3番目の公認会計士・渡邉浩志さんは『公営企業の財務諸表の分析』でした。
◎公営企業の概要
1.企業としての性格
◆ 地方公共団体が、住民の福祉の増進を目的として設置し、経営する企業。
事業例:上・下水道、病院、交通、ガス、電気、工業用水道、地域開発(港湾、宅地造成等)、観光(国民宿舎、有料道路等)
◆ 一般行政事務に要する経費が権力的に賦課徴収される租税によって賄われるのに対し、公営企業は、提供する財貨又はサービスの対価である
料金収入によって維持される。
2.管理者
◆ 企業としての合理的、能率的な経営を確保するためには、経営の責任者の自主性を強化し、責任体制を確立する必要があることから、地方公営
企業の経営組織を一般行政組織から切り離し、その経営のために独自の権限を有する管理者(任期4年)を設置。
◆ 管理者は地方団体を代表(ただし、地方債の借入れ名義は、地方団体の長)。
3.職員の身分取扱
◆ 人事委員会を置く地方公共団体については、職階制の採用が義務づけられているのに対し、企業職員については、その実施は任意。
◆ 給与については、職務給(職務遂行の困難度等職務の内容と責任に応ずる)であることに加え、能率給(職員の発揮した能率を考慮)であることを
要する。
◆ 人事委員会は、企業職員の身分取扱いについては、任用に関する部分を除き、原則として関与しない。
◆ 企業職員には、団体交渉権が認められている。
◆ 給与、勤務時間その他の勤務条件については公営企業の管理運営に属する事項を除き、団体交渉の対象とし、労働協約を締結できる。
4.財務
◆ 事業ごとに経営成績及び財務状態を明らかにして経営すべきものであることに鑑み、その経理の事業ごとに特別会計を設置。
◆ その性質上公営企業の経営に伴う収入をもって充てることが適当でない経費及びその公営企業の性質上能率的な経営を行ってもなおその経営
に伴う収入のみをもって充てることが困難である経費については、地方団体の一般会計又は他の特別会計において負担。(それ以外の経費については、公営企業の経営に伴う収入をもって充てる。)
5.会計
◆ 企業会計方式をとっており、以下の点等において官公庁会計方式と相違。
・ 官公庁会計方式が現金主義会計、単式簿記を採っているのに対し、公営企業会計では発生主義会計、複式簿記を採用。
・ 損益計算書、貸借対照表等の作成を義務付け。ただし、法非適用事業がある
(出典:総務省「地方公営企業の概要」)
◎公営企業会計における財務諸表
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書
◎指標を用いた分析
1,全面的な「見える化」の推進
議会・住民に経営比較分析表による見える化。2016年水道・下水道を公表。2017年バス・電気事業を公表。2018年観光施設(休養宿泊施設)、駐車場整備事業、病院事業を公表。2020年工業用水事業を公表。
国は各公営企業に経営戦略の策定・抜本的な改革(廃止、民営化、民間譲渡、広域化)を強力に後押し。
・経常収支比率で給水収益・使用料以外のしゅうにゅうに依存している場合いは、料金回収率・経費回収率と併せて分析し、経営改善を図っていく必要がある。
・累積欠損金比率は、累積欠損金が発生していないことを示す0%であることが求められる。
・流動比率は1年以内に支払うべき債務に対してしはらうことができる現金等がある状況を示す100%以上であることが必要である。
・企業債残高対給水収益比率は経年比較や類似団体との比較等により自団体の置かれている状況を把握・分析し、適切な数値となっているか、対外的に説明できることが求められる。
・企業債残高対事業規模比率は経年比較や類似団体との比較等により自団体の置かれている状況を把握・分析し、適切な数値となっているか、対外的に説明できることが求められる。
・料金回収率は料金回収率が100%を下回っている場合、給水に係る費用が給水収益以外の収入で賄われていることをいみする。
・経費回収率は使用量で回収すべき経費を全て使用量で賄われている状況を示す100%以上であることが必要である。
・有形固定資産減価償却率は経年比較や類似団体との比較等により自団体の置かれている状況を把握・分析し、適切な数値となっているか、対外的に説明できることが求められる。
これらの指標を元に、国は各公営企業に経営戦略の策定・抜本的な改革(廃止、民営化、民間譲渡、広域化)を強力に後押し。