「大人のピアノ」上手くなる極意について
連続して語って参りましたが
いよいよ今回が最後の【極意】となります
さて
皆様は「上手くなりたい」と思って
ここまでお読みいただいたのだと思いますが
それはあなたにとって
具体的にどのように弾けるようになることを
イメージされているのでしょうか?
このことは第1回目にもお尋ねしたことです
中には
「別に上手くならなくてもいいです
自分流に弾いて楽しんでいますから」
という方もいらっしゃるかもしれませんが
やはり少しでも上手く弾けた方が
満足度はより高いはずです
いかがですか?
”プロのピアニストのようにとまでは言わないが
せめて好きな曲を止まらずに弾きたい”
”クラシックの難曲は無理だけれど
簡単な曲でいいから間違えずに弾きたい”
こんな風に答える方が多いのではないでしょうか?
でも「止まらずに」「間違えずに」弾くことが
本当に重要なことでしょうか?
楽譜に書いてある音符を間違えずに弾くことは
運動能力と集中力と記憶力の高い人であれば
比較的容易にできるかもしれません
あのフジ子ヘミングさんの名言を
思い出して下さい
《間違えたっていいじゃない 機械じゃないんだから》
「ピアノを上手く弾く」ということは
単に「間違えずに弾く」ということではありません
もちろん練習もせずに
間違いだらけの演奏を人に聴かせるのは問題外ですが
むしろ一生懸命に練習した上で
その結果いくつかミスがあったとしても
自分の気持ちを込めて表現しようとする演奏の方が
音楽を奏でる上で
何倍も素晴らしいことではないでしょうか
それは
プロのピアニストにとっても
趣味でピアノを楽しむ人にとっても
同じだと思います
ここでもう一度
ピアノを弾くために必要な力を
確認してみましょう
1.楽譜に書かれていることを読み取る力
2.読み取った情報を指とペダルを踏む足に伝える力
3.その曲全体の表現している内容を知る力
4.曲の細部の音楽性を読み取って表現する力
5.自分の音を聴く力
これらの力がバランス良く働いた時こそ
初めて
「上手く弾けた」と言えると私は思います
そのためにはもちろん
楽譜の情報が正確に指の運動に変換されるための
演奏技術・テクニックが必要であることは言うまでもありません
その技術のレベルには初級レベルから上級レベルまで
さまざまなものがありますから
少しでも多くの技術(テクニック)を身につけるように
練習・努力することは
豊かな演奏をするために有効であることは
間違いありません
しかし
運動能力に個人差があるように
持っている演奏技術は人それぞれに異なります
大切なことは
自分が今持っている演奏技術を使って
最高のパフォーマンス・表現をするということです
決して「間違えずに弾く」ということだけが
「上手く弾く」ということではないのです
「間違い」や「ミス」をすることを怖れずに
堂々と自分の曲への想いを表現できた時
その演奏は必ず聴く人に感動を呼び起こし
ます
それが本当に「上手いピアノ」ということなのではないでしょうか
興味深いことに
ミスを怖れる心や
失敗しないで弾くことへの「執着」から
離れれば離れるほど
ミスの無い演奏が
勝手に現われてくるものです
さらに付け加えるならば
聴いている人は
あなたが気にしているほど
あなたの失敗には気づかないものです
【極意⑨】
間違えずに弾くことにこだわらないこと