「あーそういえばさー。
奮闘記もTS物SSだけど、皆は他に型月のTS系SSでどんな物を見ているの?」
思い出すようにアルクェイドが残りのヒロインに尋ねる。
TS物、すなわちトランスセクシャル、性転換の略語である。
「TS物ねー。
そういえば士郎がTSする志保。
アーチャーがTSするアチャ子の2パターンがあったわね」
凛が口を開き、妙にヒロイン力が高い己の従者の顔を思い浮かべる。
「「Fate/stay night ~剣の女王~」や、
「正義の魔術使い、立派な魔法使い」のように聖剣の鞘の影響でシロウが私と同じ姿になるパターンもありました。
剣の女王は完結しており今も閲覧できますが…ネギまクロス物である「正義の魔術使い、立派な魔法使い」はHPが閉鎖されました…」
セイバーは己のマスターがTS化するSSを語る。
「Fate/stay night ~剣の女王~」は本編でランサーに心臓を貫かれた士郎を蘇生させるべく、
発動した凛の治癒魔術に聖剣の鞘が反応してしまい、外見がセイバーそのものになってしまうTS物SSである。
凛ルートと桜ルートを元にそのまま聖杯戦争を戦いぬき、ロンドンに留学。
第二部のロンドン編では、クロス物では定番のゼル爺に弟子入りを果たし投影で宝石剣を再現。
魔法の再現に成功してしまい6人目に認定されその生涯を過ごす、というかなり変わったSSである。
対する「正義の魔術使い、立派な魔法使い」はネギまとのクロス物。
Fateルート後、正義の味方として戦い抜き死を迎えつつあった士郎だが、
平行世界の移動は遠坂宅急便、肉体の交換ならお任せ橙子先生!の遠坂凛、蒼崎橙子のコンビが登場。
早速肉体を入れ替えたが、鞘の影響でセイバーの姿になれるようになってしまった。
物語の展開はその後ネギまの世界で何らかの要因で飛ばされた、
宮崎のどか姿のランサーと共同戦線を張り、佐々木小次郎と戦うなど今後の展開が楽しみであったが、
非常に残念なことにHP「NIGHT KNIGHT KINGDOM」は現在閉鎖されている。
ただし、HPのURLをインターネットアーカイブに入力すれば閲覧は可能である。
「あーそういえば結構閉鎖されたSS多いかも。
確か「出席番号32番 衛宮志保」も閉鎖された影響でアーカイブで発掘しないと見れないだっけ?」
「はい、あれも良いものでしたが、今では…」
「というか、Fateもそうですが大半のSSは完結せずエタって放置が多いですし」
アルクェイドが思い出すようにセイバーに尋ねた。
その問いにセイバーは悲しげに今は見れない事実を肯定し、シエルがエタッた作品の多さに嘆く。
「でも、先週(10月4日)からFateが放映されましたし、また新たなFateSSに出会えるはずですよ」
「む、それもそうね…そういえばFateが放映されたんだっけ?なんならさー、ここで皆で鑑賞会でもしない?」
桜のフォローにアルクェイドが頷く。
と、同時にFateが放映された事実に気づいた彼女がヒロイン勢による鑑賞会を提案した。
「あら、良いわね。でも貴女達は店員じゃないの?」
「どうせ客はしばらく来ないし、某3人組とかは展開的にもう少し先になってから来るから大丈夫大丈夫」
「ネタバレ乙」
凛がアルクェイド達が今はアーネンエルベの店員であり、
店員としての作業を放棄しても良いのか聞くがアーパー吸血鬼はまったく気にしていなかった。
そして、さり気無くネタバレをした事にさつきが突っ込んでいるが誰も聞いていなかった。
無視されたことに気落ちするさつきだが、ある事実に気づき再度口を開いた。
「あれ?というか先週の内容なんて今は放映されてないんじゃ…」
「愚問よ、弓塚さん。ここはアーネンエルベ、何でもありの空間。
時間軸の無視なんて当然だし、大人数でも見やすい大きなテレビが都合よく現れるなんてよくあることよ」
つきの疑問に凛がここは都合主義万歳である事実を答える。
現に指差す先には今までなかったはずの20インチ以上のテレビが何故か鎮座していた。
