように実用化させ、地球の各国をリードして行ったのです。
ミーター それって当然と言えば当然だ。
イルミナ そうね、世界人類で唯一の被爆国だったんですから。
ミーター イルミナ、悪いが、「核融合」の意味を簡潔に言うと?
そうですね、太陽のような恒星の内部で起きている現象で、放射能を発生しないクリーンなエネルギー。
「トカマク」というドーナツ型の核融合炉のなかで、ジュウテリウム(重水素)とトリチウム(三重水素)の2種類の水素を融合させると、太陽の表面よりも高温のプラズマが発生します。
ところがこの「無限の電力源」に必要な水素の放射性同位元素であるトリチウムは極めて希少なんです。
その問題をニフ人たちはクリアしたんですね。
ミーター なんという科学力なんだ。
なんで、彼らはそんなに科学力があるんだろうね?
イルミナ 民族と言えば、もう一つの、これも、特殊な民族がいたわ。
ミーター へ~。なんて言うんだ、その民族とやらわ?
イルミナ 一般に、放浪の民ユダヤ人。またはイスラエル人と呼ばれています。ユダヤ人たちは、とても優秀で、当時あったノーベル賞を数多く獲得しました。
ミーター ニフ人とそのユダヤ人って言うのは、どういう関係だろうか?
イルミナ ちょっと、お時間下さいね!込み入ったデータを調べてみますので。
分かりました、ボス。ニフ人とユダヤ人の先祖たちは遺伝子学上、共通性があります。どちらも「ヤップ遺伝子」を保有しています。
先ほどご説明した「出アフリカ』の時に、地球の各地にホモ・サピエンスが拡散して行く際に、ちょっとだけの遺伝子変異が起こったと考えられます。その遺伝子変異は、おもに環境の変化とホモ・サピエンスの先住人類の融合による度合いと考えられます。
そしてニフ人とユダヤ人の先祖は、同じグループから分離した、と推測されます。
ミーター へ~、共通の遺伝子ねえ!
ところで、だいぶ脱線したな、イルミナ。
イルミナ そうですね、「二種類のニフ人』のことでした。