
北杜夫 『夜と霧の隅で』
新潮文庫 1968年
ナチスの指令に抵抗して、患者を救うために苦悩する精神科医たちを描き、極限状況下の人間の不安を捉えた表題作など初期作品5編。
第43回 芥川龍之介賞
<新潮文庫>
=例会レポート=
11月の課題本は、10月24日に亡くなった北杜夫の芥川賞受賞作『夜と霧の隅で』でした。推薦者は菊池講師です。新潮文庫のほか、さまざまな全集で読んだ方も多かったようです。
ほとんどの方が読了されていました。
「重い」「暗い」「読むのが辛い・大変」「いまひとつインパクトが弱い」「あまり気分のいい話ではない」などというやや否定的な感想が過半数を占めました。しかし、「医者(ケルセンブロック)の葛藤は共感できる」「各人物がよく描かれていて小説としては好きだ」「精神病棟というのが身近かで他人事でななくグサグサ来て泣きそうになった」などという好意的な感想もありました。
重く暗い小説でありながら、読みやすく後味が意外に悪くないと感じる人が多かったようですが、これは淡々とした乾いた文体のせいかもしれません。
菊池講師からは、戦後文学の流れにおける北杜夫を含む第3の新人についての解説がありました。
「戦争と個人の関係」を主題とした第1・2次戦後派と違って、第3の新人は「戦争と人間という関係を加害者側からの視点で描く」ところに特徴がある。さらに西欧文学(北杜夫の場合はドイツ文学)の洗礼を受けて、観念的になっている部分もある。また、この小説に日本人が出てくるのは、このテーマはドイツだけの話ではないということの意味合いがあるのだろう。
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