着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

クレームから考える着付け方の改良について

2023-04-30 13:28:54 | 着付け
大学の卒業式の着付け業務に携わるにあたり、クライアントさん主催の講習会に出席した2月初めのお話です。
クライアントさんは毎年卒業式に携わるなかで、着付けで去年はこのようなクレームがあった、あのようなクレームがあったなどのお話しから、今年はそういうことを回避するためにこういう工夫をして欲しいとか、ああいうことに気をつけて欲しいなどのお話しが例年あります。
それらのクレームの中で、
「お客さまの着物に伊達衿を縫い付けられた」
ということを聞きました。
「?」
こちらの現場では針や鋏を着付け師が現場に持って入ることを禁じています。こちらのご衣装には既に着物に伊達衿がついていますし、ご衣裳の点検や準備なども原則クライアント側が済ませていますので、着付け師サイドが針や鋏を使う必要はそもそも無いのですが、私が直接お客さまとやり取りをするような場合は伊達衿を付属の留め具で止めるか、無ければ縫い止めさせていただくことは普通にあることです。
そうすることによって着物の後ろ衿で伊達衿が飛び出してくるような心配が回避出来るからです。
私自身、着付け教室に通っていた時も、先生からは伊達衿は着付けの前に縫い付けておくようにと、その縫い付け方も教わっています。

クライアントさんが仰った内容は、
「針を持ち込んではいけない現場なのに針を持ち込んで縫い付けた着付け師がいたということなのかな?」
とその時は単純にそう思いました。ですが、その後、私に直接着付け依頼をしてこられたお客様がご用意された貸衣装に、「着物着付けをされる方へ」という紙が入っていて、それには追加請求の対象となるNG行為として、
『伊達衿を縫い付けること、衿を固定する為に縫うこと、両面テープを使用すること』
と書かれていました。衣裳に傷がつく可能性があるからでしょうか? でも、お客さまだけでなく自分自身の着用時でも伊達衿は縫い付けていますし、半衿の中で衿芯が泳がないように固定するために半衿の一部を少し縫うようなこともありますが、私自身、着用後衣裳に傷がついたことも無いですし、お客さまからクレームを受けたこともありません。
レンタル衣裳屋さん側として、次のお客様にスムーズに出荷できるように、返されたご衣裳に縫われた糸を取り外す作業という工程を省くための協力依頼なのでしょうか?或いは太い針と糸を使ってブスブス縫った着付け師でも居て、実際にご衣裳に傷がつくような事例があったのでしょうか?
別段縫い付けずに着物クリップで固定して着せつけをして(着物クリップは後で外す)綺麗に着せ付けが出来ないということでは無いです。ですが、長時間着て過ごしたあとに伊達衿が後ろで飛び出してきたり、衿芯が動いてだらしない着姿になるようなことはないのでしょうか?
私自身、長時間過ごした時に、それら『縫う』という作業をしない場合どのように崩れるか或いは崩れないのか否かの検証をしたことはありません。長年、恐らく多くの着付け師が良かれと思って当たり前のこととしてきたことでもクレームになったとか、NG行為にあたるなどと聞かされればその意味を深く考えて、今後の着付けについて改良していかなければならないと思いました。

着付けもファッションとしての流行を追った着せ付けの変化だけでなく、さまざまなクレームを通して工程や技術は進化していくものです。これでいいと学びを止めてしまっては駄目ですね。
着付けも日々勉強です。

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする