198第16話クロミニウムとヴァナジウム
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第16話
クロミニウムとヴァナジウム
あらすじ
ファウンデーション暦493年、ミーター、イルミナ(?)、ペイリーはターミナスに着いた。ジスカルド・ハニスとは地球への音信以来連絡が途絶え、ターミナス全土を探したが、見つけられなかった。
アルカディア農園は無事だった。ハニスとコンパーが上手に政府の力から手練手管で守っていたからである。
代理人としてジム・ヘンダーという50代の男が農園を維持していた。
ミーターは、ジムの履歴正体をつまびらかにする。
後日、二人はターミナスのアルカディア記念博物館に隣接しているサルヴァー・ハーディン博物館にムン・リー・コンパーを変装して訪ねた。ヘルダーを通して申し合わせしていたからである。
3人(?)は、コンパーからハニスの消息を聞かされる。スミルノに近いダリバウという過疎化が進む弱小惑星にいるらしい。
彼らは一旦、アルカディア邸に戻って、ダリバウの旅程をヘンダーと打ち合わせる。
ヘンダーはダリバウに行ったら、レオナルド・アンセルム・オー・ロドリックに逢うように勧める。
アンセルムは彼らを歓迎した。アンセルムは密かにファウンデーション連合(ターミナスの単独政党ターミナス第一)を苦々しく思っていた。
そして第2ファウンデーション及び反ミュールとの連繋を模索していたのであった。
アンセルムは、コンパーの正体を明かす。彼はコンパーが二重、三重のスパイだという。
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ミーター アンセルムさん、ところであなたはここダリバウの廃坑の側に住んでおられるのですが、なぜ廃坑の側に?
アンセルム この廃坑は今では私の所有です。現地の政府から買い取りました。
実は、この廃坑は今でもこの銀河には珍しい二種類の鉱物が採れるのです。
ミーター その二種類の鉱物とは?
アンセルム クロミニウムとヴァナジウムです。私の入手した極秘情報では、かつて放浪のシンナックス人がここダリバウでこの二種類の鉱物を掘り出したのです。
ミーター それらの鉱物はどんなものなのでしょう?
アンセルム クロミニウムは、あなたと深い関係があります。
ミーター 私と?
アンセルム あなたは4年間、イオス星でラヴェンダーの温泉に浸かったと聞いております。
ポニェッツ仕様のラヴェンダーです。
昔、リマー・ポニェッツが過(あやま)ってブラックホールに吸い込まれる寸前に不死の従僕にあわやのところで救出されました。その時に荷のラヴェンダーが変容したのですが、そのラヴェンダーの変容に、そのクロミニウムが関係しておりました。
そのクロミニウムは本来、宇宙構成要素の物質と暗黒エネルギーと宇宙エネルギーとの関係を繋ぐ物質だというのです。
ミーター そうだったんですね!
アンセルム そしてこの宇宙の謎を解くクロミニウムはまた、銀河脱出に必要なものだったのです。
ミーター う~む、それではヴァナジウムとは?
アンセルム 不老長寿の妙薬元素です。地層深い玄武岩層に染み込んだ水に溶け込んだ元素で、これは、人間の体内の老廃物を分解させ、代謝を促進させる効果が認められています。とくに人間が長い時間、宇宙旅行をする際に効果を現します。
このヴァナジウムを効果的に放射能汚染から身を防御したアルファ人の源流となったニフ人が日常用いてたのです。
地球のニフの最高峰のフジから発見されたと聞いております。「フジ」とは不老長寿という意味もあったというのです。
ミーター たしか、ガイアのドム長老も同じことを言ってました。
なるほど、それであなたは、銀河復興の最終目標に、あの漂流のシンナックス人を追うということをお考えで、この廃坑に着目されたのですね!
アンセルム よく推理されました、ミーター殿!その通りです。ハニスも申してました。今や推理力ではミーター君は俺より優っている、とね!
ご覧なさい、ここ銀河の最終点では、天の川銀河はレンズの外れにあります。かつて偉大なる小説家は次のように表現していました。
「銀河は中天にかかり、その霞んだレンズの形が地平線から地平線まで、物憂げに伸びていた。」(The galaxy was high in the sky and its misty lens shape stretched lazily from horizon to horizon.
)
ミーター とても詩的ですね!