オリエンタルランド、「脱ディズニー」へ
東洋経済オンライン
2013/3/7 06:00
大滝 俊一
オリエンタルランド、「脱ディズニー」へ
[写真](シンデレラ城の写真は昨年10月時点。撮影:尾形文繁)
東京ディズニーリゾート(TDR)の開業30周年
イベントのスタートを4月に控えたオリエンタルランド(OLC)が、
早くも「ポスト30周年」に向けた布石を打つ。
OLCは3月26日付で、長谷工コーポレーションから
ホテル運営子会社のブライトンコーポレーションを買収する。
買収金額総額は、ブライトンの株式(約5億円)に加え、
その借入金(100億円台後半)を肩代わりすることから、
合計で100億円台後半程度。
OLCの100%出資するミリアルリゾートホテルズが子会社化するため、
OLCにとっては孫会社となる。
■ 新浦安の「パートナーホテル」を取得
ブライトンは、TDRのパートナーホテルでもある
浦安ブライトンホテル(千葉県浦安市、JR新浦安駅前)の運営会社。
そのほか、京都ブライトンホテル(京都市上京区)、
ホテルブライトンシティ京都山科(京都市山科区)、
ホテルブライトンシティ大阪北浜(大阪市中央区)を含め、
計4ホテルを展開している。
このうち、浦安ブライトンホテルと京都ブライトンホテルについては、
「婚礼や宴会、レストランなども含め、
ハイクオリティな総合サービスを提供するラグジュアリーホテルであり、
当社グループが舞浜で展開している3つのディズニーホテルに近い」とOLC側では評価する。
「ディズニーホテル」とは、
ミリアルリゾートが浦安市舞浜のTDRエリアで直営する、
ディズニーアンバサダーホテル、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ、
東京ディズニーランドホテルの3ホテル。
TDRのエリアには、このほかホテルオークラ東京ベイ、
サンルートプラザ東京、ヒルトン東京ベイ、東京ベイ舞浜ホテル、
東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルといった、
OLC系ではない6つの「オフィシャルホテル」が立地する。
【詳細画像または表】
ディズニーホテルもオフィシャルホテルも、
入場制限が行われるような混雑時でもパークに入れる「安心の入園保障」や、
「パークで遊んで、ホテルでひと休み」、「無料のバゲッジデリバリーサービス」など、
TDRエリアのホテルならではの宿泊ゲスト特典がある。
それが、周辺の他ホテルに対する大きな差別化につながっている。
■ 浦安ブライトンへの「ミッキー」登場はなさそう
一方、今回買収するブライトン傘下の浦安ブライトンホテル(写真)は、
TDRエリアではなく、その近隣・周辺にある「パートナーホテル」の位置づけ。
TDRと同じ千葉県浦安市内ながら、最寄り駅がTDRと同じJR舞浜駅ではなく、
隣のJR新浦安駅周辺にある5つのホテルが、
このパートナーホテルに指定されている。
その中には、OLC系(ミリアルリゾート直営)のパーム&ファウンテンテラスホテルも含まれる。
パートナーホテルは、ディズニーホテルやオフィシャルホテルに比べて
宿泊ゲスト特典に若干の差がある。
ホテル内での「パークチケット販売」や
ホテル・TDR間での「シャトルバス運行」などの特典では共通しているものの、
「安心の入園保障」や「パークで遊んで、ホテルでひと休み」、
「無料のバゲッジデリバリーサービス」といった特典は、パートナーホテルにはない。
今回の買収で浦安ブライトンホテルがOLC直営になることにより、
ディズニーホテルやオフィシャルホテルに“昇格”することはあるのか。
今のところ、「それはない」というのが、OLC側の公式見解だ。
つまり、同じOLC系で新浦安駅を最寄り駅とするパーム&ファウンテンテラスホテルが、
パートナーホテルの位置づけにとどまっているのに準じた扱いになる。
なお、ホテル内でミッキーマウスなどディズニーキャラクターを活用できるのは、
OLCが直営している3つのディズニーホテルのみ。
OLC直営ではない、TDRエリアの6つのオフィシャルホテルでも、
ディズニーキャラクターの活用は認められていない。
まして、パートナーホテルである浦安ブライトンホテルにミッキーが姿を見せることは、
今のところはなさそうだ。
■ 日本有数の観光地「京都」でTDRの経験生かす
TDRやディズニーとの関係が大きく変わりそうにないにもかかわらず、
OLCがブライトンを買収する意図はどこにあるのか。
「最大の目的は、浦安と京都の“ラグジュアリーホテル”を取得すること」とOLC側は説明する。
