【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第86回
「無為を為し、無事を事とし、無味を味はふ。」(老子)
この言葉は、老子の「恩始六十三」からの引用になりまして、
とても老子らしい表現で味わい深いものになっています。
「何も問題のない人生ほど、すばらしいものはない」というニュアンスで、
「無為」「無事」「無味」がこの世で一番大事だと老子は言っています。
「無為」は、自然のままで作為のないことで、
自然の成り行きに任せることという意味合いとして使われることが多いですし、
「無事を事とし」は、何事もないこと、
「無味を味はふ」は、格別の味わいがないこと。
どれも、一見 無味乾燥的な感じですが、
これがものすごく大切で味わい深いものだと、老子は言っています。
そして、この文章の後に続く文章を見ていきますと、
「小を大とし少を多とし、怨みに報ゆるに徳を以てす」と言っています。
「小さな物事を大きなことだと思え」「少ないものほど多いと心得よ」と言っています。
問題が大きくなる前に、小さな段階でしっかり対応することの大切さを説いていますし、
怨みに怨みで返さずに 徳をもって対応すれば、決して争いごとや問題にならないと、
物事の本質を説いています。
変化が早い今この時代に 改めて今、老子の本質を体感していきたいと思いました。
参考文献
『老子の一言』田口佳史著 光文社