196第14話ダリバウの廃坑
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第14話
ダリバウの廃坑
あらすじ
ファウンデーション暦493年、ミーター、イルミナ(?)、ペイリーはターミナスに着いた。ジスカルド・ハニスとは地球への音信以来連絡が途絶え、ターミナス全土を探したが、見つけられなかった。
アルカディア農園は無事だった。ハニスとコンパーが上手に政府の力から手練手管で守っていたからである。
代理人としてジム・ヘンダーという50代の男が農園を維持していた。
ミーターは、ジムの履歴正体をつまびらかにする。
後日、二人はターミナスのアルカディア記念博物館に隣接しているサルヴァー・ハーディン博物館にムン・リー・コンパーを変装して訪ねた。ヘルダーを通して申し合わせしていたからである。
3人(?)は、コンパーからハニスの消息を聞かされる。スミルノに近いダリバウという過疎化が進む弱小惑星にいるらしい。
彼らは一旦、アルカディア邸に戻って、ダリバウの旅程をヘンダーと打ち合わせる。
ヘンダーはダリバウに行ったら、レオナルド・アンセルム・オー・ロドリックに逢うように勧める。
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ミーター あなたが、ヘンダーさんから紹介されたプルーマ星のレオナルド・アンセルム・オー・ロドリックさんですね!私は以前、ヘンダーさんが今管理されているアルカディア農園の従僕をしておりましたミーター・マロウと申します。この度、丁重にここに訪問のお許しを頂き、誠にありがたいことです。
アンセルム ヘンダーから聞いておりました。ようこそ我が別荘に。ミーターさんですね。どう見てもロボットには見えない。一ターミナスの青年に見えます。アルカディア様については我が星プルーマばかりでなく、スミルノやアナクレオンでもよく知られています。
まあ、ミーターさん、そんなに硬くならずに「きみ」程度の言葉で頼みますよ。アナクレオンの高官だったのは遥か500年前の先祖の時代でしたからねぇ。
お隣のお若いスレンダーなご婦人がペイリーさんですね。例の500年前のトランターの大宰相の今を生きるご令嬢様ですね!
ペイリー まあ、ご令嬢?
私は、そんなものではありませんよ。たかだか地球の衛星で育った田舎娘ですから。
それに、月はこんな空気も緑色も水もある環境は皆無ですから。
ミーター ロドリックさん、ところで、ここダリバウにはスミルノ、アナクレオン、ターミナス星区の金持ちや政府の高官の別荘が数多く存在しているみたいですが、それって、高官たちの政治の駆け引きや密談が密かに行われているって聞いておりますが。
私の身内のジスカルド・ハニスさんがこちらに潜伏していると聞いて、あなたのところに来させていただいたのですが。
アンセルム それはそれは、残念です。つい3日前に、イフニアに我がスペース・ワゴンでお送りしたところです。
ミーター それは残念です。
ところで、ハニスさんはここダリバウでどういうことをされましたか?
そしてその結末は?
ここダリバウは、いわばターミナス政府の意向に沿って、ターミナス政府・行政以上に重要な政治の方向性を決定を左右させる惑星だと聞いております。中には水面下で、ターミナスに批判的敵対勢力のエージェントもいるのですね。
アンセルム さようです。表だっては、ターミナスのハーラ・ブラノに恭順を装ってはいるものの、その内実は、その逆です。ほぼ大半の惑星はあの鉄面女史にこころよくは思っておりません。ターミナスがなにか政略的失敗や破壊的出来事が起これば、そこの連合から離脱したり、あわよくば、ターミナスにとって代わろうと目論でいます。
それほど今は危機的不安定な時代に成って来ました。
とくに、まだ全銀河の各勢力には、あなたがなし得た「銀河歴史消滅からの回復」という一大エポックを過ぎても、その情報と変化は伝わっていないのが現実です。
私には特別に情報察知のネットワークがありましたので、いち早く入手し得ておりますが。
ミーター ということは、当然、ブラノのターミナス政権は、その歴史復活の事実を既に手に入れているというのですね?
アンセルム 左様。そう考えて差し支えないでしょう。
ミーター そうですね。それでは彼らの情報源は何処からでしょうね?
ヘンダーさんからは、あなたは反ターミナスと聞いております。そう、安心して信頼できると。
アンセルム それについてはどうでしょう。
はっきり言えることは、あなたとペイリーさんが私をお尋ねにここに来られると、知っておりました。
ミーター なんですって!
アンセルム そうなんです。私はこれでも、ベイタ・ダレルの一ファンと自負しております。
それに、今の時代は新しい動きと旧態依然のものが渾然一体ですからね。
ミーター と申されますと?
アンセルム 二つのことが言えます。旧態依然とは、今でもミュール時代の変更者の影響も残っている、ということ。そして第2ファウンデーションのエージェントの多くはターミナスにはほぼいないが、ターミナス周辺のここには大勢潜伏しています。加えて第3のグループのエージェントもじわじわとその影響を与えはじめている、ということです。
かくいう私の祖父もミュールの犠牲者で、ミュール後に変更者から元に戻りました。そんな祖父の影響を父は側にいてその代わり具合を覚えていたそうで、私に詳しく教えてくれました。それで、この150年あまりの変化は目を見張るものがありました。
ミーター なるほど。
そして もうひとつというのは?
アンセルム そうですね、いわばスパイ!それも二重、三重のスパイ!
ペイリー えっと、どんな人たち?
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