浦安ブライトンホテルは現にTDRのパートナーホテルであり、「当社が推し進めている、
(地方などからの)TDR来園者に対する宿泊滞在型利用の促進につながる」(OLC)。
また、京都ブライトンホテルについては、
「日本有数の観光地である、京都のラグジュアリーホテルで、
TDRでの経験や実績を生かせることは大きい」(同)という。
なお、ブライトンが運営する、
残りの2ホテル(ホテルブライトンシティ京都山科と同・大阪北浜)は、
ラグジュアリータイプではなく、宿泊特化型のビジネスホテル。
OLC側では、これら2ホテルについては、「買収の主目的ではない」と言い切るものの、
「安定的な収益を上げられると考えている」(同)とし、引き続き運営を続けていく意向だ。
■ 一極集中打破へ、脱「ディズニー」「舞浜」探る
これまで、巨大な人口集積地・東京に隣接する浦安市「舞浜」の好立地で、
「ディズニー」という世界最強のコンテンツ・キャラクターを活用し、
収益成長を続けてきたOLC。
とはいえ、最近の例で見ても、2011年3月11日の東日本大震災直後、
TDRの施設への被害は軽微だったものの、
周辺の道路インフラなどが打撃を受け、
1カ月強の休業を余儀なくされたこともある。
11年度の前半(11年4~9月)には、震災後の外出レジャー自粛の動きもあり、
TDR再開後しばらくは来場者数が伸び悩んだ。
「舞浜」「ディズニー」の強さゆえに、
OLCには事業の一極集中のリスクがつねにつきまとってきた。
そうしたリスクを分散させるためにも、
脱「ディズニー」、
脱「舞浜」は、OLCの大きな中期的課題の1つ。
首都圏以外の大阪や福岡で屋内型ディズニー施設の構想を模索したり、
舞浜のTDR隣接地で
「シルク・ドゥ・ソレイユ」(サーカスを基調としたショー)を
08年に開設したりするなどの取り組みを行ってきた。
結局、首都圏ほどの集客は見込みにくいことから、大阪などへの進出は断念。
シルク・ドゥ・ソレイユについても観客のターゲットを絞りきれず、
11年末で撤退を余儀なくされた。
あまりにも強すぎるTDRのテーマパーク事業。
それに匹敵する新規事業はなかなか見つからないというのが、
OLCのこれまでの現状だった。
もっとも、広い意味では大部分がTDRに含まれるものの、テーマパーク事業とは一線を画する「ホテル事業」が、OLCではそれなりのボリュームに育ってきている。
■ 利益率では現状でもホテルがテーマパークを上回る
2012年4~12月期(9カ月分)の実績で、
OLCの売上高全体に占める構成比では、
テーマパーク事業の84%に対し、ホテル事業は12%と、
7分の1程度に過ぎない。
ところが、事業部門別の営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)で見ると、
テーマパークの24%に対しホテルは28%であり、
意外にもホテルがテーマパークを上回る高収益事業となっている。
今回買収するブライトンの収益規模は、
前11年度の実績で売上高が102億円、営業損益も1億円程度の赤字と見られる。
3月末にブライトンを買収する際には、
赤字経営と見られる蓼科ブライトン倶楽部(会員制ホテル)を切り離すこともあり、
「取得する4ホテルの合計では現状でも黒字」とOLC側では説明する。
買収金額が買収先の純資産を上回る場合に発生する、
のれん代(営業権)の償却費用などが出てくる可能性もあり、
ブライトンが実質初年度の来13年度からOLCの利益にどの程度寄与するかは不明だ。
■ 西日本に事実上初の“足場”を築く
ただ、浦安ブライトンホテルについては、パートナーホテルの位置づけは変わらないとしても、
OLC側からの送客が今以上に期待できそう。
京都ブライトンホテルについても、
TDRのディズニーホテルと同じラグジュアリーホテルであることから、
一定の相乗効果を発揮できそうだ。
また、京都山科と大阪北浜にブライトンが展開しているビジネスホテルを含め、
OLCにとっては事実上初となる、西日本への本格的な“足場”を築けることも大きい。
この4月15日から来年3月20日まで、
1年近くにわたってTDRで行われる開業30周年イベントを終えた後に、
OLCは次の一手をどのように繰り出すのか。
30周年イベントがほぼ終盤を迎える来年の年明け早々にも、
ポスト30周年の方向性を示す、中期経営計画が出てくるはずだ。
(シンデレラ城の写真は昨年10月時点。撮影:尾形文繁)
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130307-00013163-toyo-nb&p=1より
