着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

美容師さんの悩み

2008-08-04 22:27:57 | 出張着付
私がかつて着付けでお世話になった美容室の店長さんからこんな話を聞いたことがあります。
「1000円カットの店っていうのが最近沢山進出してきているけど、あれって、川口さんはどう思う? 髪の毛も洗わない、カットだけ、ブローもしないで、はい、さようならっていう店。うちの美容室のサービスに比べたら・・・そんなのでお客さん、満足するのかね?って思うんだけど、これがなかなかどうして、結構繁盛してるのよ。うちの店の近くにそんな店が出来ちゃって、正直お客さん取られてる気がして脅威なんだよね」

そして私も実際にそういう場面に遭遇してしまいました。
その安値の動機は、本業でもないので「あれば儲けもの」的なのか、折角学んできた技術が萎えないために「練習のためにやっている」のか良く分かりません。
確かに巷で着付けを頼もうとすると、かなり費用がかかるイメージがあり、安い値段で着せ付けしてくれるなら着せてもらおうかな?と思う方もおられるかもしれません。

では、巷ではなぜ着付け費用が高額なのでしょうか?

それは、着物をみんなが日常茶飯事に着るという現状にはないこと、そしてそういう環境の中で着付師がその職業を生業とするうえで、いつ、どんな時、どんな状態でも自信をもってその技術を提供するためには普段から相当の訓練をつまなければならず、片手間では出来ない仕事だからだと思います。

美容師である店長さんも、普段から技術が萎えないためにこの仕事にかじりつくしかないと言われ、その道一筋で頑張って来られた方です。丁寧な仕事をして、お客様に喜んで頂けることがやりがいで、その工程のどこを取っても、いい加減には出来ないのです。そして私の考え方も美容室の店長さんと全く同様です。

私の着付けの師匠さんは、
「技術の安売りはしないでね。貴方は相当の時間も労力もお金も費やして一生懸命勉強して来られたんでしょう? プライドを持って仕事をして欲しいのよ。着付け料が安かったら自分で勉強して一人で着物を着れるようになりたいと思う気持ちが生まれるものではないわよ。誰も着物を着る勉強をされなかったら、日本の民族衣装が廃れてしまうんじゃないかしら?」
とよく仰っていました。

「安いだけが価値?」
世の中、安いものに飛びつくのはある意味人間の本能なのかもしれません。確かに日用雑貨などの汎用的な工業化製品などにはあてはまるかも知れません(それでも品質次第ですよね)。しかし高度な技術をその場その場で相手に合わせて創り上げていく着付けの価値が値段だけなのでしょうか? それでも「安値」の逆風はそんなことお構いなく吹いてきました。

ただそんな中で私を支えてくれているのは、私の着付けを気に入って何度も使って下さるお客様達や、一生懸命な生徒さん達の存在、そして何より、さして儲からないこの仕事を、ただ好きだというだけでやっている私の気持ちを尊重し、認めて、続けさせてくれている主人の存在です。

私はこれからも様々な方に感謝しながら、自分自身の技術が廃れないように、安い技術に取ってかわられないように日々勉強していくつもりです。

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko/

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