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2022年6・7月の課題本『黒いハンカチ』

2022-11-30 17:22:44 | ・例会レポ

『黒いハンカチ』小沼丹

 

講師を含めて10人参加の7月例会。先月から持ち越しの課題本は完読率100%でしたが、あっさり読めたという人もいれば、意外に読み進まなかったという人も。
その理由としては、英文学者の著者ゆえにカタカナ表記のこだわりが一々引っかかる、あるいは時代のせいか読めない漢字が多々ある、などが挙げられました。

肝心の内容については、気楽に読める作品ではあるものの、現代のミステリとは指向性が全く異なり、事件の動機や犯人の背後にあるものが見えない、最後にどんでん返しがあるかと思いきや、そのまま終わってしまう、などと少々物足りなさを覚えた人が多かったようです。しかしこれは婦人誌に連載された小説として、軽く読めるように書かれたものかもという声もあり。作風としては、北村薫との共通性を挙げる人もいました。

また、当時の女子の大学進学率は1割ちょっとに過ぎず、主人公のニシ・アズマが高学歴の女性教師で高台の女子校(フェリス? 山手っぽい)に勤めていることや、別荘が舞台になるなどハイソな階級の設定であることも話題に。

ちょっと検索したところ、掲載雑誌の『新婦人』は池坊華道のPR誌だったようですが、アートやファッションも含め幅広いジャンルで澁澤龍彦やオノヨーコ、寺山修司といった多彩な文化人を取り上げた、当時としては最先端の総合情報誌であったとのことです。そこが「新」婦人なのでしょうが、それを踏まえると、専業主婦が大半の時代に、高学歴の職業婦人を探偵役にするという設定もうなずけます。

◆講師評
文学には「高踏派」と呼ばれる小説のジャンルがある。私小説作家のように生活苦や現実に即したものを描くのではなく、いわば「お遊び」として書くもので、戯れ文(ざれぶん)ともいう。この時代のミステリは、その一つとして描かれたものが多い。

小沼丹は芥川賞を4回逃した作家だが、当時の芥川賞の権威は絶対的で、獲っていればメジャーになれるが、そうでなければ文壇では相手にされない。そこで余技のような小説を書くことになるが、結果として名作全集には載らない小説家となる。文芸文庫は彼のような作家の作品を個人全集として出しており、それは出版社の使命の一つであると思う。現代作家では北村薫が、推理小説をパズルや心理ゲームのように描くが、スタイルが似ているかもしれない。

小沼作品ではほかに『村のエトランジェ』がおすすめ。小沼は日常に潜むちょっと不思議なものを持ちネタとしてよく使うが、特に根性の悪い女の描き方は上手い。必読。

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