「わっわっ……わぁああああ!」
そんな恐れとも興奮とも取れる言葉が小頭からは漏れてる。まさか本当に飛べるとは……という感じ。落ちると思ってたら、なんか空を……道なき道を自然と進めてる。
カラカラカラ――
車輪からはそんな音がしてた。それに車輪は重くもかる過ぎもない。坂道を上がってるような重みも、坂道を降ってるような軽さもないのだ。
ペダルを踏むと適度な抵抗が返ってくるような? そんな感覚。それがどこかを進んでる……と小頭に伝えてくる。
(確かにこれは、飛んでるというよりも走ってるのかも? でも光景は完全に飛んでるから脳がバグりそう……)
どっちなのかと問われると、とても困る状況なのは間違いない。この光景を観てる人は間違いなく「飛んでる」というだろう。さっきまての小頭がそれだ。けど、確かに乗ってみて体験してみて思う。
これは「走ってる」な……と。そこでふと小頭は思った。
(これって、漕ぐの辞めたらどうなるの?)
――とね。好奇心は猫を殺す――とかいうことわざがある。強すぎる好奇心は自身の身を滅ぼす、的な諺だ。イギリスの諺らしい。
小頭はその好奇心と同時に、嫌な予感が第六感で感じてた。けど、自然と漕ぐのを辞めてた。だって慣性というのがある。中3ならもう習ってるだろう。
物体には動き続けるエネルギーが働くというあれである。もっと簡単に言うと、車は急に止まれない――である。つまりは自転車だって急には止まれないのだ。だからちょっと位大丈夫だろうと思った。
けど次の瞬間、ガツッと跳んでた鬼女が自転車を掴んでいってきた。
「こがないと駄目だよ」
――とね。ウインクまで混ぜてた。言葉としては軽い。けど、鬼女は自然と自転車を掴んで保持してた。つまりはそういうことなんだろうと小頭は察したのだ。だからすぐに漕ぎ出す。すると安心してたのか鬼女は手を離して、再び下におちてく。
二人の鬼がピョンピョンする間に、自転車を漕いで空を進む少女の図は夏の幻想か、それか見るものによってはとてもシュールにみえるかもしれない。
入道雲目指すかのように、三人は夏の青い空を進んでる。