松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆地方自治論10.二元代表制は好ましい制度なのか(相模大野)

2014-06-17 | 1.研究活動
 第10回は執行部と議会の関係を考えた。二元代表制は好ましい制度なのかである。

 日本国憲法では、二元代表制を前提としている(と読める)。憲法93条には、市長も議員も住民による直接選挙と書いてあるからである。
 これに対して、住民によって直接公選された市長の権限を大幅に削減して名誉職的な地位にとどめる一方、「議事機関」(憲法93条)とされている議会に執行権限を付与し、その上で、行政実務の専門家であるシティマネージャーを雇用して執行に当たらせるという制度が採用できるという考え方もある。

 この考え方は、素直に憲法の条文を読むと無理があるが、現状の二元代表制が必ずしもうまくいっていないと考えると、一つの解決方法である。本来は憲法改正によって地方自治のあり方を巡って本格的な議論をすべきであるが、それも容易でないとすると、地方自治法の改正によって、やってできないことはないだろう(ただ、やはり、名誉職的な市長をわざわざ選挙で選ぶのは合点がいかない)。

 さて、国のシステムは、一元代表制である。国民が国会議員を選び、その国会議員が内閣総理大臣を選ぶ。内閣総理大臣は、国民が選ばない。安倍さんは国民が直接選んでいない。地方自治における二元代表制の代案は、この議院内閣制のシステムが考えられる。

 二元代表制と議院内閣制の違いは、どの時点で政策競争をするかである。二元代表制では、住民に選ばれた市長と議員が、ある課題をめぐって、それぞれが政策提案をする中で、政策競争する。議員は、テーマごとにA案、B案と集合離散することになる。

 これに対して、議院内閣制は、議員を選ぶ時点で政策競争することになる。A案を主張する議員を選ぶか、B案を主張する議員を選ぶかである。国で言えば、集団自衛権を推進するA党の議員を選ぶか、それを否定するB党の議員を選ぶかである。この時点で、議員はA党,B党と集合離散することになる。

 議員は地域代表といった選び方をする地方議会が多い現状の中で、政策で集合離散する政党システムは、地方議会にはなじみにくい。地方で議院内閣制を採用しても、議院内閣制の呈をなさないのではないか。

 それは、国政ならば、政策対立があり、国民がどちらをとるか選択を求められる場合も多いであろうが、地方自治では、政策選択といってもイメージが難しい。地方自治は話し合い、助け合いだからである。やらなければいけない政策は、事実上決まっていて、違うのは、せいぜい比重の置き方か、あるいは、それをどの程度一生懸命実現するかどうかで、それが議員の選択肢である。

 たとえば、今日の市政の重要課題は、防災であるが、このアジェンダ自体に反対する人は誰もおらず、問題は、これをどのように実践するのかが重要で、選挙では、その人は、どれだけの熱意と関心があるのかが判断の分かれ道になるだろう。

 したがって、地方自治で議院内閣制を採用すると、政策競争が顕在化しないばかりでなく、お任せ民主主義に拍車をかけるのではないかというのが、今回の私の仮説である。事実上、大きな政策選択ができない地方自治では、むしろ二元代表制のほうが、住民を争点を明確にし、住民自治を身近なものにすることになるのではないか、案外、二元代表制もいけるというのが、この講義における私の結論になった。

 ただし、この二元代表制の妙味がうまく機能するには、議員による政策提案が活発化することが前提となる。両者の議論を住民の前に提示する仕組みも重要になることはいうまでもない。      
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