トルコの10リラコイン。
泥中の蓮
愚か者が贋金をつかまされるのは、それが本物によく似ているからだ。この世には、贋金ではなく本物の金貨も確かに存在している。そうでなければ、贋金作りの仕事は成り立たなくなってしまう。
人は正しいものを愛する、真実を恋い焦がれる。けれど正しいものへの愛、真実への恋慕が、一歩間違えれば、人を虚偽と悪へと導いてしまう。
砂糖に、ほんの少しだけ毒薬を混ぜ合わせてみるといい。人は争ってそれを口に詰め込んでしまうだろうから。
ああ、友よ叫ぶな、教義の虚しさに嘆くな。暴くな、戒律の空々しさを。贋金のうちにもほんの一枚、本物の金貨が混ざることもある。
ほんのひとつまみでも真実がある。そうでなければ、どうして人がこれほどまでに執着するものか。
夢の全てを虚しいと言うな。君の見る夢、世の中の見る夢の全てが、消え去る幻に過ぎない、とも言い切れないのだから。そこに真実などひとかけらもない、などと決して言い切れるものではないのだから。
修行者達の群れの中に、真の導師が隠れている。
たった一人だけ見つければよいのだ、大勢見つける必要はないのだ。よく探せ、そうすればきっと見つかるだろうから。
『精神的マスナヴィー』2-2928.
愚か者が贋金をつかまされるのは、それが本物によく似ているからだ。この世には、贋金ではなく本物の金貨も確かに存在している。そうでなければ、贋金作りの仕事は成り立たなくなってしまう。
人は正しいものを愛する、真実を恋い焦がれる。けれど正しいものへの愛、真実への恋慕が、一歩間違えれば、人を虚偽と悪へと導いてしまう。
砂糖に、ほんの少しだけ毒薬を混ぜ合わせてみるといい。人は争ってそれを口に詰め込んでしまうだろうから。
ああ、友よ叫ぶな、教義の虚しさに嘆くな。暴くな、戒律の空々しさを。贋金のうちにもほんの一枚、本物の金貨が混ざることもある。
ほんのひとつまみでも真実がある。そうでなければ、どうして人がこれほどまでに執着するものか。
夢の全てを虚しいと言うな。君の見る夢、世の中の見る夢の全てが、消え去る幻に過ぎない、とも言い切れないのだから。そこに真実などひとかけらもない、などと決して言い切れるものではないのだから。
修行者達の群れの中に、真の導師が隠れている。
たった一人だけ見つければよいのだ、大勢見つける必要はないのだ。よく探せ、そうすればきっと見つかるだろうから。
『精神的マスナヴィー』2-2928.
四人の男と仲介者
四人の男が金貨を一枚与えられた。一人めのペルシア人が言った。「この金貨で、アングールを買うとしよう」
二人めのアラブ人が言った。「いやいや、私はアイナブが欲しい。アイナブを買おう」
三人めのトルコ人が言った。「アイナブなんてやめてくれ。私はウズュムを買いたい」
四人めのギリシア人が言った。「私はスタフィルを買いたいのだが」
それぞれの呼び名の背後に何が控えているのかも知らず、四人の男は喧嘩を始めた。情報だけが先走りし、肝心の知識を得ていなかったためである。
そこへ賢い仲介者が現れ、四人を和解させた。仲介者は言った。
「あなた方四人全員の必要を満たして差し上げましょう。私を信頼して、一枚の金貨を預けて下さい。四つのものを、一つにして差し上げましょう」
賢い仲介者は、それぞれの呼び名の背後に控えているものについて知っていた。一枚の金貨で葡萄を買い、四人に与えた。それで初めて、四人は自分達が欲していたものが全く同一であったことを知った。
ルーミー「四人の男と金貨と葡萄」より『精神的マスナヴィー』2巻