松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆弁護士に対する大量懲戒請求-大人よ、しっかりしてほしい(三浦半島)

2018-05-25 | 1.研究活動

 弁護士に対する大量懲戒請求が話題となっている。身に覚えのない事柄で大量懲戒請求があり、それを受けた弁護士が、裁判に訴えるという事件である。興味深い論点もあり、ネットでは、入り乱れた議論があるが、一番肝心な点が抜けている。「大人たちの行いは、子どもたちの範になっているか」である。

 週刊朝日によると、事件は次のようである。2016年に東京弁護士会が朝鮮学校への補助金支給をめぐる国の対応を批判する会長声明を出したことがきっかけに、ネット上などで懲戒請求を出すよう呼びかけがあり、東京弁護士会の役職者ら10人に対し段階的に大量の懲戒請求が出された(合計13万件にもなるらしい)。この記事の佐々木弁護士にも「声明に賛同しその活動を推進する行為は犯罪行為」などとして、懲戒請求書が届いた。犯罪の種類は外患誘致罪だそうだ。佐々木さんには、これが4000件もきたという。

 「私は労働問題が専門で、朝鮮学校の声明には関わっていません。懲戒請求されることも初めてで、大量の請求書が届いたときには一体何のことだろうと思いました」(佐々木氏)
佐々木氏は請求したという男性とのやりとりをこうツイートしている。
 「ところで、なんで私を懲戒請求したの?」(佐々木氏)「名前があったので、申し訳ありません」(男性)
 「でも、私は朝鮮学校のことなんて何もやってないよ?」(佐々木氏)「えっ?」(男性)「えっ?」(佐々木氏)

 同じ被害を受けた北弁護士の場合は、佐々木弁護士への懲戒請求を批判するツイートをしたところ、自分にも大量の懲戒請求書が届いたという。「懲戒請求書の束を見て、自分は何をしたんだろうと怖くなりました。懲戒請求は誰でもできますが、弁護士にとっては資格を奪われるかもしれない重要なことです。やるのであれば根拠があるのかどうか、きちんと調べて欲しい」

 朝鮮学校のことに全く関与していない弁護士たちに対しての大量の懲戒請求。内容も外患誘致罪。外患誘致罪は、死刑しかない犯罪なので、これは相手に「死刑になれ」と請求しているようなものである。懲戒請求は、「弁護士の仕事をできなくする」というもので、これも穏やかではない。

 弁護士なのでどんと構えろという意見もあるが、自分が逆の立場だったら、どうなのだろう。見ず知らずの何千人から、見に覚えのないことで、お前は犯罪者だと言われるのである。まず「怖くなり」、そのうち「なんと理不尽な」と怒り、さらには「訴えてやる」と思うが普通だろう。

 しかも驚くべきは、相手を抹殺するような大変な請求を、分別があるはずの中高年がやっているということである。「懲戒請求した人の年齢で、今分かってるのは、1番若くて43歳。40代後半から50代が層が厚く、60代、70代もおられる」とのことである。しかも、「でも、私は朝鮮学校のことなんて何もやってないよ?」(佐々木氏)「えっ?」(男性)といういい加減さである。いつから、こんなになってしまったのだろう。

 自分に戻して考えてみても、人に注意するときは、まず正すべき事実をきちんと把握して、少しでも良くなっていくように、効果的な物言いや態度で、相手の立場を考えながら話をするのが普通である。自分の子どもたちに対しても、いきなり「お前は死刑だ」などとは言わないだろう。

 「数をたのんで人をいじめることは卑怯者のやることだ」。「影に隠れて、石を投げるようなふるまいはするな」。「言いたいことがれば、正々堂々とやれ」と。私たちは、親から教わり、そして自分の子どもたちにも、教えてきたのではないか。40代、50代、60代といえば、子どもや孫がいる世代で、それが逆のことをやってどうするというのが、同世代の率直な感想である。

 これから訴訟になるようなので、考えようによっては、これはチャンスではないか。正々堂々、自らの主張、そして相手の非を裁判という公の場で述べることができる。若者たちが最も嫌うのは、人のせいにすること、卑怯なふるまいであるが、若者たちに評価を覆すチャンスだと思う。

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