松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆補助率の論理 (三浦半島)

2015-04-08 | 地方自治法と地方自治のはざまで

  いまさらであるが、補助率100%というのは、どういう意味なのか。

 住民たちによる住民監査請求のターゲットのひとつが、自治会町内会である。横浜市でも、地域振興協力費に関して、住民訴訟になった。横浜地裁平成17年(行ウ)第49号事件は、裁判所が、自治会・町内会の仕事をどのようにとらえているのかよく分かって興味深い。

 まず、市の経費でできるのは、市の事務を処理するため必要な場合のみである(地方自治法232条)。判決では、区連会の活動を12の分野に整理している。市の事務ゆえに経費になるものとして、①定例会開催、②区地域の集いの共催、③防犯ネットワークつづきの設置、④防犯ビデオの配布、⑤課題検討プロジェクト会議の実施であるとしている。

 それに対して、⑥自治会活動の手引きの作成、⑦加入促進運動、⑧オリンピック選手の応援、⑨社協への参加、⑩中越地震の義援金募集、⑪視察研修、⑫公益団体の役員兼務は、市の事務処理に必要なものではないとして、これに対して経費を支出するのは地方自治法232条1項違反とする。

 つまり、①から⑤は市の仕事であるが、⑥から⑫は、公共的な仕事であるが、市の仕事ではなく、それゆえ、市の経費としての許されないが、公益性を認められるから、これを補助金として出すのは、裁量権の範囲内であるとして、結果的には、⑥から⑫に対する100%補助を有効としている。

 補助とは、「役所が特定の事務、事業に対し、公益性があると認め、その事務事業の実施に資するため反対給付を求めることなく交付される金銭的給付」である。直接、役所の仕事ではないが、公共的だとして、財政援助するものである。だから半分だけの公共性があるとして、補助率が2分の1になったりする。

 では、100%というのは、どういう意味なのか。役所の仕事ではないが、きわめて公共性が高く、役所の仕事に類似するということだろう。しかし、これを従来の公=役所という公私二分論ではうまく説明できないのではないか。公共には、役所が担う公共と民間が担う公共があるという新しい公共論ならば、主体が違うだけであって、公共的活動であることは変わらず、それゆえ100%の補助もあるという説明ができるように思う。

 いずれにしても地方自治法232条と232条の2の関係は、もう一度、きちんと考える必要があるのだろう。ブログなので、やや思いつきで書いているが、この点に関するきちんとした論考もあるかもしれない。

 

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