松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆傍観者効果

2022-09-03 | 自治会・町内会、オルソン問題を考える
 リンゲルマン効果と似たものに「傍観者効果」がある。

 傍観者効果とは、緊急事態で援助が必要な人がいるにもかかわらず、周りに多くの傍観者がいると、率先して援助行動を起こさなくなる集団心理である。この理論のきっかけとなったのが、1964年にアメリカのニューヨークで発生したキティ・ジェノヴィーズ事件である。被害者が暴漢に襲われてから殺害されるまでの間、38人もの近隣住民がその様子を目撃していたにも関わらず、誰も通報しなかった。

 この事件を受けて、社会心理学者のビブ・ラタネとジョン・ダーリーは、「自分以外にも目撃者が多数いたため援助行動が抑制されたのではないか」という仮説を立て実験を行った。

 その結論は、都会人の無関心や無責任さが原因ではなく、多くの目撃者がいたために、「誰かがやるだろう」という集団心理に陥り、誰も行動しなかったものであるとされた。たしかに、「火事を見て、誰かがもう通報しただろうと考えて、通報しなかった」というのは、誰にでも起こりうるし、類似の経験をした人も多いだろう。

 傍観者効果の原因については、ラタネとダーリーは、傍観者効果は「多元的無知」「責任分散」「評価懸念」が複合的に作用して発生するとしている。

 ・多元的無知・・・周りの行動に合わせて、誤った判断をしてしまうことである。「周りの人が援助行動を起こしていないのだから、特に緊急性のあることじゃないのだろう」と思い、自分も行動しなくてよいと判断することである。

 ・責任分散・・・「周りの人と同じ行動をしているのだから、何かあっても自分だけの責任ではなくなる」と判断してしまうことである。他の人と同じ行動をとることで責任や非難が分散されると判断し、何か起きても自分だけではないという自己防衛の心理である。集団の規模が大きくなるほど、「周りの誰かが行動するだろう」と思い込む傾向が強くなる。

 ・評価懸念・・・「失敗したら恥ずかしい」「間違ったら責任をとれない」など、行動を起こして失敗してしまうくらいならば、始めから何も行動しない方がいいと思う心理である。必要以上に空気を読もうとする場合なども、これに当たる。私も、AEDを使うとき、間違ったら、逆に症状を悪化させてしまうのではないかと心配である。

 傍観者効果を乗り越えるポイント(自治会活動に応用すると)
 ①適切な援助方法を知る・・・普段から問題が起きた際の適切な援助方法を知り、シミュレーションしておく。これならできる、これは得意だという点をつくり、それと自治会活動をつなげるということだろう。
 ②異常性や緊急性を周りに理解してもらう・・・傍観者に対して、「何で困っているのか」や「どのような援助が必要なのか」をきちんと伝える。
 ③われわれ意識・・・非常事態に遭遇した集団が知り合い同士の場合は、被害者を助ける傾向が高い。社会心理学者のロバート・チャルディーニは、共感は援助を求めている他者との「一体感」と直接結びついていると指摘している。共感、一体感をつくるということが重要であろう。
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