この作品の作者はテレビドラマや映画にもなった『ビブリア古書店』シリーズの作者。
『ビブリア』シリーズは読んでいたものの、他の作品も読んでみたいと思い、また、目黒さんがこの作品の解説を書いているということで、推薦しました。
『ビブリア』シリーズを読んでいた人も、この作者の作品は初めての人も参加した読書会でした。
否定的な意見としては
・あっさりしていていい話だけど、掘り下げが足りないし、深みがない。
・同潤会アパートを舞台にした意味が感じられない。
・八重さんの気持ちの変化がわからない。
・八重さんの感情が描かれていないので、共感できず薄い物語に感じてしまった。
・みんないい人すぎる。影の部分も描いてほしかった。
・感想の述べにくい小説。『こころ』っぽい?と思ったけど2人の気持ちがわかるような心理描写が欲しい。正直あまり面白いとは思わなかった。
・タイトルが内容とあわないのでは?
肯定的な意見としては
・構成が良くできている。震災に始まり、震災に終わる。家族のつながりを感じさせる いいお話。
・連作短編のつながりが良く、全体にわかりやすい。10年ごとの日本の歴史上の出来事をうまく取り入れている。プロローグは「つかみはOK」って感じでいい!
・プロローグの「行きなさい」という言葉は千夏ちゃんの話にこうつながるのか!
・派手な出来事がないことがかえっていい。淡々としているので一つ一つのエピソードが生きてジーンとくる。
・亡くなったおも本会員のYさんが昨年5月の読書会に最後に参加したとき、『ビブリア』が面白かったと話していた。ちょうど月命日だし、いろいろ偶然が重なって、印象に残る読書になった。いろんなところで人は生きて死んでいくことにぐっときてしまった。
・Yさんが熱く語っていたので『ビブリア』シリーズも全部読んでいる。大変おもしろく読んだ。時代の境目を風俗を使ってうまく表現している。八重さんには戦争を潜り抜けた人の底力を感じた。
・面白く読んだ。大事な人が亡くなった悲しみを「くやしい」と表現する言葉を大事に使う作者だなと感じた。ステレオタイプではなく生々しい表現。この人は本当の事を書いているなと感じた。
・『月の砂漠』は2人ずつのペア4組を表しているのではないか。
講師からは
「額縁小説」としての構成は成功している。
物足りないのは人がいて家族がいて、アパートがあるのだが、舞台装置に対する書き込みがちょっと甘い。『ビブリア』も人物造形が浅かったけれど、この作品も。
「追憶の家族」を描いた小説。目黒さんは家族を描いた小説好きだった。
10年ごとの時代の風俗に何をチョイスするかで、読む人にとって合うか合わないか好みがわかれるところかも。
八重と千夏の描写で「おばあさんの力」はすごいと感じた。(ドラマ『舞い上がれ』の五島のおばあさん然り、『らんまん』の造り酒屋のおばあさん然り)
破綻もいくつかあるけれど「家族は記憶の中にあるものだ…」を描いた小説。
『ビブリア』シリーズは本についての蘊蓄や謎解きが主体だったのであまり心理描写については気にならなかったように思います。謎解きものではない本書ではやや人物造形が物足りなく感じてしまうのかなと思いました。暖かく静かな物語でよかったです。
同潤会アパートも面白い場所だったんだなと興味がわきました。
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