人生をひらく東洋思想からの伝言

東洋思想の言葉やその精神を通じて、ともに学びながら人生や経営をひらいていけたら嬉しいです。

第182回『六波羅蜜行』(仏教)

2025年03月18日 | 日記

【人生をひらく東洋思想からの伝言】

第182回

『六波羅蜜行』(仏教)

今週は春のお彼岸です。令和7年(2025年)の春彼岸は、

3月17日(月)から23日(日)までの7日間となります。

お彼岸について

  • 彼岸入り(ひがんいり):初日の3月17日
  • 中日(ちゅうにち):春分の日を中心とした日
  • 彼岸明け(ひがんあけ):最終日の3月23日

春彼岸は、国民の祝日である「春分の日」を中心とした

前後3日間の計7日間がお彼岸として定められています。

参考:第54回「お彼岸(ひがん)」(仏教)

お彼岸の意義

春秋のお彼岸は、昼夜の長さがほぼ等しくなる時期です。

この時期は1年の中で、この世(此岸)と浄土(彼岸)の距離が最も近くなり、

思いが通じやすくなると言われています。

六波羅蜜(ろくはらみつ)について

春秋のお彼岸には「六波羅蜜」と呼ばれる仏教修行を行います。

この修行によって、煩悩に満ちた現世(此岸)から

悟りの境地(彼岸)へ至ることができるという思想が生まれました。

ですので、この期間にお墓参りや、自分自身の日頃の生活を振り返り、

見つめなおす期間ともされています。

六波羅蜜は以下の六つの修行から成り立っています:

  1. 布施(ふせ) - 物質的・精神的な施しを行うこと
  2. 持戒(じかい) - 戒律を守り、道徳的に生きること
  3. 忍辱(にんにく) - 耐え忍ぶこと
  4. 精進(しょうじん) - 努力を怠らないこと
  5. 禅定(ぜんじょう) - 心を静め、瞑想すること
  6. 智慧(ちえ) - 真理を見抜く知恵を得ること

この期間は、先祖のお墓参りと共に、自分自身の日頃の生活を振り返り、

見つめなおす大切な時間とされています。

六波羅蜜の修行を意識することで、自分自身の内面を見つめ直す貴重な機会となります。


日常生活が忙しい中でも、この7日間は少し立ち止まって、

自分の行動や考え方を振り返る時間を設けることは、

現代を生きる私たちにとっても意義深いことかもしれませんね。

参考文献
『はじめての般若心経』大栗道榮著 日本文芸社




御岩神社

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第181回『箸(はし)の使い方』(仏教)

2025年03月11日 | 日記

【人生をひらく東洋思想からの伝言】

第181回

『箸(はし)の使い方』(仏教)

物心ついた頃、箸の使い方を教えてくれたのは

父方の祖母だったと記憶しています。明治生まれの厳格な祖母は、

食事の作法について常に厳しく躾けてくれました。

また、20代の頃にお世話になった和尚からも同様の指導を受け、

その原理原則は今でも大変ありがたく感じています。


箸の使い方における失礼にあたる13ヶ条を知っておくと役立ちます。

これらを知っておくと、大切な場面で恥ずかしい思いをせずに済むでしょう。

1、握りばし - 赤ちゃんのように箸を握って使わない

2、移りばし - 料理の上をあちこちつつかない

3、寄せばし - 食べたい料理だけをお皿ごと手前に寄せない

4、フォークばし - 食べ物を突き刺さない

5、ナイフばし - 両手で一本ずつ持って料理を切り分けない

6、スプーンばし - はさみにくいものを箸の上に乗せない

7、肘(ひじ)ばし - テーブルに肘をついて食べない(テレビを見ながら食べるとこの悪い癖がつきやすい)

8、渡しばし - お茶碗の上に箸を渡さない(これは「骨上げばし」とも呼ばれ、
       葬儀の際の骨壺に箸を渡す行為を連想させるため縁起が悪いとされる)

9、振りばし - 会話に夢中になって箸をタクトのように振り回さない

10、くわえばし・ねぶりばし - 食事中に箸を口にくわえたり、なめたりしない

11、たたきばし - お酒に酔って箸でお茶碗をたたかない

12、掻(か)きばし - 食事中に箸で顔や鼻などをかかない

13、ようじばし - 箸を楊枝代わりに使わない


食事のマナーは、正しい箸の持ち方と使い方で決まります。

いかがでしょうか?当たり前のことでも、なかなか人に指導することは難しいものです。

和尚はこれらをわかりやすく、諭すように教えてくださいました。

少しでも何かのヒントになれば幸いです。




参考文献
『五分間法話集 八十八精選』大栗道榮著 国書刊行会


 

