凍える雪で閉ざされた世界に暮らす少女が欲するものは
ピクシブのFateSSです。
タイトルから察せられるようにイリヤに関するネタであります。
原作ではアインツベルンを裏切った衛宮切嗣はその命を終えるまで娘に合うことが許されず、
逆に迎えに来なかった、と認識したイリヤは切嗣を怨み、その息子に八つ当たりをするわけですが、
切嗣が駄目ならばその息子が欲しい。
と、イリヤがアインツベルンに頼み衛宮士郎を切嗣の元から拉致。
そこから物語が変わって行きます。
絶望する切嗣、だが拉致の騒動に駆けつけた遠坂凜が生きるのを諦めた切嗣を叱責。
僅かな希望を求めて切嗣は病魔と闘いつつ、原作の桜ポジションに収まった遠坂凜が切嗣の延命に成功。
切嗣生存状態で第五次聖杯戦争が始まる・・・。
「あぁ、そっか」
ふと彼女の脳裏に妙案が浮かんだ。欲しいものは貰えばいいのだ。
切嗣の代わりに切嗣が引き取った子供を欲しがるのはどうだろう。
切嗣がイリヤスフィールを捨ててまで選んだ子供、その子を奪ってやったのなら。
老人が拒むことはないだろう。だって彼の糾弾する切嗣を欲しいというわけではないのだから。
それに切嗣を裏切り者だという翁だ。切嗣への復讐だといえば、きっとイリヤスフィールの望みは通る。
――明日になったらおじいさまに言おう。
ベッドに背中から倒れ込んで、幼く道理も知らぬ子供は思う。
――キリツグの引き取った子供が欲しいのだって。
そのままの体勢で天井を眺める。
目を閉じると最後に見た切嗣の顔が浮かんだ。
アインツベルンを去る前にイリヤスフィールと顔を合わせた父は、
今そうしてイリヤスフィールに向けたような顔をまだ見ぬイリヤスフィールの兄弟に向けているのだろうか。
ベッドに長い銀髪を散らし、少女は決意する。
それがどこまでも彼女の父に残酷なものだと気付きもせずに、自分の願いの叶ったその先を思い浮かべる。
顔も知らぬ義兄弟を父親から引き離して共に暮らしたならば、退屈なこの永の冬に閉ざされた世界でも楽しくなるだろうし、同時にそれは父への最大の復讐になるだろう。
そうしたら。
服の胸元をぎゅっと掴み、
イリヤスフィールは小さな声で、本当に小さな声で呟いた。
「キリツグもここに来なくちゃいけなくなるよね……?」
(その子に会うためだとしても、キリツグは迎えに来てくれるよね……?)