民泊は、ちょっとややこしい。民泊には、旅館業としての民泊(旅館業民泊)、国家戦略特区内での民泊(特区民泊)、民泊新法での民泊(新法民泊)の3種類の民泊がある。
旅館業民泊は、旅館業法の簡易版である。旅館なので、住居専用地域では出来ないことや、消防法や建築基準法などで厳しい条件がある。ただ、営業日数の制限がなく、年間を通して本格的なビジネスができる。
特区民泊は、国から指定された国家戦略特区という特区の中で民泊である。東京、大阪、沖縄など、国家戦略特区内のみであること、また各自治体が民泊条例を制定しないと営業できないという制約がある。これまで、特区民泊は、「宿泊日数が6泊7日以上」とされていたが、普通は、1泊~2泊という旅行客が圧倒的に多いため、実情に合わないと批判されていた。改正があり、2泊3日に改正された。
新法民泊は、新法をつくって、民泊を手軽にできるようにするものである。昨年秋の臨時国会で法案提出が見送られたが、2017年通常国会での法案提出を目指すとしている。これによって空き家などの住宅を宿泊施設として貸し出すことができ、また旅館業法ではできない住居専用地域での営業も可能となる。
新法民泊の最大の論点は、営業日数の制限で、法律では180日が上限になると思われる。ただ各自治体で、より厳しい規制が可能で、120日、90日などといった選択が出てくるだろう。利害関係者は多く、既存の旅館のほか、平穏な暮らしを望む住民、不動産の活用を図りたい不動産業者等との調整が難しい作業になる。
新法民泊のねらいは、事実上、放置状態になっている違法民泊を一定の範囲で認め、それ以外は厳しく規制していこうという内容である。民泊の背景は観光立国であるが、一方では、安易な開放は、テロや伝染病の広がりの原因になる。住宅地に事実上のホテルができて、さまざま心配をする住民もいるだろう。さまざまな価値の調整がポイントになる。
法では、こうした新法を保健所がきちんと管理することになっているが、現実には人員削減と事務量の増加の中で、チェックを行う人員体制が整わないという自治体も多いだろう。法律としては筋が通っても、体制が整わなければ絵に描いた餅なので、この管理体制の担保をきちんと図るのも、新法における重要な論点といえる。
新法民泊でも、利用者名簿の作成・備付け、衛生管理措置、利用者に対する注意事項の説明、法令・契約・管理規約違反の不存在の確認等の作業が伴うが、これら情報収集等の事務、判断の材料となる資料を作成する事務等、いわば準備行為、補助行為は、民間に委託できること、そうした新たなビジネスをつくっていくことを法律審議で明確にする必要があるだろう。
仏作って魂入れずにならないような、地道な法政策がこの分野でも求められている。