松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆行政区長の性質・役割

2021-01-23 | 1.研究活動
 行政区長は、仕事での体験がないので、肌感覚でわからない。人の話を聞きながら、考えている。行政区長については、すでに一度書いている。若干重複するが気がつく点をまとめておこう。

1.行政区長の性質や枠割は、地方公務員法の改正で、あらためてクローズアップされた。

 行政区長は、大別して、①特別職非常勤の公務員とするか、②私人とするかに分けられる。これは、行政区長は、①公務組織の下部組織なのか、②自治組織なのかの違いである。どちらのほうが好ましいのかという価値判断でもある。総務省は、②を推奨している。

 これは言い換えれば、地方公務員として任命したほうがいいのか、公務員とせず、市民のほうがいいのかの違いでもある。

 判断の際に参考になるのが、(1)非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の適用、(2)個人情報保護の関係である。公務員ならば、必要な範囲内で個人データ(地域住民に関する情報)の提供を受けることができる点である。

 なお、地方公務員に任命せずに私人として整理する場合には、委託契約の中で守秘義務等をきちんと定め、災害補償保険に入るなどの対応が必要になる。個人データの外部提供には、審議会による審査が必要で、審査は、多少厳しくなるのだろうか。

 最も大事なのは、行政区長は公務員の方がいいのか、私人のほうがいいのかの判断である。これは行政区の仕組みが、行政の下部組織的な位置づけのほうが好ましいのか、行政とは別の自治組織のほうが好ましいかの価値判断である。

 これまでは、自治組織のほうがいかにも民主的で好ましいと考えられてきた。私は、その両方を併せ持つのがベターと考えている。

 ところが都市内分権の議論が進んでくると、行政区を都市内分権の受け皿とし、ここに資源、権限を落としていくべきだという議論になる。

 相模原市は、市役所、区役所、まちづくりセンターの3層構造になっているが、今後の自治の基本はどこにあるのかという議論になる。もう少し正確に言うと、それぞれがその強みを発揮できるように、資源、権限の適正配分が必要になる。 

 また、その整理を理論的にできても、実際に、それぞれが担えるかの問題がある。とりわけ、小さな自治の単位になればなるほど、資源、権限が不足し、今日的な都市内分権の担い手にするには、補強が必要となる。それが従来の行政区を有機的に都合した地域自治区的な規模に再編する動きや、職員の地区担当制とセットで、その力を補強する動きである。

 ただ、職員にその力がなかったり、住民にやる気がなかったら、空回りするばかりである。

2.やや話が広がったが、非常勤特別職とすると、私は、地方公務員法第3条第3項第3号だと思っていたが、2号という説もある。

 二 法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの

 民生委員は、この第2号の特別職であるが、職務内容(民生委員法(昭和 23 年法律第 198 号)第 14 条)が類似している点、行政区設置条例に設置根拠がある点を理由に、民生委員と同様に第2号の 特別職(独任制の附属機関)とするというものである。

 3号説は、「三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職(専門的な知識経験又は識見を有する者が就く職であつて、当該知識経験又は識見に基づき、助言、調査、診断その他総務省令で定める事務を行うものに限る。)」

 単なる広報配りではなく、専門的な知識経験等を有する者が、この知識経験等に基づいて公務に参画する仕事を行うと位置づけ、助言、調査、診断等を行うものとする。現状は、厳しいものがあるかもしれないが、そうあるべきだという考え方である。

3.私は3号説であるが、当面の問題意識は、区長さんが力を発揮できる仕組みや後押しの方法である。
 
 相模原南区では、最後の仕事は、ファシリテーションスキルを体得するための技術マニュアルづくりであったが、こうした地道な後押しが必要になる。

 ここから、さらに、公務とは何か、公務員とは何かの問題につながっていく。あるいはまちは誰が作っていくのかというパラダイムをどのように示していくかが課題である。協働の時代において、地域ボランティア型の公務員の可能性を展望するものである。その制度設計は容易ではなく、そこに躓き、一歩ずつ、挑戦している。
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