松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆日本人はなぜサッカー日本代表を応援するのか(相模大野)

2012-10-04 | 1.研究活動
 政治学の授業は、定員いっぱいの40名である。今日のテーマは、「日本人は、なぜ日本代表を応援するのか」。逆に言うと、中国(韓国)人はなぜ中国(韓国)代表を応援するのかという問題を考えた。
 国民国家は、当たり前のことのようであるが、それがができたのは、フランス革命(1789年)以降である。それまでは国王の国はあったが、国民の国はなかった。国民の国になって、はじめてフランス人がフランスを応援するようになる(そのためにたくさんの無理をする。国語の統一もそのひとつ。その当時でも3割のフランス人はフランス語を話せなかったようだ。歴史も偽造する。国が一つという考え方に反する歴史的事実は、否定される)。
 後発の国民国家は、後発ゆえ、独自性を出そうと考える。これは、他都市で先進政策が行われたとき、後発の自治体は独自性を出そうとする心理と同じである。
 明治維新よりも遅れて統一されたドイツは、ゲルマン文化の優位性を主張し、それがナチスのユダヤ人虐殺にまでつながっていく。
 今日、韓国や中国が、自らの文化の先駆性・優位性を強調するのも、その表れである。優れているからこそ、国民は国を信じ、国のために戦うことができる。偏狭なナショナリズムが、いまあちこちで、不要な軋轢を生んでいる。
 自治基本条例は、パトリオティズム(郷土愛)を柱のひとつとする条例である。
 それゆえ、伝統的な人民主権の立場からは、自治基本条例とは、自治体政府を統制するものでよく、市民の責務や地域コミュニティにふれるのは、好ましくないとされる。これは、パトリオティズムが偏狭なナショナリズムにつながる危険を危惧するためだろう。
 他方、奇妙なことに、パトリオティズムやナショナリズムに親和性を持つ人たちからも、自治基本条例は警戒すべきものとされている。その論理は理解をこえるが、日本的郷土愛の受容性の高さ(そこに3日住んだら、はまっ子のようなもの。それが外国人でも)に、彼らにとっての危険の予兆を感じているためだろうか。
 いずれも一面では正しさがあるかもしれないが、地方自治が分かっていないという言葉がぴったりする。自治基本条例が基盤とするのは、郷土愛のさらに奥にある市民の高い市民性である。近代日本が、明治維新を受け入れ、急速に発展したのは、江戸時代の名望家たちによる公共活動と庶民自身の教育・教養の高さにあるが、こうした「豊かな市民性」こそが、私たちの財産で、この点を基盤に、新しい自治を構築しようというのが、自治基本条例である。

 写真はゼミ生たち。仲のよい学生たちで、これはミニ誕生会。女子大ならではある。
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