松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆自治基本条例の最高規範性(逗子市)

2017-03-18 | 地方自治法と地方自治のはざまで
 自治基本条例は最高規範なのか。みんなで話しあった。

 自治基本条例を自治体の憲法と考えると、日本国憲法と同じように、自治基本条例を最高法規だと位置づけるという考え方が出てくる。自治基本条例の初期段階では、この議論を盛んに行われ、みんなでたくさんの知恵を絞った(この議論には、国と地方を同じ原理で考える地方政府論の限界が内在している)。

 しかし、大いに知恵を絞ったが、多くは成功しなかった。憲法と法律の関係のように、自治基本条例とその他の条例を位置付けるのは困難である。それは同じ条例同士だからである。

 そこで、次は、機能や役割として、自治基本条例を他の条例の上位に位置付ける試みが行われる。例えば、米原市は、自治基本条例の改正には、住民投票を付加するという条例になっている。これは、制度として、自治基本条例を他の条例の上位とする試みである(ただ、このやり方では、事実上住民投票はできないので、自治基本条例の改正はできないということでもある)。アクションプランや見直しの際に、自治基本条例を基軸に実施し、見直していこうというのが、役割、機能として、事実上、自治基本条例を上位にする基本的なやり方となる。

 私は、最高規範性をことさら強調すると、自治基本条例の意義や役割を狭めてしまうことになると考えている。最高ということは、自治基本条例以下の法規を統制することである。そこで、多くの自治体では、自治基本条例ができて、既存の条例等を見直し作業にかかったが、基本的に自治基本条例に反する条例などはなく、事実上、何も変わらないという結果となった。自治基本条例の空洞化が心配されるが、確かにこの発想では、壁に突き当たる。

 自治基本条例が、既存の条例等を統制するという観点はもちろん大事であるが、それだけにとどまらず、自治基本条例は、自治体法規のベース(土台)のようなものだというのが私の立場である。つまり、自治基本条例は、今後の自治を進めていくために必要な政策を立ち上げていく(花開かせていく)土台である。自治基本条例で目指すのは、市民、行政、議会の全員が、それぞれ持てる力を存分に発揮していって、自治体を取り巻く困難に立ち向かっていくことであるが、自治基本条例は、みんなが存分に力を発揮する土台(土壌)の役割を果たすものである。

 例えば、新城市では、自治基本条例をベースに、これまであまり力を発揮していない若者をターゲットに若者政策に取り組んだ。自治基本条例に取り組まなかったら、若者政策という発想は出てこなかったろう。若者以外でも、地域のために力を出していない人はたくさんいるだろう。例えば企業である。外国人もそうかもしれない。高齢者だって、存分に力を発揮しているのか。こうした、みんなが存分に力を発揮できるような新しい政策を立ち上げていく土台が自治基本条例である。だから基本条例なのである。土台条例である。これはある意味では、最高規範とも言えるが、創造的な条例であることを減殺されて理解されるようならば、あえて最高規範と言わないほうがいいと思う。

 このように考えていけば、自治基本条例の空洞化など心配はいらないだろう。常に、新しい政策課題は、おこってくるから。

 
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