そこは露地への降り口となっていました
用意されている露地草履を履き
露地に足を踏み入れますと
左側に縁側があり
円座と煙草が置かれていました
円座といっても
藁やい草のではなくて
丸い柔らかなお座布で
さっそくその上に腰を掛けさせていただきました
あらためて
目の前の坪庭風の露地に目をやると
文字通り塵一つなく
綺麗に整えられた
黒っぽく美しい土が
形よく盛られています
奥には大きな灯篭が据えられ
ところどころに
葉蘭がリズミカルに植えられていました
露地全体に
ほどよく水が打たれていて
ほんの少し前に
ご亭主がこの場所で
心をこめて清められていたお姿が
目に浮かびました
気づくと
私たちが腰掛けているすぐ横には
蚊やりが置かれ
ご亭主の細やかなお心遣いを感じました
心洗われる思いで
静かに
露地の風情を味わっていますと
やがて
茶室の方から
ご亭主が釜をあらためられている音が
聞こえてきました
ややあって
座を掃く音
ご亭主が蹲踞をあらためておられる音が
聞こえて参りますと
緊張は
いやが上にも高まって参りました
そして
ご亭主が近づいて来られる気配に
中潜りに歩みよりますと
潜り戸が開き
ご亭主がすぐ目の前に
蹲っておられます
私も腰を低くして
御挨拶をしようとしますと
ご亭主が
小声で「どうぞそのままで」と
おっしゃいます
着物の裾が
打ち水された露地の土で濡れることを
気遣ってくださったのでしょうか・・・
お言葉に甘えて
軽く腰をかがめ
頭だけを低くして
無言でご挨拶をさせていただきながら
私の胸の鼓動は
感動で高鳴っておりました
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