 


東京 愛宕神社

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第180回『食事の三相』(仏教)

2025年03月03日 | 日記

【人生をひらく東洋思想からの伝言】

第180回

『食事の三相』(仏教)

昨今、テレビ番組といえば、グルメか旅行かクイズなどが

多くなりましたが、人が食べるシーンを見ると、食欲がそそられますね。

ただ、食レポの食べるシーンでは、出演者の食事作法や反応を見ていると、

それぞれの育ちや品格が出るのかなと感じることもあります。

昔から、お寺では小僧さんに厳しく食べ方を教えていたそうです。

「食事に三つの相(すがた)をするなかれ!」という教えがありました。


一つ目の相は、「猿の相で、食(しょく)すべからず」

それは、口いっぱいにほおばってたべるな」という意味になるそうです。

二つ目の相は、「犬の相で、食すべからず」

それは、「口を閉じてかめ」という意味になるそうです。

三つ目の相は、「鳥の相で、食すべからず」

それは、「食べ散らかすな。かみながら、話をするな」という意味だそうです。


もちろん、みんなでわいわい楽しく食べながら食事するというのは

大切な時間でもありますので、静かにもくもくと食べるということでは

ありません。

一定の社会的立場にある者や公の席での食事では、

あまりにもみっともない食べ方は人柄まで疑問視される要因になり得ますので

日頃から心得ておくべきだと感じる今日この頃です。


参考文献
『五分間法話集 八十八精選』大栗道榮著 国書刊行会

 


紅竜山 東海寺

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第179回『知りて知らずとするは上。知らずして知れりとするは病。』(老子)

2025年02月25日 | 日記

【人生をひらく東洋思想からの伝言】

第179回

『知りて知らずとするは上。知らずして知れりとするは病。』(老子)


この言葉は、老子の「知病第七十一」に記されています。

「知りて知らずとするは上(じょう)。知らずして知れりとするは病(へい)。」


続く文章には

「ただ病を病とす。これを以て病せず。聖人病せず。
その病を病とするを以てなり、是を以て病せず。」

とあります。

ここで老子が語る「知る」という行為は、単なる知識や情報の習得ではなく、

宇宙の真理や道理についての深い理解を指しています。

そして、その「道」というものは、どれほど学びを重ねても、

完全に理解することは難しい深遠なものなのです。

だからこそ老子は、本当に深い理解を持つ人は、

むしろ「知らない」という謙虚な姿勢を保つものだと教えています。

反対に、十分な理解もないのに「わかっている」と思い込むことこそが、

心の病であると諭しているのです。

この教えは一見厳しく感じられますが、

実は私たちの生き方に大切なヒントを与えてくれています。

真の智慧は、自分の無知を知ることから始まるのかもしれません。

そして、そのような謙虚な姿勢を持って「道」と向き合う人こそが、

心静かに穏やかに生きていけるのでしょう。

日々の暮らしの中で、少しでもこのような生き方に近づいていけたらと思います。

完全な理解は難しくとも、謙虚に学び続ける姿勢を大切にしていきたいものです。

 

参考文献
『老子道徳経講義』田口佳史著 致知出版社

 


目黒不動尊

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第178回 『和光同塵』(老子)

2025年02月18日 | 日記

【人生をひらく東洋思想からの伝言】

第178回

『和光同塵(わこうどうじん)』(老子)


老子の「無源第四」の中に出てくる言葉になります。

「其の光を和(やわ)らげ、其の塵(ちり)に同ず」

 

老子は、私たちが日頃「良いもの」とされている高い能力や優れた才能、

社会的な地位などが、必ずしも人生の幸せには直結しないと説いています。

むしろ、それらが時として競争心や争いの種となり、

心穏やかに過ごす妨げになることもあるよ、語りかけてくれているのです。


確かに、私たち誰もが持っている『認められたい』『褒められたい』という願望、

これ自体は自然な感情ですが、この思いが強くなりすぎると、

かえって心を乱す原因となってしまいます。

老子は、そんな人間の本質を深く理解した上で、

穏やかに諭してくれているように感じます。

なんだか、心に染み入りますね。。。

 

光を和らげ、塵のように目立たない存在となる。

しかしそれは決して自己否定ではなく、むしろ内なる豊かさと

静かな喜びを育む生き方なのかもしれません。

日々の暮らしの中で、控えめに、でも確かな満足感を持って生きていく。

そんな穏やかな生き方を、私も心掛けていきたいと思います。


参考文献
『老子道徳経講義』田口佳史著 致知出版社

 

 

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