松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆協働とは何か、補助や委託がメインなのか(マッセ大阪)

2012-10-05 | 1.研究活動
 協働とは何か、補助や委託がメインなのか。
 なぜ協働が言われるようになったのか。その背景には、1990年代に入って、NPOなどの市民セクターが注目されるようになったためである。
 ①NPO・協働政策を都会の大きなNPOがリードしたということもあって、NPO側からNPOと行政の対等性が強調され、協働は、NPOと自治体との対等な契約性をめぐって、さまざまな発展をとげる(委託の方式や協働提案制度など)
 ②他方、まちづくりや地方自治論の立場からは、市民セクターに注目するのは、行政による公共だけでは公共性を担えなくなったためで、そこで、もう一つの公共の担い手である市民セクターに注目するものである。行政と民間の双方が公共を担うことで、市民が幸せに暮らせる社会を実現するのが目標である。
 ③このように考えると、市民セクターとはNPOに限らない。とりわけ地縁組織が重要である。最近は、公共の担い手である自治会、町内会に注目が集まっている。
 ④行政と市民セクターの対等性は、ともに公共の担い手として対等という意味である。現実の活動のなかでは、権限、力量が対等というわけではない。
 ⑤ところが、自治体の多くの制度は、行政と市民セクターの対等性を基本に組み立てられている。協働提案制度などは、対等な行政と市民セクターが、それぞれ強みを出して1+1を3にすると言っている。
 ⑥ところが、地域にいる市民セクターは、申請書類も十分に作れない。行政の仕組みも解らないところが多い。それは非難すべきことではなく、無理もないことである。そこで、対等性を強調するあまり、市民セクターの提案をそのまま「尊重」するということが行われ、その結果、書類が十分でないという理由で、市民の提案をつぶすことになる。結局、資料作成能力にたけた、セミプロのようなNPOが、補助金をもらうことになる。
 ⑦地域には、思いはあるが、組織としても、運営もぎこちないという市民セクターがたくさんいる。そういった芽を育てて、多くの市民を自治の当事者にするのが自治体政策である。こうした市民セクターを育てるのが協働政策である。
 ⑧協働政策のメニューとして、補助や委託、共催などがあるが、ポイントがずれているように思う。これらは、事業支援であって、団体支援ではない。必要なのは団体支援である。団体支援は、市民セクターの自立性を妨げるという議論があるが、自立性を育てるように団体支援をするのが協働政策である。そうすると、協働のメニューは、補助や委託がメインではなく、自立のための場所や機会、有用な情報や知識の提供、いつでも相談できる窓口や職員、職員の暖かい目線や仲間意識、さらには自治体職員全体の協働への意識(公共は市民も担っているということ)などが重要になってくる。
 ⑨総務課でも協働があると言っているが、役所の仕事ぶりの総点検が、協働政策の柱のひとつになってくる。協働担当には、しんどいと思うかもしれないが、チャンスを見て、チャレンジしてほしい。
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