松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆大和市おもいやりマスク着用条例を考える(3)条例をなぜ急ぐのだろう

2020-08-23 | 1.研究活動
 大和市おもいやりマスク着用条例は、全4条で、主な内容は、市民にマスクを着用しようと呼びかける内容である。この内容を条例という政策形式で、しかも専決処分でつくった。

 なぜそんなに条例化を急ぐのだろう。分かるような気もするが、正直、よくわからない。

 大和市といえば、政策法務先進自治体である。自治基本条例も早くつくったし、自治基本条例の具体化、推進策として、大和市の全条例の見直しも行った。私は、自治基本条例の具体化は、そうした方向ではないと思っているが、それでも、こうした取り組みを真っ先に実施した点は、すごいと思う。

 その大和市が、なぜマスク条例なのかである。難しい議論をすると、政策法務の理論が、国法への対峙に急で、それが結局は、自治体のミニ国家化の手段(住民統制の手段)になってしまったのではないかというのが、私の問題意識である。本来ならば、この点を乗り越える政策法務論を書いてみたいが、そこまでの力量と熱意がないので、ここでは問題提起にとどめておきたい。

 要するに、この問題は、条例をどのようにとらえるか、条例の本質論をめぐる問題である。

 一般には、条例は、強要性とPR効果で説明される。マスクしましょうを条例にしたのは、条例の押しの強さ(強要性)とPR効果だと思う。確かに条例ということで、法規範なのだから守らなければということを市民に周知できるし、条例ということでPR効果もある(実際、テレビ、新聞等で取り上げられた)。

 この立場にたてば、強く押せるだけのマスクの効用の説明とマスク警察への対策がポイントになる。

 これに対して、私は、主権問題が根本にある法律とは違って、条例は、ともに助け合って暮らすという地域の暮らしを守る手段なので、条例の意義は、みんなのルールとしての納得性の高さにあると考えている。

 なぜ条例は、規則や要綱と比べて、納得性が高いのか。

 一つは、二重の民主性である。つまり、市民代表の市長が、「これいいね」といって提案し、市民代表の議会が、「これいいね」と言って議決した。市民代表の二者が、「これいいね」と言ったという意味での納得性である。

 第二は、実効性である。議会に条例を提案すると、議会から、これをどのように実行するのかと厳しく追求される。それに負けないように、「こうした仕組みを作り、実効あるものとします」と答弁できるように、行政はさまざまな準備や仕組みづくり、予算を用意するのである。それによって、納得性の高いルールが出来上がっていく。

 第三は、オープンであることである。議会審査はオープンなので、市民がこれを見ることができる。市民には、いろいろな知見を持っている人がいるから、「こうしたらもっと良くなるよ」という提案もあり、更によいものに変わっていく。

 逆言うと、これらが条例の強みなので、この強みを活かすようにつくっていくのが、条例づくりである。規則や要綱は、この納得性では劣り、専決処分も、この納得性が弱いから、例外的に使われるにとどまる。

 さて、条例を専決処分する場合であるが、その場合は、納得性が高まるように条例を作り、専決処分に掛けていく必要がある。

 3つの条件のうち、第一の条件と第三の条件は、専決処分は劣るので、第二の条件である実効性で、がんばるしかない。

 10万円の給付では、暮らしが立たなくなっている人がおり、即急に給付すると言った実行性が専決処分のキモである。マスク着用もこれと同じような説明が求めれる。

 これ以上、書くと、いやな奴になりそうなので、ここまでとするが、大和市、がんばってほしい。

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