東洋経済オンライン
2013/3/7 06:00
大滝 俊一
オリエンタルランド、「脱ディズニー」へ
[写真](シンデレラ城の写真は昨年10月時点。撮影:尾形文繁)
東京ディズニーリゾート(TDR)の開業30周年
イベントのスタートを4月に控えたオリエンタルランド(OLC)が、
早くも「ポスト30周年」に向けた布石を打つ。
OLCは3月26日付で、長谷工コーポレーションから
ホテル運営子会社のブライトンコーポレーションを買収する。
買収金額総額は、ブライトンの株式(約5億円)に加え、
その借入金(100億円台後半)を肩代わりすることから、
合計で100億円台後半程度。
OLCの100%出資するミリアルリゾートホテルズが子会社化するため、
OLCにとっては孫会社となる。
■ 新浦安の「パートナーホテル」を取得
ブライトンは、TDRのパートナーホテルでもある
浦安ブライトンホテル(千葉県浦安市、JR新浦安駅前)の運営会社。
そのほか、京都ブライトンホテル(京都市上京区)、
ホテルブライトンシティ京都山科(京都市山科区)、
ホテルブライトンシティ大阪北浜(大阪市中央区)を含め、
計4ホテルを展開している。
このうち、浦安ブライトンホテルと京都ブライトンホテルについては、
「婚礼や宴会、レストランなども含め、
ハイクオリティな総合サービスを提供するラグジュアリーホテルであり、
当社グループが舞浜で展開している3つのディズニーホテルに近い」とOLC側では評価する。
「ディズニーホテル」とは、
ミリアルリゾートが浦安市舞浜のTDRエリアで直営する、
ディズニーアンバサダーホテル、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ、
東京ディズニーランドホテルの3ホテル。
TDRのエリアには、このほかホテルオークラ東京ベイ、
サンルートプラザ東京、ヒルトン東京ベイ、東京ベイ舞浜ホテル、
東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルといった、
OLC系ではない6つの「オフィシャルホテル」が立地する。
【詳細画像または表】
ディズニーホテルもオフィシャルホテルも、
入場制限が行われるような混雑時でもパークに入れる「安心の入園保障」や、
「パークで遊んで、ホテルでひと休み」、「無料のバゲッジデリバリーサービス」など、
TDRエリアのホテルならではの宿泊ゲスト特典がある。
それが、周辺の他ホテルに対する大きな差別化につながっている。
■ 浦安ブライトンへの「ミッキー」登場はなさそう
一方、今回買収するブライトン傘下の浦安ブライトンホテル(写真)は、
TDRエリアではなく、その近隣・周辺にある「パートナーホテル」の位置づけ。
TDRと同じ千葉県浦安市内ながら、最寄り駅がTDRと同じJR舞浜駅ではなく、
隣のJR新浦安駅周辺にある5つのホテルが、
このパートナーホテルに指定されている。
その中には、OLC系(ミリアルリゾート直営)のパーム&ファウンテンテラスホテルも含まれる。
パートナーホテルは、ディズニーホテルやオフィシャルホテルに比べて
宿泊ゲスト特典に若干の差がある。
ホテル内での「パークチケット販売」や
ホテル・TDR間での「シャトルバス運行」などの特典では共通しているものの、
「安心の入園保障」や「パークで遊んで、ホテルでひと休み」、
「無料のバゲッジデリバリーサービス」といった特典は、パートナーホテルにはない。
今回の買収で浦安ブライトンホテルがOLC直営になることにより、
ディズニーホテルやオフィシャルホテルに“昇格”することはあるのか。
今のところ、「それはない」というのが、OLC側の公式見解だ。
つまり、同じOLC系で新浦安駅を最寄り駅とするパーム&ファウンテンテラスホテルが、
パートナーホテルの位置づけにとどまっているのに準じた扱いになる。
なお、ホテル内でミッキーマウスなどディズニーキャラクターを活用できるのは、
OLCが直営している3つのディズニーホテルのみ。
OLC直営ではない、TDRエリアの6つのオフィシャルホテルでも、
ディズニーキャラクターの活用は認められていない。
まして、パートナーホテルである浦安ブライトンホテルにミッキーが姿を見せることは、
今のところはなさそうだ。
■ 日本有数の観光地「京都」でTDRの経験生かす
TDRやディズニーとの関係が大きく変わりそうにないにもかかわらず、
OLCがブライトンを買収する意図はどこにあるのか。
「最大の目的は、浦安と京都の“ラグジュアリーホテル”を取得すること」とOLC側は説明する。
