【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第106回
「積小為大(せきしょういだい)」(二宮尊徳)
「大事をなさんと欲せば、小さなる事を、怠らず勤(つと)むべし。
小積もりて大となればなり。凡(およ)そ小人の常、
大なる事を欲して、小なる事を怠り、出来難き事を憂ひて、出来易き事を勤めず。
それゆえ、終(つい)に大なることをあたはず、
それ大は小を積んで大なることを知らぬ故(ゆえ)なり。」
我々は、日常の小さなことをおろそかにして軽んじてしまいやすいものであります。
わかりきったことや、当たり前だと思うことをおろそかに軽視しがちなので、
その小さな事の積み重ねが大きなことにつながるという、
珠玉当たり前だと言われそうですが、実に深みのある言葉であります。
それは、なぜならその言葉を発しているのが、日本の生んだ農聖であるとともに、
哲人であり、思想家、そして実践家として多くの村を立て直した真の改革者である、
二宮尊徳が言っているからでもあります。
二宮尊徳(1787-1856)は、現在の小田原市栢山(かやま)に生まれました。
幼少時より幾多の辛酸をなめ尽くし、かつ求道心旺盛にして勉学と勤労に励み、
やがて悟道開眼(ごどうかいげん)の師でもあります。
さらに心田開発(しんでんかいはつ)の教育者であったということで、
心魂の限りを尽くして村民の心田開発に尽力せられました。
同時に、農村の立て直しの改革者であったので、
指導した村は六百カ村に及んだと言われています。
多くの小学校などで、銅像を見かけた方も多くいらっしゃるかと思いますが、
実際の功績や思想などはあまり知られていないのかもしれません。
ただ、日本の名経営者や多くの方々に、影響を与えた偉人の一人であることは間違いありません。
ぜひ、小田原には報徳二宮神社や、博物館など資料館などもありますので、
足を運んでいただけると嬉しいです。
【参考文献】
『二宮尊徳のことば』寺田一清編 発行登龍館 発売 明徳出版社