提督LOVEな艦娘たちの短編集
艦これSSで艦娘と提督の恋愛を描写した短編集です。
登場している艦娘は15人を超えており、様々なシチュエーションが用意されています。
2828しながら読めます。
ぜひ読んでみてください。
しっかりと見てしまったことに気まずさを感じて、目をそらす。
目をそらしたさききは執務室唯一の出入り口である扉。
そこには、開いていた扉の隙間から秘書の摩耶が口をあんぐりと開けて部屋をのぞいていた。
今の状況は、磯風が布団の上で裸になってから着替えをしている。
一方の俺はパジャマのまま。そうしたなかで俺と摩耶はお互いに目が合い、動きがとれない。
どうしようか悩んで動けなかったが、
ちゃぶ台で摩耶から姿を隠して着替えを終えた磯風が俺の隣に来て事態は動きだす。
「ああ、摩耶さん。
司令を昨日の夜から今まで借りていたが仕事に支障はない。
まだ疲れているようだが、後は摩耶さんに任せてもいいか?」
「う、うわあぁぁぁぁん! 司令のばかぁぁぁぁ!!」
磯風の余裕のある声が摩耶にかけられると、摩耶は涙目になり大きな声で叫びながら廊下を全力で走っていった。
言い訳するまもなく、深刻な事態になってしまった気がする俺はストレスで胃が痛くなってくる。
摩耶がいなくなった扉から磯風へ振り返るとと、恨みがこもった俺の目から彼女は俺から目をそらす。
「どういうわけか扉が開いてしまっていたようだ。
寝る前に戸締りはしっかりしたのだが、ほら、ここは色々と古いからな」
棒読みの声を聞いて思う。確信犯だ、こいつ。
過ぎてしまったことはしかたないと、深い溜息をつく。
摩耶を含め、多くの人からロリコンと言われるかもしれないと思うと気が重くなる。
そんな落ち込んだ俺を見てか、
先ほどまでの落ちついた様子はなく、無駄に手足や頭を動かしていた。
が、それも少しの時間が経つと何かがひらめいたらしく両手で手を打った。
俺の前へとやってきた磯風は、
くるりと一回転をして美しい黒髪をなびかせながら腰に手を当て、堂々と仁王立ちのポーズを取る。
「磯風は司令の妻だ。だから夫である司令を守ってやろう」
「じゃあ摩耶の誤解を解いてくれ。わかったな?」
妻じゃないと否定する元気もない俺は注意もせず、お願いだけを言う。
俺の言葉を聞いた磯風は自信たっぷりに頷き、部屋から出ていこうとする。
その背中を見て急に寂しさを覚え、俺はつい呼びとめてしまう。
「磯風」
「どうした?」
「……あー、色々と世話してくれてありがとうな」
「妻として当然」
グッとガッツポーズをして、静かだが自信あふれる言葉を言って部屋から出ていく。
磯風がいなくなった部屋は、やけに静かすぎる気がした。それほど磯風という存在は俺にとって大きいのだろう。
普段はうっとうしいが、落ち込んでいるときは何も言わずにそばにいてくれて一緒の時間を過ごしてくれる。
磯風にくっつかれるようになってから数えきれないほど苦労し、多くの幸せを分けられ、素敵な笑顔をもらった。
心が暖かくなる感情と共にもう何度ともしれない溜息を磯風のためにつく。
どんなに苦労しても、これからも磯風とは仲良くやっていきたいと思う。
部屋に帰ったとき、誰かが自分を待っていてくれるというのは中々に素敵なことだとおもうから。
ただ、妻にするのはまだまだ早いから、そこだけは流されないように注意しようと頭の片隅にメモしておこう。