浦安ブライトンホテルは現にTDRのパートナーホテルであり、「当社が推し進めている、
(地方などからの)TDR来園者に対する宿泊滞在型利用の促進につながる」(OLC)。
また、京都ブライトンホテルについては、
「日本有数の観光地である、京都のラグジュアリーホテルで、
TDRでの経験や実績を生かせることは大きい」(同)という。
なお、ブライトンが運営する、
残りの2ホテル(ホテルブライトンシティ京都山科と同・大阪北浜)は、
ラグジュアリータイプではなく、宿泊特化型のビジネスホテル。
OLC側では、これら2ホテルについては、「買収の主目的ではない」と言い切るものの、
「安定的な収益を上げられると考えている」(同)とし、引き続き運営を続けていく意向だ。
■ 一極集中打破へ、脱「ディズニー」「舞浜」探る
これまで、巨大な人口集積地・東京に隣接する浦安市「舞浜」の好立地で、
「ディズニー」という世界最強のコンテンツ・キャラクターを活用し、
収益成長を続けてきたOLC。
とはいえ、最近の例で見ても、2011年3月11日の東日本大震災直後、
TDRの施設への被害は軽微だったものの、
周辺の道路インフラなどが打撃を受け、
1カ月強の休業を余儀なくされたこともある。
11年度の前半(11年4~9月)には、震災後の外出レジャー自粛の動きもあり、
TDR再開後しばらくは来場者数が伸び悩んだ。
「舞浜」「ディズニー」の強さゆえに、
OLCには事業の一極集中のリスクがつねにつきまとってきた。
そうしたリスクを分散させるためにも、
脱「ディズニー」、
脱「舞浜」は、OLCの大きな中期的課題の1つ。
首都圏以外の大阪や福岡で屋内型ディズニー施設の構想を模索したり、
舞浜のTDR隣接地で
「シルク・ドゥ・ソレイユ」(サーカスを基調としたショー)を
08年に開設したりするなどの取り組みを行ってきた。
結局、首都圏ほどの集客は見込みにくいことから、大阪などへの進出は断念。
シルク・ドゥ・ソレイユについても観客のターゲットを絞りきれず、
11年末で撤退を余儀なくされた。
あまりにも強すぎるTDRのテーマパーク事業。
それに匹敵する新規事業はなかなか見つからないというのが、
OLCのこれまでの現状だった。
もっとも、広い意味では大部分がTDRに含まれるものの、テーマパーク事業とは一線を画する「ホテル事業」が、OLCではそれなりのボリュームに育ってきている。
■ 利益率では現状でもホテルがテーマパークを上回る
2012年4~12月期(9カ月分)の実績で、
OLCの売上高全体に占める構成比では、
テーマパーク事業の84%に対し、ホテル事業は12%と、
7分の1程度に過ぎない。
ところが、事業部門別の営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)で見ると、
テーマパークの24%に対しホテルは28%であり、
意外にもホテルがテーマパークを上回る高収益事業となっている。
今回買収するブライトンの収益規模は、
前11年度の実績で売上高が102億円、営業損益も1億円程度の赤字と見られる。
3月末にブライトンを買収する際には、
赤字経営と見られる蓼科ブライトン倶楽部(会員制ホテル)を切り離すこともあり、
「取得する4ホテルの合計では現状でも黒字」とOLC側では説明する。
買収金額が買収先の純資産を上回る場合に発生する、
のれん代(営業権)の償却費用などが出てくる可能性もあり、
ブライトンが実質初年度の来13年度からOLCの利益にどの程度寄与するかは不明だ。
■ 西日本に事実上初の“足場”を築く
ただ、浦安ブライトンホテルについては、パートナーホテルの位置づけは変わらないとしても、
OLC側からの送客が今以上に期待できそう。
京都ブライトンホテルについても、
TDRのディズニーホテルと同じラグジュアリーホテルであることから、
一定の相乗効果を発揮できそうだ。
また、京都山科と大阪北浜にブライトンが展開しているビジネスホテルを含め、
OLCにとっては事実上初となる、西日本への本格的な“足場”を築けることも大きい。
この4月15日から来年3月20日まで、
1年近くにわたってTDRで行われる開業30周年イベントを終えた後に、
OLCは次の一手をどのように繰り出すのか。
30周年イベントがほぼ終盤を迎える来年の年明け早々にも、
ポスト30周年の方向性を示す、中期経営計画が出てくるはずだ。
(シンデレラ城の写真は昨年10月時点。撮影:尾形文繁)
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