倉橋由美子「暗い旅」
歌人の穂村弘さんが「暗黒の青春期にびりびり痺れながら読みました」と書いていたので、推薦しました。
二人称で書かれた、著者の初長編。
婚約者である「かれ」が失踪し、「あなた」は彼と歩いた東京、そして京都を彷徨う。
参加者 男性2名 女性4名
全編「あなた」という二人称で書かれ、現在と過去が交互に出てくるという構成ですが、予想外におもしろかったという人が多かった。
おもしろかったポイントはいろいろで
・ヒロインが鼻持ちならない女性だけど、こういう女性いい、好き
・京都に向かう電車内の描写が、ロードノベル的で良い
・60年代の風俗がおもしろい
よろしくなかった点は、フランス語の多用。
フランス語が出てくると居心地悪い、引いちゃう、という感想多し。
その他
・風俗や京都の描写など、いわゆるアンノン族の走り?
・かれはどうなったの?死んだのか?
・それも含めて全体に死の影
・高校時代に読んで、その時は分かっているつもりでも分かっていなかった、今は分かる
失踪したかれの側の暗い旅も読んでみたい、という意見があり、確かに、それは興味深い、と思いました。
講師からはヌーボーロマンについて お話あり。
作者はまさにその時代の人。
皆のやるようにやりたくない、がこの作者のエッセンス。
政治と性が大きなテーマ。
外に広がるのではなく、内へ内へと降りていく作風。
ポイントは存在と不在、ヒロインは不在であることを抱えて生きていく
もう1つのポイントは意識と時間の流れ。
鎌倉に対して廃都という言い方をしているが、京都も廃都であり、廃都を結ぶ列車で旅をしている。
河出文庫の212ページ レアリスムの理論
なかなか含蓄のあることを言っているので読んでください。
蛇足ながら。「暗い旅」を検索していたら、中野翠の書評が見つかり、倉橋由美子の作品中、一番好き、とあったので、ご参考までに。
https://allreviews.jp/review/601
さらに蛇足ながら、私も年末に本の整理をしていたら倉橋由美子の本が8冊ほどあって、自分でもびっくりしました。
「聖少女」以外は未読です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます