正社員と同じ仕事で給料半分。
なんとかならないか
2013年3月21日(木)12:20
(プレジデントオンライン)
PRESIDENT 2012年12月3日号 掲載
毎年契約を更新して勤続10年の契約社員Aさんの悩み。
「正社員と同じ仕事をしているのに、給与は半分。
正社員には出ている通勤手当も出ない……」。
総務省の統計によると、
契約社員、パート社員、
派遣労働者等の非正規労働者が労働者全体に占める割合は、
35.2%と過去最高となった(平成23年男女平均)。
この非正規労働者の大半が、
雇用の期間を数カ月や数年と定められた有期契約の労働者だ。
「有期」とはいっても、更新によって勤続年数が5年、
10年と長期に及ぶ者も少なくない。
正社員と非正規労働者の年収分布を比較すると、
前者が200万円から999万円の層に幅広く分布しているのに対し、
後者はその80%近くが100万円から299万円の層に集中しており、
その差は歴然だ。
もっとも、非正規労働者の多くは
就業場所や従事する業務の内容等を限定され、
短時間勤務のこともあるので、会社の命令で転勤や配置転換、
業務内容の変更等がなされる正社員と単純に比較することは難しい。
ただ、非正規労働者の給与は
労働者の能力や勤続年数よりも業務内容にリンクするため、
正社員のように昇給という概念がない。
そのため給与は頭打ちとなり、
Aさんのような不公平な事態は起こりやすい。
このような事態を受けて、12年8月10日、
労働契約法の改正がなされた。
第20条を新設して、
会社が有期契約であることを理由に
不合理な労働条件を定めることを禁止したのだ
(施行日は13年4月1日となる見通し)。
これによって、同一の会社内では、
正社員と有期契約の非正規労働者との間で、「労働条件」、
つまり給与や労働時間、服務規程および教育訓練の適用、
福利厚生等の一切の待遇について、
不合理な格差を設けることはできなくなった。
格差が「不合理」かどうかは、
(1)業務の内容、
(2)これに伴う責任の程度、
(3)転勤等の人事異動の有無とその範囲、
また業務内容や責任の程度について変更がありうるかとその範囲、
(4)労使間の慣行その他の事情という4つの観点から判断される。
■給与も手当も請求できる
さらに厚生労働省は、
この新第20条を民事的効力のある規定であると解釈する通達を出しており、
この点もポイントとなる。
つまり同条によって、不合理な労働条件の定めは無効となり、
かつ有期契約労働者の労働条件は基本的に正社員と同じものと解釈されるのだ。
また不合理な労働条件の定めを置くこと自体が会社の不法行為となるため、
損害賠償の対象となる。したがって、有期契約労働者は、会社との間の雇用契約または不法行為に基づいて、会社に対して給与の差額分の支払いを請求することが法的に可能となる。
Aさんとしては、正社員と自分の業務内容や責任の程度が同等であること等を主張して、会社に給与額の是正を求め、会社が応じない場合には、正社員の給与との差額分の支払いを求めて提訴できる。また新第20条の「労働条件」には通勤手当や食堂の利用、安全管理等も含まれる。正社員に通勤手当が出ているのであれば、Aさんは併せてその支払いを会社に求めることができる。
ただし、先述したとおり有期契約の労働者は就業場所や従事する業務の内容、責任等が限定されていることも多く、その労働条件は必ずしも上記の4つの観点を満たすとは限らない。また、会社との紛争を抱えることになるため、同じ会社で継続して働くことを希望する人にとっては、会社を訴えることへの心理的な抵抗は決して小さくないだろう。今回の改正労働契約法を受けて、会社が積極的に不合理な格差を解消する措置をとっていくことが望まれる。
(芝綜合法律事務所 ソシエイト弁護士 高木侑子)
なんとかならないか
2013年3月21日(木)12:20
(プレジデントオンライン)
PRESIDENT 2012年12月3日号 掲載
毎年契約を更新して勤続10年の契約社員Aさんの悩み。
「正社員と同じ仕事をしているのに、給与は半分。
正社員には出ている通勤手当も出ない……」。
総務省の統計によると、
契約社員、パート社員、
派遣労働者等の非正規労働者が労働者全体に占める割合は、
35.2%と過去最高となった(平成23年男女平均)。
この非正規労働者の大半が、
雇用の期間を数カ月や数年と定められた有期契約の労働者だ。
「有期」とはいっても、更新によって勤続年数が5年、
10年と長期に及ぶ者も少なくない。
正社員と非正規労働者の年収分布を比較すると、
前者が200万円から999万円の層に幅広く分布しているのに対し、
後者はその80%近くが100万円から299万円の層に集中しており、
その差は歴然だ。
もっとも、非正規労働者の多くは
就業場所や従事する業務の内容等を限定され、
短時間勤務のこともあるので、会社の命令で転勤や配置転換、
業務内容の変更等がなされる正社員と単純に比較することは難しい。
ただ、非正規労働者の給与は
労働者の能力や勤続年数よりも業務内容にリンクするため、
正社員のように昇給という概念がない。
そのため給与は頭打ちとなり、
Aさんのような不公平な事態は起こりやすい。
このような事態を受けて、12年8月10日、
労働契約法の改正がなされた。
第20条を新設して、
会社が有期契約であることを理由に
不合理な労働条件を定めることを禁止したのだ
(施行日は13年4月1日となる見通し)。
これによって、同一の会社内では、
正社員と有期契約の非正規労働者との間で、「労働条件」、
つまり給与や労働時間、服務規程および教育訓練の適用、
福利厚生等の一切の待遇について、
不合理な格差を設けることはできなくなった。
格差が「不合理」かどうかは、
(1)業務の内容、
(2)これに伴う責任の程度、
(3)転勤等の人事異動の有無とその範囲、
また業務内容や責任の程度について変更がありうるかとその範囲、
(4)労使間の慣行その他の事情という4つの観点から判断される。
■給与も手当も請求できる
さらに厚生労働省は、
この新第20条を民事的効力のある規定であると解釈する通達を出しており、
この点もポイントとなる。
つまり同条によって、不合理な労働条件の定めは無効となり、
かつ有期契約労働者の労働条件は基本的に正社員と同じものと解釈されるのだ。
また不合理な労働条件の定めを置くこと自体が会社の不法行為となるため、
損害賠償の対象となる。したがって、有期契約労働者は、会社との間の雇用契約または不法行為に基づいて、会社に対して給与の差額分の支払いを請求することが法的に可能となる。
Aさんとしては、正社員と自分の業務内容や責任の程度が同等であること等を主張して、会社に給与額の是正を求め、会社が応じない場合には、正社員の給与との差額分の支払いを求めて提訴できる。また新第20条の「労働条件」には通勤手当や食堂の利用、安全管理等も含まれる。正社員に通勤手当が出ているのであれば、Aさんは併せてその支払いを会社に求めることができる。
ただし、先述したとおり有期契約の労働者は就業場所や従事する業務の内容、責任等が限定されていることも多く、その労働条件は必ずしも上記の4つの観点を満たすとは限らない。また、会社との紛争を抱えることになるため、同じ会社で継続して働くことを希望する人にとっては、会社を訴えることへの心理的な抵抗は決して小さくないだろう。今回の改正労働契約法を受けて、会社が積極的に不合理な格差を解消する措置をとっていくことが望まれる。
(芝綜合法律事務所 ソシエイト弁護士 高木侑子)