「ふむ、何故かもう電源が着いている上に始まっているようです」
「…ご都合主義ばんざーい」
セイバーの呟きにさつきはご都合主義を賛美する他なかった。
(遠坂邸での朝のシーン)
「さっすが、uftable。
背景画像に気合が入っているわね。
BGMとかも合わせて雰囲気がブルーが活躍する「魔法使いの夜」みたいね」
「おお、言われてみればたしかに」
「あのーブルーって誰ですか?」
「魔法使いの1人、蒼崎青子のことよ桜」
予想以上の映像美に感嘆の声を挙げるヒロイン勢。
余談であるが遠坂邸のモデルは神戸の異人館の1つ。
「風見鶏の館」であり、神戸には他にも間桐邸、冬木大橋などの原作に登場したモデルがあることをここに記す。
なお会話に参加していない、さつきは鑑賞会のために飲み物や食べるものを準備している。
(弓道部道場で雑談を交わすシーン)
「いいなーこっちは志貴も妹も部活に参加してないわねー」
「志貴は体が弱いしな…っとできたぞ」
「感謝します、さつき」
「…そういえば姉さんは中学生の時、部活とか参加したことはあるのですか?」
「魔術の勉強優先だったから、代わりに生徒会の活動をしていたわ、桜」
学園者に定番である部活動について話題の花を咲かせる。
この話題に参加していないセイバーは、さつきが運んできたポテトフライを一心に頬張っている。
(ワカメ登場)
「モジャララ君ね!」
「む、頭にワカメを乗せたモブキャラですか?」
「あれ、誰だっけこのモジャモジャ?何とか慎二というらしいけど」
「ああ、モブキャラですね、直ぐに死ぬ枠ですね」
「ひ、ヒドイです!
中の人は確かに某物語の人ですけど、
昆布やワカメでも兄さんは小物かつ、物語の礎となる立派なやられキャラですから!」
「みんな色々ひどい、というか妹の突込みが一番ひどい!」
間桐慎二が凛に話掛けるシーンに、
ヒロイン達は次々と容赦ない言葉を出す。
まあ、それは仕方がないと言えば仕方がない。
なぜならエクストラに至るまで間桐慎二というキャラは小物枠で固定されているのだから。
(英霊召還シーン、そしてポカミス)
「えっとつまり遠坂さんは無課金で英霊を呼んだら、
ご当地ヒーロー、それも同級生を招待してしまったでおっけ?」
「ご、ご当地ヒーロー……。
アーチャーがご当地ヒーロー、ぷ、あ、あははは。
あはははは!そ、その発想はなかったわ、今度アーチャーに言ってあーげよ」
「触媒を課金アイテム扱いですか…」
「公式でも英霊ガチャなんて代物が出ましたね…」
英霊を招く触媒を課金アイテム。
さらには呼ばれた英霊を地元のヒーローショーのヒーロー扱いなアルクェイドの言葉に、
凜は爆笑し、セイバーはその発想はなかった、と複雑な表情を浮かべる。
対するシエルは公式が病気なことをふと思い出した。
(整理された居間にドヤ顔のアーチャー)
「これ以上ないほどドヤ顔をしているけど、
中身はあのヘッポコな士郎の未来だと思うとなんか複雑」
「執事レベル高いわね、翡翠みたい」
「黒執事ではなく、赤執事といった所か?」
「姉さんズルイです。
こっちは認知症のおじい様の世話と我侭ワカメの管理を始めに、
掃除洗濯家事炊事、家計簿管理、その全てが私だけでやらなきゃいけないのに!」
これ以上ないドヤ顔で紅茶を入れるコーチャーなアーチャーにヒロイン達はそれぞれの感想を言い合う。
特に凛は自分のサーヴァントであるが同時に舎弟…もとい弟子の未来の姿であることを思う所がある複雑な表情を浮かべる。
なお桜だけが妙に所帯じみたこことを口にし「そろそろ老人ホームも探そうかしら?」と呟いておりゾォルゲンの老人ホーム行きまったなしだ。
(冬木市探索シーン)
「『弓兵は、眼がよくなければ、つとまらん』。BYアーチャーっと」
「英霊川柳やめーい!」
「Fate/Zeroであったわねー」
「次の回は自分が登場しますから、
待ち遠しいです…さつき、ポテトフライお代わりです」
英霊川柳を口にするアルクェイドに、突っ込むさつき。
感嘆深げに過去に思いを馳せる凛に、お代わりを要求するセイバーであった。
(アーチャーVSランサー戦、前半)
「うっわ、容赦ないー」
「ランサーは生粋の戦士ですから。
それより、飲み物のお代わりです、桜」
「というか、姉さん屋上でランサーさんに襲われてよく無傷で済みましたね…」
「確かに、ランサーが本気で一撃で凛を殺すのではなく、
遊んでいたのを除いても、英霊を相手にその場で怯まず逃走を選択できるとは、流石です」
「ふふん」
凛がランサーに襲われるが、
突き、あるいははらわれる槍の攻撃をかわして、逃走するシーンに、
妹である桜が呆れ、セイバーは英霊の攻撃から逃れた凛を賞賛する。
(アーチャーVSランサー戦、後半)
「……すごい」
「士郎はこの戦闘に入ろうとするのね、
おまけに次はバーサーカー戦だしアイツ、本当に馬鹿というか無謀というか」
「しかし、本当に映像が綺麗です。
それによく動くキャラ…一体何人のスタッフが魔力切れを起こしたことか…」
「『DEEN「これがサーヴァントの戦い…」』」
「アルクェイドさん、やめて。
ほ、ほらDEENは2006年に放映。
つまり8年もの月日が流れているから技術的に差異があるのは仕方がないって」
「月姫のリメイク版が出るとしたらぜひこうなって欲しいものです…今度こそカレーを」
迫力の戦闘シーンに圧倒されるヒロイン達。
だがその裏で一体何人の作画スタッフが睡眠時間を犠牲にしたのかセイバーは嘆く。
そしてアルクェイドがDEENとのシーンを見比べるような言い方に、さつきが冷や汗をかいた。
シエルはカレー風味のポテトを頂きつつ、黒歴史扱いのアニメとの差異に嘆く。
(ランサーに刺殺された衛宮士郎を遠坂凛が発見したシーン)
「『どんな顔であの子に会えばいい』姉さん、もしかして私のために先輩を……?」
「…………ま、まあそうよ。士郎は桜の面倒を見てくれたし」
「姉さん……ありがとう」
「…こ、今回だけは特別なんだから!」
衛宮士郎を蘇生させるために、父親が残した切り札を使う凛。
その理由は「どんな顔であの子に会えばいい?」と言ったように桜のためであった。
その事実に気づいた桜は凜に感謝の言葉を伝える。
感謝を受け取る側の凜は顔を赤らめ、そっぽを向いている。
麗しき姉妹愛、だかそれは即座にぶち壊された。
「あ、でもこのルートって凛ルートでしょ?
つまり妹の想い人と知りながら恋人になった寝取りルートってこと?」
空気を読むことを知らないアルクェイドの指摘に空気が凍りついた。
たしかに、桜のために衛宮士郎を蘇生させた、だがこのルートでは最終的に恋人になるのは姉の凛であった。
「…………ふ、ふふふ」
「さ、桜、落ち着いて。ほら来年はHFルートの劇場版があるから!」
「ギャー!桜さん影!影を仕舞って飲み込まれるー!」
(衛宮邸でセイバーと対峙)
「あの時はこれからどうするとか考えずに、
セイバーに見惚れていたわね、だってずっと憧れていたセイバーのサーヴァントだったから」
「でも、アーチャーさんの方がいいと思いますよ?
セイバーさんなんて先輩のエンゲル係数を無限に上げて行く食っちゃ寝サーヴァントですよ?
前回の聖杯戦争でドヤ顔で対等に渡り合えたと行ってましたけど実際はそもそも交戦回数すらアレでしたし」
「さ、桜!?」
「それでも、セイバーの方が可愛いじゃないの!
あのガン黒皮肉屋バトラーサーヴァントよりもずっと可愛いじゃないの!」
「ひゃ!?凜?」
食っちゃ寝で衛宮家の家計簿に打撃を与え、
姉同様横から自分の想い人を略奪したセイバーを扱き下ろす桜。
だがそれでもセイバーの方がいいと言い、セイバーの可愛さを力説と同時に彼女に抱きつく凜であった。
「ねえ、さっちんこれってタワーが建つと言うのだっけ?」
「正確にはキマシタワーで」
「あ、終わりました。いやー次が楽しみです」
そして1時間はあっという間に過ぎて行った。